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1章 はじまり
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彼女を見るのは本当に二年ぶりだ。
「ルーク、久しぶりって言ったけど私のことを覚えてる?」
覚えている、そう言おうとして言葉にするのをやめる。そう、俺は奴隷だ。主人の許可なく話すことも許されない。
「そっか。ここでのルールを説明してなかったね。ここでは自分の思ったことを話して良い。欲望に忠実でありなさい。それがイザベラ様の言葉よ」
彼女の言ったことは本当だろう。さっきイザベラ様はこう言った。「この後、屋敷に関しては彼女から学ぶように」と
「分かった。それとさっきの質問だが覚えている。人間だった頃から一緒に居たんだ。忘れるわけがないだろう」
そう、忘れるわけがない。まだモノではなく人だった頃からの付き合いだ。人間に例えるならこの関係は幼馴染みと言ったところだろうか。
「そっか。覚えてたか。良かった、奴隷館に居た時はお互い他人って感じだったからどうなのかなって思ったの」
「そうか」
そう、でも久しぶりという感情は来ないと思っていたから変な感じだ。何だろう、モノなのにモノではないと言ったような感じは。
「ま、昔のことは置いておいて屋敷の中に案内するわ」
一時間ほどだろうか、ルークはエミリーから屋敷の案内を受ける。無事に終わるタイミングを見計らっていたのか、侍女長であるアデルが二人のそばにやってきて「お部屋の準備が整いました」と言い、三人でルークの部屋へと向かうことになった。
「ルーク、ここが今日から貴方が生活する場所です」
アデルがそう扉の前で言い、エミリーが扉をそっと開ける。
夕暮れ時だからだろう。太陽が沈みかけその部屋は光が差し真っ赤で美しい光景が写し出されている。
奴隷館で与えられた場所、それは小さな檻の中。カビ臭くジメジメしていて昼も夜もない、真っ暗な空間。しかし今俺が与えられた場所は自然の恵みもありベッドや机、何もかもが揃っている。
「ここが俺の部屋」
「「そうですよ」」
二人は即答する。まるでそれが当たり前だと言わないばかりに。
信じられないと言わないばかりの表情。ルークはその部屋を噛み締めながら一歩、また一歩遠くへ進む。
「それじゃ、ルークまた夕飯の時に迎えに来るわ。今日はそれまでゆっくりしてて」
「あ、ああ」
二人は出て行き、部屋の中はシーンとしている。
奴隷はモノ。それなのにゆっくりしてて。まるで人間のよう。
ルークはベッドに倒れ込む。
今までこんな扱いは受けたことがないから分からない。だが「ゆっくりしてて」それが今与えられた命令だ。今まで通り何も考えず、ここで時間が過ぎるのを待とう。
下を這いつくばっていたあの頃のように。
「ルーク、夕飯の時間よ」
少し眠ってしまったか。辺りはもう、真っ暗だ。
なれないことをして疲れたか。命令はゆっくりしててだったから問題ないだろう。
連れていかれたのは厨房。
「ここで賄いを私たちは食べるの」
食卓にはエミリー、アデルが居るだけである。
取り皿があり、わいわいとした感じ。ルークは戸惑いつつも二人に見習い大皿からご飯を取る。
アデルさんはともかくエミリーは同じ奴隷だというのにこの扱い。全く使用人と大差ない。奴隷はモノなのにどうなっている。何回もこの言葉がこの屋敷に着いてから巡る。
「まるで人間じゃないか」
夕食後
侍女長のアデルからエミリーとルークは命令を受けていた。
「ルーク、この後イザベラ様のお部屋に行くように。エミリーはルークがイザベラ様のところへ向かう前に体を清めて差し上げなさい」
「「はい」」
と言うわけで現在二人は浴場にいる。
「命令とは言えこんなことをするとは思っていなかったわ」
エミリーはふーっとため息をこぼす。
「そうなのか」
まずこの光景が普通じゃないのかすら判断できる立場じゃないのでその感情はよくわからない。
同じ奴隷に身体を洗われている。奴隷館にいた時、これはあったな。だからそこまで言うほどじゃないんじゃないか?
「恥ずかしくないの?裸体を見せて」
顔を赤くしながら恐る恐る聞いてくる。
「恥ずかしい?モノだからそう言う感情はない。俺は奴隷だから命令に従うだけだ」
「そっか、そうよね」
何を当然なことを?
「さ、洗い流すわね」
「ああ」
エミリーがシャワーを取ろうとした瞬間、裾に転び彼女はびしょ濡れになる。
「うう、最悪」
裾で転んだのか。確かにその制服はしゃがんだら床につくような丈だ。こけてもおかしくはないか。
「大丈夫か?」
一応声をかける。
ここでは発言自由。これは良いんだよな?
「うん、大丈夫。って前隠しなさいよってそんな感情は持ち合わせてないのよね。気にしないで。洗い流すわ」
「分かった」
その後エミリーはずっと真っ赤だった。
ルークを着替えさせるときも濡れてしまった自分の服を脱ぎ、着替えるときもだ。
俺たちはただ、生きているだけのモノだと言うのにどうしたのだろう。風邪だろうか。あそこまで真っ赤になるのは熱が出ているときぐらいか?
イザベラの寝室前にて
「うん、言われた通りの服を着せたしこれで私の役目は終わり。ルーク、いってらっしゃい」
「ああ、行ってくる」
スケスケの服。今までと変わらない。俺は性奴隷。そう、人ではない。モノなのだ。モノとしてイザベラ様に今から可愛がってもらおう。
「ルークです。参りました」
「入りなさい」
ルークは中に入る。
「奴隷紋があんなに。やっぱりルークは私以上に拒んだのね」
そう呟いたエミリーの声はもう中に入ったルークに届かない。
「ルーク、久しぶりって言ったけど私のことを覚えてる?」
覚えている、そう言おうとして言葉にするのをやめる。そう、俺は奴隷だ。主人の許可なく話すことも許されない。
「そっか。ここでのルールを説明してなかったね。ここでは自分の思ったことを話して良い。欲望に忠実でありなさい。それがイザベラ様の言葉よ」
彼女の言ったことは本当だろう。さっきイザベラ様はこう言った。「この後、屋敷に関しては彼女から学ぶように」と
「分かった。それとさっきの質問だが覚えている。人間だった頃から一緒に居たんだ。忘れるわけがないだろう」
そう、忘れるわけがない。まだモノではなく人だった頃からの付き合いだ。人間に例えるならこの関係は幼馴染みと言ったところだろうか。
「そっか。覚えてたか。良かった、奴隷館に居た時はお互い他人って感じだったからどうなのかなって思ったの」
「そうか」
そう、でも久しぶりという感情は来ないと思っていたから変な感じだ。何だろう、モノなのにモノではないと言ったような感じは。
「ま、昔のことは置いておいて屋敷の中に案内するわ」
一時間ほどだろうか、ルークはエミリーから屋敷の案内を受ける。無事に終わるタイミングを見計らっていたのか、侍女長であるアデルが二人のそばにやってきて「お部屋の準備が整いました」と言い、三人でルークの部屋へと向かうことになった。
「ルーク、ここが今日から貴方が生活する場所です」
アデルがそう扉の前で言い、エミリーが扉をそっと開ける。
夕暮れ時だからだろう。太陽が沈みかけその部屋は光が差し真っ赤で美しい光景が写し出されている。
奴隷館で与えられた場所、それは小さな檻の中。カビ臭くジメジメしていて昼も夜もない、真っ暗な空間。しかし今俺が与えられた場所は自然の恵みもありベッドや机、何もかもが揃っている。
「ここが俺の部屋」
「「そうですよ」」
二人は即答する。まるでそれが当たり前だと言わないばかりに。
信じられないと言わないばかりの表情。ルークはその部屋を噛み締めながら一歩、また一歩遠くへ進む。
「それじゃ、ルークまた夕飯の時に迎えに来るわ。今日はそれまでゆっくりしてて」
「あ、ああ」
二人は出て行き、部屋の中はシーンとしている。
奴隷はモノ。それなのにゆっくりしてて。まるで人間のよう。
ルークはベッドに倒れ込む。
今までこんな扱いは受けたことがないから分からない。だが「ゆっくりしてて」それが今与えられた命令だ。今まで通り何も考えず、ここで時間が過ぎるのを待とう。
下を這いつくばっていたあの頃のように。
「ルーク、夕飯の時間よ」
少し眠ってしまったか。辺りはもう、真っ暗だ。
なれないことをして疲れたか。命令はゆっくりしててだったから問題ないだろう。
連れていかれたのは厨房。
「ここで賄いを私たちは食べるの」
食卓にはエミリー、アデルが居るだけである。
取り皿があり、わいわいとした感じ。ルークは戸惑いつつも二人に見習い大皿からご飯を取る。
アデルさんはともかくエミリーは同じ奴隷だというのにこの扱い。全く使用人と大差ない。奴隷はモノなのにどうなっている。何回もこの言葉がこの屋敷に着いてから巡る。
「まるで人間じゃないか」
夕食後
侍女長のアデルからエミリーとルークは命令を受けていた。
「ルーク、この後イザベラ様のお部屋に行くように。エミリーはルークがイザベラ様のところへ向かう前に体を清めて差し上げなさい」
「「はい」」
と言うわけで現在二人は浴場にいる。
「命令とは言えこんなことをするとは思っていなかったわ」
エミリーはふーっとため息をこぼす。
「そうなのか」
まずこの光景が普通じゃないのかすら判断できる立場じゃないのでその感情はよくわからない。
同じ奴隷に身体を洗われている。奴隷館にいた時、これはあったな。だからそこまで言うほどじゃないんじゃないか?
「恥ずかしくないの?裸体を見せて」
顔を赤くしながら恐る恐る聞いてくる。
「恥ずかしい?モノだからそう言う感情はない。俺は奴隷だから命令に従うだけだ」
「そっか、そうよね」
何を当然なことを?
「さ、洗い流すわね」
「ああ」
エミリーがシャワーを取ろうとした瞬間、裾に転び彼女はびしょ濡れになる。
「うう、最悪」
裾で転んだのか。確かにその制服はしゃがんだら床につくような丈だ。こけてもおかしくはないか。
「大丈夫か?」
一応声をかける。
ここでは発言自由。これは良いんだよな?
「うん、大丈夫。って前隠しなさいよってそんな感情は持ち合わせてないのよね。気にしないで。洗い流すわ」
「分かった」
その後エミリーはずっと真っ赤だった。
ルークを着替えさせるときも濡れてしまった自分の服を脱ぎ、着替えるときもだ。
俺たちはただ、生きているだけのモノだと言うのにどうしたのだろう。風邪だろうか。あそこまで真っ赤になるのは熱が出ているときぐらいか?
イザベラの寝室前にて
「うん、言われた通りの服を着せたしこれで私の役目は終わり。ルーク、いってらっしゃい」
「ああ、行ってくる」
スケスケの服。今までと変わらない。俺は性奴隷。そう、人ではない。モノなのだ。モノとしてイザベラ様に今から可愛がってもらおう。
「ルークです。参りました」
「入りなさい」
ルークは中に入る。
「奴隷紋があんなに。やっぱりルークは私以上に拒んだのね」
そう呟いたエミリーの声はもう中に入ったルークに届かない。
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