異世界で子ども食堂始めました。

まつぼっくり

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大人な対応

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 シュロを見送り離れれば、自分が如何に大胆なことをしたのかを理解する。
 キス…初めてだったな。魔力を使うとシュロを求めてしまうし、離れたくなくなる。

 ベッドのチッチを軽く撫でて、元々客間だったチッチの部屋へと様子を見に行く。

「みんな入っても良いかな?」

 ノックをして返事を聞いてから入室。緊張しているのかな?声がかたい。

「着替えここに置いておくね?僕の服の上だけで申し訳ないんだけど…いま着てるのは明日までに綺麗にしておくから籠に入れておいてね。」

「はい。ありがとう、ございます。」

「みんな怖かったよね…本当に一緒に寝ないで大丈夫?」

「怖くないよ!!先生と団長さんのお家はピカピカで大きくて緊張するけど、魔獣はこわくないよ!先生格好良かった。団長さんも!守ってくれてありがとう!」

 そう興奮気味に話すのはうさぎのピアーナ君。それに対してうんうんと頷く狐のギル君。

「チッチは大丈夫ですか?」

 チッチを心配してくれる通常運転なカイ君。

「ふふ、みんな強いなぁ。僕はもう怖くて怖くて震えちゃった。」

「…そうなの?」

「そうだよ。皆がぎゅうってしてくれないと怖くて眠れないかも…」

 わざと俯きがちに座り込んでそう告げれば直ぐに胸に飛び込んで来るピアーナ君。

「あのね、本当は僕もすごくこわかった…死んじゃうって…思ったよ。」

 小さな声で教えてくれる。そうだよね、怖くないわけないよね。この子たちの親は皆、魔獣にやられているのだ。怖くないはずがない。
 おずおずとギル君とカイ君もぎゅっと抱きついてくれるから、皆でぎゅう。
 ぐすっ、ヒックと僅かな泣き声。

 暫く4人で団子になっていたけれど、落ち着いた頃を見計らってお風呂へ誘導。きっと今入った方がゆっくりと眠れる。



「先生?何服を脱ごうとしてるんですか?」

「え?皆にここのお風呂のやり方教えようかと思って?」

「俺たちはもう9歳ですよ?介助はいりませんし、団長さんに怒られますよ。」

 え?そういう感じ?

「シュロは何も言わないと思うけどなぁ。」

「俺たちはもうすぐ10歳になるので…あと2.3年で先生の身長も追い抜きます。そんなに子供じゃありません。」

 他の二人も頷く。

「チッチは一緒に入ってくれるよ?」

「チッチはまだ3歳でしょう?」

 カイ君…大人だ…大人すぎる…あぁ、でもこれが普通なのか。いくら同性と言っても10歳目前じゃ嫌かもしれない。

「えっと、デリカシーなくごめんね?じゃあタオルはこれね。出たら水分補給してね。」

「ありがとうございます。」

 ぺこりとお礼をして浴室へと消える皆。ここの子たちはとても大人である…それにしてもあと2.3年で身長追い抜かれるの?悲しすぎる…今のうちに沢山モフらせて貰おう。
 チッチは早めにお風呂に入っていたけれど、どうしようか。眠っているけど…冷や汗も沢山かいただろうから…起きたら聞いてみよう。
 そんな事を思っていたら目を擦りながらチッチが部屋へと入る。泣き付かれて眠ったけど、眠りが浅い。

「おにーちゃん…」

「うん、チッチひとりにしてごめんね。」

「ううん、おててだいじょうぶ?」

「大丈夫だよ。治癒も出来たし、もう傷はないよ。」

 良かったあと抱き着くチッチを抱き上げる。

「んん…カイくんのにおい。」

「わかるの?凄いなぁ。今日は遅くなっちゃったし三人ともお泊まりね。今お風呂入っているよ。」

「………えぇっ!」

 寝ぼけていたのに覚醒してしまった。

「チッチも!チッチもいっしょにはいってくる!」

 体を捻って着地。

「入って良いですか?って入る前に聞くんだよ?」

「はーい!」

 とたとたと走るチッチ。

「チッチです!はいってもいーい!ですか!?」

 わーい!と突撃するチッチに笑みがこぼれる。本当に、ここの子たちをは強い。

 お風呂から出て、チッチのことも着替えさせてくれてホカホカな4人。
 水分補給をさせて、おやすみをしようとチッチに促す。

「チッチもここでねんねする!」

「先生と眠った方が安心するんじゃない?」

 カイ君がそう言ってくれるけど…

「チッチひとりでねんねできるもん。」

 そう…そうなのだ…チッチはお兄さんだから大人と一緒に眠っていると知られたくないんだよね。それにカイ君には物凄く懐いているし。

「うん、チッチはいつも一人で寝てるよね。えっと…カイ君は良い?」

「勿論です。」

 客間の大きなベッドに横になる4人。
 狭いかと思ったけど、意外と大丈夫そう。チッチはカイ君のにぎゅってしてるし…僕でもこんなにぎゅうしてくれて眠ったことはないかもな。

 明かりを落として1人ずつおでこにちゅう。キャッキャとしてくれる3人とやれやれ感のあるカイ君。

「何かあったらすぐにこっちに来るんだよ。不安になったとかでも良いからね?」

 元気なはーい!という声を背中に扉を閉める。

 今は安宿に子どもたちは住んだり何人かで部屋を借りたりしているけど…孤児院を出なければならない幼い年の子たちの寮みたいなものも作りたい。今はとりあえずランチ代わりのお弁当経営でお金を貯めよう。カイ君たちが大人になるまでには無理かもしれないけれど、沢山作って沢山売ろう。ベッドの中でそんな目標をたてる。

 シュロはまだ戻らない。
 魔力を放出したからかシュロの香りがするベッドにいると会いたくて堪らない。一度ベッドから出て、シュロの服を数枚拝借。
 それと枕を抱えて暫く待っていたけれど、いつの間にか眠ってしまっていた。



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