タケノコの里とキノコの山

ニ章

第五十一話 面白いもの

轟音と振動が地を揺らし、世界を、レイたちを震撼させる


「なんだ、これ？」


「うる…せぇ…」


キノコ軍の死体の山に隠れ手当と急速をしていたイアンとパアワ　

新しい音に不安感がばくぞうする。


ただ、レイだけは違かった


「………………」



わかる、どうしても分かるのだ



この轟音の発生源は、アガレズだと
ついに助けに来てくれたのだと



「ふむ…なにか、不穏な予感が…」


アデルはそうつぶやき剣をしまう、

流石にこの現状はイレギュラーな事態だと察知したのか何かあったら逃げるつもりだ

「アデル……」


「はい？」


「逃げるな…私たちの戦いに、付き合え、喧嘩をふっかけたのは…お前だ」

「…………………………………………………………」


逃げる　という単語にピクリと反応したアデル
少しの殺気を放ち、レイを見た


そして何かを話そうとした瞬間、轟音が"明確に"こちらへ来ていると肌で、目で、感じた


「っ！！！」


ドゴン、ドゴン、と鼓膜が破れる音を放ち、巨大な生物がアデルに向かって直進するのが見える


その上にはヒトの様なモノ、その前には何かの機械に乗ってるヒトが見える、豆粒にしか見えないが




皆察した、あれがヨツンヴァインという生物だとだと


アデルは感動し、その場に立ち尽くす


「これがアガレズさんがおっしゃっていた"面白いモノ"…ですか、なんと素晴らしい…あれこそヨツンヴァイン…あのサイズでどうやって生命活動をしているのか…っ！興味深い…」



そう言っている間にもソレは近づく、主にアデル目掛けて

そして、ヨツンヴァインの近くにいた豆粒のような人間とアポロ族達も目視することができた、ハルのような人物が手を振っている姿が確認できた！


「あっ！みろよイアン！ハルとカイムとキク！誰ひとり死んでねぇ！あとアガレズもなんか変な感じだけど、とりあえず生きてる！」





「そんな事言ってる場合か！ハルが指文字で離れろって行ってる…生きているもの！！！遮蔽物に隠れるか、全力で走れェ！！！」




「……………っ」


ヨツンヴァイン達とぶつかる直前ですら、アデルは立ち尽くしていた








ごしゃ







ヨツンヴァインという超巨大生物が、ついに町へぶつかり体重全てを乗せて衝撃を伝える


さも当然のごとく吹き飛ぶ建物、木
そして死体


そして鼓膜をぶち破る如く音が発生する、
次に暴風、ブゥン　と音がした瞬間に耳がキンキンと痛み、全身が逆立つ


「ーーーーーーーぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお！！！！！？！？！？」


パアワが叫ぶ、こんな大規模な事をするなんて、アガレズは何を考えているのか、今の激突に巻き込まれてアデルは死亡したのか、アガレズやハルたちは大丈夫か、レイは、他の街の皆は……


ーーーもはやそんな事を考える意識などない、パアワは吹き飛ばされたイアンを無意識的に掴み、大岩に掴まっていた、それは、永遠ともいえる時間出会った



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

なにも、みえない、あしばが、わるい


煙が、邪魔だ、体が、生暖かい


ここは、どこ



「ぶぁら、ぎも、ぎ、ぎんん…ふぁもうす…」


ヨツンヴァインを操作し、この超大規模の特攻を起こした張本人…アガレズが目を覚ます
依然としてまともな意識は無く、体中に鋭い触手が駆け巡っている。さっきの注射はよほど大量の液体を入れたらしくアガレズの覚醒は解除されていない


「お…い、はなせ…っ」


突然、右側の触手に重みを感じる、白目でそちらを向くと、キク（に見える）がいた


「ふぃあ……？………お」


「おい！きこえ…てるか…っ！お前が激突させる瞬間に、俺達が巻き込まれないように守ってくれたんだろ？」


「…お、」


よく見ると、ハルとカイムとキクが自分の触手でぐるぐる巻きにされて宙に浮いている


ギリギリ残っている理性で、近場の周りの命だけは助けたのだ


 その事を考えた瞬間に、アガレズは急に正気を取り戻しかける、

「！？」


体中から毒素が抜かれるように蒸気を吹き出す

ふしゅうううううという音とともに、白目は無くなり、今までの記憶が蘇る


「…………そうか…俺は……ヨツンヴァインの注射器を…全部ぶちこんだんだっけねぇ…よく生きていたものだ…」




華麗なほど鋭かった腰の触手は元通りになり、キク達を地面に落っことした


「……アガレズ！！」


「大丈夫だったかい？ハル、正直注射器を使ってからの記憶がハッキリとないが、大まかなことは覚えてるさ…」


「アデルは！？」


「明らかに直撃した、死んでいるだろうさ、それよりもまずは仲間たちの安否だ、」





「ひとまず俺達は生きている！ハル！キク！みんなを探すぞ…」


「カイム、それは必要ないさ」


「え？」


「あっちを見ろ」


「………なっ」


大岩の上に登っているイアンとパアワ、パアワは手を振り、イアンは中指を立て迷惑そうにこちらを見ている


そしてレイは仲間の死体の山をを盾にし隠れていたようだ、死体を使った事が申し訳ないのか、バツの悪そうにこちらに手を振る


上級達はそれぞれの身体能力を駆使して、激突に巻き込まれないよう立ち回っていたのだ


「すごい…これが上級」


「ちっ…クソが、あいつら…俺たちだったらアガレズがいなきゃ即死してたぜ…」



そうぼやいていくうちに、合流の為こちらに駆け寄る上級達が見られた


上級と自分達の距離は縮まってゆく




「…」





「…………とんでもねぇことしてくれたな、てめぇ…」


イアンは合流するなりアガレズの胸倉を掴み睨む

「まあまあ、良いだろう？復興のことを考えれば死にたくなるくらいには町はめちゃくちゃだが、こうでもしないかぎりアデルとの戦いはジリ貧で負けてただろう？」


「……くっ」


「…反論できねぇのが痛いぜ」






「あ、レイさん…！」

そう話しているうちに、レイもふらつきながら合流してくる


パアワがハルにむかってやさしく肩を叩く

「悪いな………あいつが無理してここまで戦ってくれてたんだ、一旦休ませてやろうぜ」



「…っ」


その姿は酷いものだった。ここにいるみんな、自分の血や他人の血だらけでグロテスクなものであるが、レイに関しては周りの比では無い程に傷だらけだった



「ご……めん、増援のみんな……死んじゃっ…た、守れなかった…」

そう言って涙を流す


「……っ」


始めて涙を見た気がする　
それもそうだろう。別の区域から増援に来てくれた兵士たちはみんな死んでしまったのだから…


「………休んで、下さい…レイさんは、何も悪くない」


そう言って、座らせる、4級でもわかる、レイは…限界まで戦ってくれたのだ





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そして数分がたち…

それぞれの急速が済んだところで、カイムが声を発する


「ーーこれで、終わりか…アデルは…」


「ああ、だが死体をまずは探す、それまではまだ生きていると思え、」


「死体って…あんな衝撃をもろに食らって、数キロくらい吹き飛んで居るんじゃないか？この状態で探すなんて…」


その言葉を遮るかのように、何者かの足音が聞こえた


それは、不気味で、不快で、

身の毛のよだつ、聞き慣れたあの声だった





「……………素晴らしい」