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第一章:少年期
第10話 忘れられた迷宮
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ある程度、自由に魔術が使えるようになると、いよいよ運命を手繰り寄せるために動き出すことにした。
資金を調達する手段として僕が目をつけたのは、帝都の近くにある〈忘れられた迷宮〉だった。多くの迷宮には魔物が棲みつき、今も人間を拒むような深い闇をたたえている。
けれど迷宮には貴重な〈遺物〉が残されていて、それを無事に持ち帰ることができれば一攫千金も夢じゃない。
僕が目指す迷宮は、かつて〈神の門〉と呼ばれた〈転移門〉が設置されていた場所だ。〈転移門〉は、異世界とのつながりをもたらす神秘の扉でもある。
長い歴史の中でその多くが失われてしまい、異世界への道も断たれてしまったけど、〈転移門〉が設置されていた遺跡は今も世界中に残されていた。
そういった場所は、異次元から溢れ出る瘴気の影響を受けて迷宮に変わってしまっていた。
とても危険な場所だけど、迷宮には異世界からもたらされた〈遺物〉が眠っている。
ちなみに帝国を建国した英雄も、第一紀の初期〈エレンディ〉の時代に〈神の門〉を通って異世界からやってきた異種族だとされている。
迷宮の探索は危険で大変な仕事だけど、それでも財宝を目当てに多くの冒険者や傭兵が挑み続けている。彼らの中には、〈迷宮人〉と呼ばれる者たちもいて、〈遺物〉を回収して生計を立てている。
異世界からもたらされたという財宝は、人々に一攫千金の夢を見せると同時に、多くの命を飲み込んできた。
だからこそ国は迷宮を厳重に管理して、資格のない者が勝手に立ち入ることを禁じていた。魔物が徘徊する危険な場所だ。一般の人々には、到底足を踏み入れることのできない領域だった。
だけど僕には〈知識の書〉の記憶がある。あの書物には、この時代の人々が知らない迷宮の場所が記されていた。
そのなかには、まだ国に存在が知られていない迷宮が存在することも僕は知っていた。その迷宮には手つかずの〈遺物〉が眠っているはずだ。
僕は市場で必要なモノを買いそろえると、いつもの抜け道を使って街の外に出て、〈忘れられた迷宮〉に向かう。もちろん、相棒のゴーストと一緒だ。
迷宮が近づくにつれて、風が冷たく肌を刺すように感じられる。人気のない静かな森のなか、木々に埋もれた遺跡が見えてくる。そこに目的の迷宮が存在する。
この探索に失敗は許されない。僕の居場所は誰にも知られていないから、行方不明になっても探しにきてくれる人はいない。
それに、管理されていない迷宮に忍び込むことは重罪だった。だからこれまで以上に、慎重な行動が求められた。
けれど僕には頼れる相棒のゴーストがいる。まだ幼いとはいえ、その能力には助けられている。迷宮の暗闇でも、かれがいてくれれば少しは安心できるだろう。
迷宮に潜入する計画を立てた段階で、僕はゴーストと森で狩りの練習を積んでいた。草木が生い茂る暗がりを駆け抜けて、音を立てないようにウサギに忍び寄りながら、狩りや戦闘の感覚をつかんでいく。
ゴーストはまだ子犬と変わらない姿だったけど、〈気配察知〉に似た能力が使えて、僕よりも敵を見つけることに長けていた。相棒の力を借りれば、迷宮攻略も苦労しないだろう。
ちなみに、森で小動物を仕留めることができたときは、それを母さんへのささやかなお土産にしていた。もちろん、市場で手に入れたことにしていたけど。
母さんはいつも笑顔で受け取ってくれたけど、「危ない真似だけはするんじゃないよ」と決まって念を押された。何かに気づいていたのかもしれない。
母さんの言葉を思い出すと、少し後ろめたい気持ちになったけど、それでも迷宮攻略の決意は揺らがなかった。
僕は〈知識の書〉で得た膨大な記憶の中から、遺跡の正確な位置を思い出しながら慎重に森を進んだ。
古い記憶の断片が頭の中に浮かび上がり、特徴的な岩や木々の姿が見えてくるたびに、僕の心臓は少しずつ鼓動を早めていった。
目的の遺跡は、時間にすら忘れ去られた場所のようだった。長い年月の間、人々が立ち入らなかった場所だったこともあり、多くの建物が植物に埋もれてしまっていた。
生い茂る草をかき分けて進むと、目の前に石畳の道があらわれる。かつて神話の舞台となった遺跡の入り口が近いのだろう。そこは地中深くに続く暗い迷宮につながっている。
ほんの一瞬、足がすくむのを感じたけど、すぐに覚悟を決めてゴーストと共に迷宮内に足を踏み入れた。
資金を調達する手段として僕が目をつけたのは、帝都の近くにある〈忘れられた迷宮〉だった。多くの迷宮には魔物が棲みつき、今も人間を拒むような深い闇をたたえている。
けれど迷宮には貴重な〈遺物〉が残されていて、それを無事に持ち帰ることができれば一攫千金も夢じゃない。
僕が目指す迷宮は、かつて〈神の門〉と呼ばれた〈転移門〉が設置されていた場所だ。〈転移門〉は、異世界とのつながりをもたらす神秘の扉でもある。
長い歴史の中でその多くが失われてしまい、異世界への道も断たれてしまったけど、〈転移門〉が設置されていた遺跡は今も世界中に残されていた。
そういった場所は、異次元から溢れ出る瘴気の影響を受けて迷宮に変わってしまっていた。
とても危険な場所だけど、迷宮には異世界からもたらされた〈遺物〉が眠っている。
ちなみに帝国を建国した英雄も、第一紀の初期〈エレンディ〉の時代に〈神の門〉を通って異世界からやってきた異種族だとされている。
迷宮の探索は危険で大変な仕事だけど、それでも財宝を目当てに多くの冒険者や傭兵が挑み続けている。彼らの中には、〈迷宮人〉と呼ばれる者たちもいて、〈遺物〉を回収して生計を立てている。
異世界からもたらされたという財宝は、人々に一攫千金の夢を見せると同時に、多くの命を飲み込んできた。
だからこそ国は迷宮を厳重に管理して、資格のない者が勝手に立ち入ることを禁じていた。魔物が徘徊する危険な場所だ。一般の人々には、到底足を踏み入れることのできない領域だった。
だけど僕には〈知識の書〉の記憶がある。あの書物には、この時代の人々が知らない迷宮の場所が記されていた。
そのなかには、まだ国に存在が知られていない迷宮が存在することも僕は知っていた。その迷宮には手つかずの〈遺物〉が眠っているはずだ。
僕は市場で必要なモノを買いそろえると、いつもの抜け道を使って街の外に出て、〈忘れられた迷宮〉に向かう。もちろん、相棒のゴーストと一緒だ。
迷宮が近づくにつれて、風が冷たく肌を刺すように感じられる。人気のない静かな森のなか、木々に埋もれた遺跡が見えてくる。そこに目的の迷宮が存在する。
この探索に失敗は許されない。僕の居場所は誰にも知られていないから、行方不明になっても探しにきてくれる人はいない。
それに、管理されていない迷宮に忍び込むことは重罪だった。だからこれまで以上に、慎重な行動が求められた。
けれど僕には頼れる相棒のゴーストがいる。まだ幼いとはいえ、その能力には助けられている。迷宮の暗闇でも、かれがいてくれれば少しは安心できるだろう。
迷宮に潜入する計画を立てた段階で、僕はゴーストと森で狩りの練習を積んでいた。草木が生い茂る暗がりを駆け抜けて、音を立てないようにウサギに忍び寄りながら、狩りや戦闘の感覚をつかんでいく。
ゴーストはまだ子犬と変わらない姿だったけど、〈気配察知〉に似た能力が使えて、僕よりも敵を見つけることに長けていた。相棒の力を借りれば、迷宮攻略も苦労しないだろう。
ちなみに、森で小動物を仕留めることができたときは、それを母さんへのささやかなお土産にしていた。もちろん、市場で手に入れたことにしていたけど。
母さんはいつも笑顔で受け取ってくれたけど、「危ない真似だけはするんじゃないよ」と決まって念を押された。何かに気づいていたのかもしれない。
母さんの言葉を思い出すと、少し後ろめたい気持ちになったけど、それでも迷宮攻略の決意は揺らがなかった。
僕は〈知識の書〉で得た膨大な記憶の中から、遺跡の正確な位置を思い出しながら慎重に森を進んだ。
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目的の遺跡は、時間にすら忘れ去られた場所のようだった。長い年月の間、人々が立ち入らなかった場所だったこともあり、多くの建物が植物に埋もれてしまっていた。
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