タケノコの里とキノコの山

たけ

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プロローグ タケノコ村とキノコ村

第十話 ソウイウセカイ

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レイの 声がした

「………ほぇ?」

タケノコ軍の男が奇妙な声を上げた。空気が静まり返り、世界が止まる。男にとって、それは表現し難い感覚だった。目の前にキノコ軍一級 それが自分一人を狙って来る

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

発狂 残された行動は それしか無かった。

男は走れない。腰が抜けた。比喩抜きで

「ぎゃつ」


「残念だったな……それにしても、良い手柄だったよハル。シェルターがそんな事でバレてたなんて…」

落ち着いた声でレイが言う。彼女はこの声色で人を殺した。

「あり…ありがとう…御座います。」

胸の中にのこった奇妙な感覚よりも、自分の命が助かったことに対する安堵が強かった。


ーーーここは、そういう世界なのか

「…やっぱ、辛いか?」

「はい…」

「だよなぁ…私も最初はそうだったよ」

最初はそうだったのか…

ー別にレイは悪い人物ではない。弱きを助ける優しい穏やかな人物だと、今までハルは考えていた。だが、

目の前で人を殺すというのは、こんなにも怖いことなのか

「私のこと、どうおもう?」

「っ!?」

見透かされた。ということは、やはり新人だったころのレイも自分と似た気持ちになったのだろうか。

なら、思っていることを少し暗い吐き出してもいいはずだ

「別に嫌いとかじゃあないんですけど…やっぱり…その、怖かった。人間不信みたいな…そんな…感じ…」

「ーーーそっか」

多分、新人はこういう事があるたびにハルと同じ様な目に合うのだ。それを見てきたから、こんな血とげろ臭い男に冷静に対応できるのだろう



自分が思いを吐き出した次の彼女の言葉、それがずっと、胸に刺さっていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

キノコ軍に戻り、気づけば12じほど
シェルターの事などを軍に書類で報告するらしい。今後、位置を変えると言うことになった。

4級の人たち、五級の一部の人たちはそれを見て
“人を殺した"という部分になんの違和感もいだいてない。

まるで当然のことのように時は流れる

カイムも、とくに深い反応を示さずに自分の仕事に移っていった

当たり前のように行われる殺戮が恐ろしくて仕方がなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

昼食、軍の中にはフードコートの様なスペースがある。今日はカレーうどんがセールだったので買おうとしたが、食欲がわかずに水だけもって適当な椅子に座った。ガヤガヤとした雰囲気に、ぽつんとした空気が一つ。上の空が数十分たったとき

「おーう。そんな飯じゃ強くなれねぇぞ~」

元気なあの声。カイムだった

「えっああ…今日さ…」

「知ってるよ、初任務いったんだろ?」

「ああ…」

どうやら知っていたらしい、あと、一級が自分に目をつけられていることもそこそこ広まっていた

「やっぱりさ…みんな何食わぬ顔で人殺しするんだなぁって…」

「まぁな…おれも最初はそんな感じだった。
タケノコへの抵抗なんてしなくて逃げてればいいのに、とか思ってた。でも今は違う」

続ける

「ここはキノコ村 "そういう世界“なんだって」


そのとき、カイムの背中が大きく見えた。全てを受け入れ、背負う男の顔。ハルには到底得られないものだった。


ソウイウセカイ 重い。重かった。そして
、事実でしか無かった。

「まあ、そんなこと言えるまで人を殺したってことなんだけどな、なけてくるぜ」

そういいながら、カレーうどんをすする。なぜかそれがとても美味しそうに感じられた。


強い。カイムは強かった。

自分も なれるかな

ココハソウイウセカイ

「お腹空いてきた…おれも買ってくる」






ココハソウイウセカイ
ココハソウイウセカイ

これは永遠につかう呪文になりそうだった。



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