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4日目
②
しおりを挟む逃げ込んだのは小田の部屋だった。小田が強く佑月を抱きしめる。彼女は泣きじゃくった。この涙が何に起因するものかは全く分からなかった。ただ彼の温かさが心地よくて涙がとめどなく溢れ出していくのだ。
二人は抱き合った。佑月の涙が落ち着いてくると小田は形の良い鼻を彼女の首筋に寄せた。体に心地の良い電流が走るようだった。彼女は体を差し出すように胸を彼に押し付けた。
小田の唇が彼女のそれに寄せられるまでそう時間はかからなかった。
二人はまるで獣のようだった。不思議な感覚だった。まるで世界に二人しかいないかのようだった。世界が滅ぶと人間は本能を取り戻すらしい。二人は互いの体をむさぼった。愛し合うというにはあまりにも──少なくとも佑月にとっては──無機質な触れ合いだった。ただ心を満たすために体を満たしたのだ。
彼のハシバミ色の瞳が彼女の心を芯まで捉えて離さない。まるで支配されたかのように、彼女は目をそらすことができなかった。
「食べ物は潤沢にある」
彼はそう言ってパウチゼリーを彼女に渡した。
「これなら明日まで持つよ」
彼は当たり前のように明日を語った。今夜にでも自分はこの人に殺されるのだろう、と佑月は思った。
「小田さん」
「なに?」
「痛くしないでくださいね」
彼女の言葉に彼はびっくりするほど優しい笑顔を見せた。彼はゆっくりと近づいてくる。彼の手が伸びる。首でも絞められるのだろうかと、彼女は思わず目を閉じた。
「痛かった? ごめんね」
彼の温かい手が頬を撫でる。唇が瞼の淵をなぞる。彼から注がれているであろう愛情は、しかしながらほとんどが彼女の中から零れ落ちるようだった。彼女は、その中のほんの一握りの、自分にとって心地の良いものだけ胸に仕舞った。
「佑月さん、好きだよ」
彼は決定的なひと言を吐いた。彼女はそれに返事をしなかった。
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