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星海の海賊王
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第一章 逃亡者たち
俺の名前はカイ・ハルトマン。宇宙海賊だ。
いや、正確には「元」宇宙海賊。五年前に足を洗って、今は辺境惑星でしがない運送屋をやっている。
だが、過去は簡単には消えない。
「カイ! 帝国軍の巡洋艦が接近中! 超空間ジャンプまであと三分!」
相棒のゼノが、操縦席から叫んだ。ゼノは青い肌を持つゼルタ星人で、宇宙最高のパイロットだ。まあ、自称だが。
「くそっ、なんで俺たちを追ってくる!」
俺は、船倉に積んだ貨物を確認した。医薬品、食料、そして——
「まずいな......これ、ブラックマーケットの横流し品じゃないか」
依頼主に騙された。いや、最初から罠だったのかもしれない。
「カイ、決断しろ! このまま捕まるか、超空間に逃げ込むか!」
「決まってる。逃げるに決まってるだろ!」
ゼノが操縦桿を引いた。俺たちの船「ファルコン号」は、亜光速に加速し、超空間へ突入した。
視界が歪み、星々が光の線になる。超空間航行——通常空間を超えて、一瞬で何光年も移動する技術だ。
だが、問題があった。
「座標計算が間に合わなかった! どこに出るか分からない!」
「何だと!?」
超空間から通常空間に戻ると、そこは見知らぬ星域だった。
だが、星域だけではなかった。
目の前には、巨大な宇宙要塞が浮かんでいた。
全長十キロはある、黒い鋼鉄の塊。無数の砲台が、こちらを狙っている。
「これは......デスフォートレス!」
ゼノが叫んだ。
デスフォートレス——伝説の宇宙海賊王、ドレイク・シルヴァーの移動要塞。五年前、帝国軍との大戦で消えたと言われていた。
「まさか、まだ存在していたのか......」
通信が入った。
「正体不明の船、これよりデスフォートレスの管制下に入る。抵抗すれば撃沈する」
俺とゼノは、顔を見合わせた。
「どうする?」
「選択肢はないな。降伏だ」
こうして、俺たちは宇宙海賊の巣窟に引きずり込まれた。
デスフォートレスの格納庫に着陸すると、武装した海賊たちが取り囲んだ。
だが、その中に一人、見覚えのある顔があった。
「カイ・ハルトマン......久しぶりだな」
赤い髪の女性。鋭い目つき、腰には二丁の光線銃。
「リナ・クロス......お前、まだ生きていたのか」
リナは、俺のかつての仲間だ。五年前、帝国軍との戦いで死んだと思っていた。
「死ぬほど柔じゃない。それより、お前こそ何してる。海賊を辞めたって聞いたが」
「辞めたさ。でも、運悪く帝国軍に追われてな。超空間でランダムジャンプしたら、ここに出た」
「運が悪いのか、良いのか」リナは笑った。「とにかく、船長が会いたがっている。来い」
リナに案内され、俺たちは要塞の中枢へ向かった。
廊下を歩きながら、リナが説明した。
「五年前の戦いで、ドレイク船長は帝国の主力艦隊を相手に戦った。だが、圧倒的な戦力差で敗北寸前だった。その時、船長は秘密兵器を使った」
「秘密兵器?」
「次元跳躍装置。要塞ごと異次元に逃げ込んだんだ。そして、五年間、この空間に隠れていた」
「異次元だと? そんな技術、存在するのか?」
「船長が開発した。天才科学者でもあるからな」
広大な司令室に到着すると、そこには一人の男が立っていた。
五十代くらいの、白髪混じりの髪。だが、その目は若々しく、鋭い。
「カイ・ハルトマン。噂は聞いている。かつては『疾風の海賊』と呼ばれた男だな」
「ドレイク・シルヴァー......伝説の海賊王」
ドレイクは笑った。
「伝説? 俺はまだ現役だ。そして、お前に提案がある」
「提案?」
「俺たちと共に、帝国を倒さないか」
俺は、言葉を失った。
第二章 海賊同盟
「帝国を倒す? 正気か?」
俺は、ドレイクの言葉を信じられなかった。
銀河帝国は、千の星系を支配する巨大な勢力だ。軍事力、経済力、どれをとっても圧倒的。海賊ごときが勝てる相手ではない。
「正気さ」ドレイクは真剣な表情だった。「帝国は腐敗している。強者が弱者を搾取し、自由は奪われ、民は苦しんでいる。誰かが止めなければならない」
「それが俺たちの仕事か? 俺たちは海賊だぞ。正義の味方じゃない」
「正義? そんなものは知らん」ドレイクは吐き捨てた。「だが、俺には譲れないものがある。自由だ。誰にも支配されず、自分の意思で生きる権利。それを奪う者には、容赦しない」
俺は、ドレイクの目を見た。
そこには、確固たる信念があった。
「で、どうやって帝国を倒すつもりだ? いくらお前でも、帝国軍の全戦力を相手にはできないだろう」
「もちろんだ。だから、同盟を作る」
ドレイクは、ホログラムのスターマップを表示した。
「現在、銀河には三つの大きな海賊勢力がある。俺のシルヴァー艦隊、辺境のレッドファング艦隊、そして暗黒星域のゴースト艦隊。この三つが手を組めば、帝国にも対抗できる」
「だが、海賊同士が協力するか? 普段は敵同士だろう」
「だから、お前が必要なんだ」
ドレイクは、俺を指差した。
「お前は、三つの艦隊全てと関係がある。シルヴァー艦隊には元メンバーとして、レッドファング艦隊にはかつての取引相手として、ゴースト艦隊には......まあ、色々あるだろう」
「ゴースト艦隊とは、借金があるだけだが」
「それも関係だ」ドレイクは笑った。「お前が交渉役になれ。三つの艦隊を説得し、同盟を成立させろ」
「断ったら?」
「帝国軍に引き渡す」
リナが、冗談めかして言った。だが、その目は本気だった。
「脅迫か」
「交渉だ」ドレイクは訂正した。「お前には選択肢がある。俺たちと共に戦うか、帝国の奴隷になるか」
俺は、ゼノを見た。
ゼノは肩をすくめた。
「俺はお前についていく。どんな選択でも」
「......分かった。やるよ」
ドレイクは満足そうに頷いた。
「良い返事だ。では、さっそく準備を始めよう」
翌日、俺たちは最初の交渉先、レッドファング艦隊の本拠地へ向かった。
レッドファング艦隊は、辺境の無法地帯を支配する海賊団だ。リーダーは、獣人族のバロン・レッドファング。戦闘狂で知られている。
「カイ、バロンとは仲良いのか?」
ゼノが尋ねた。
「まあ、昔は取引していた。だが、最後の取引で少しトラブルがあってな......」
「どんなトラブルだ?」
「約束の貨物を、半分しか届けなかった」
「それは、まずいな」
レッドファング艦隊の母艦「クリムゾン・ハンター」に到着すると、バロンが出迎えた。
三メートルはある巨体、赤い毛皮、鋭い牙。まさに獣だ。
「カイ・ハルトマン! 五年ぶりだな! 借りを返しに来たのか?」
バロンの声は、雷のように響いた。
「いや、今日は別の用事だ。話を聞いてくれ」
「話? 俺は話より拳で語る方が好きだ!」
バロンが拳を振り上げた。
だが、その時、一人の少女が割って入った。
「父さん、待って。まず話を聞きましょう」
少女は、バロンの娘、リラだった。十五歳くらいに見えるが、すでに副長を務めている。
「リラ......お前、大きくなったな」
「カイおじさん、久しぶり。何の用?」
俺は、ドレイクの提案を説明した。
三つの海賊艦隊が同盟を組み、帝国に対抗する。
バロンは、しばらく考えてから言った。
「面白い。だが、条件がある」
「条件?」
「決闘だ。お前と俺、一対一で戦う。お前が勝ったら、同盟に参加する」
「負けたら?」
「お前は俺の部下になる」
リラが抗議した。
「父さん、それはフェアじゃない!」
「フェア? 海賊にフェアなんてないだろう」
バロンは笑った。
俺は、拳を握り締めた。
「いいだろう。やろうじゃないか」
決闘場に、歓声が響いた。
第三章 決闘と裏切り
決闘場は、クリムゾン・ハンターの格納庫を改造したものだった。
周囲には、レッドファング艦隊のクルーたちが集まり、賭けを始めている。
「カイ、お前大丈夫か? バロンは銀河でも有数の戦士だぞ」
ゼノが心配そうに言った。
「大丈夫じゃない。だが、やるしかない」
俺は、光剣を構えた。
バロンは、巨大な戦斧を持っている。
「ルールは簡単だ。武器は何を使ってもいい。相手が降参するか、戦闘不能になるまで戦う」
リラが審判を務めた。
「始め!」
バロンが突進してきた。
速い! あの巨体からは想像できない速度だ。
俺は横に跳び、バロンの斧を避けた。
反撃。光剣を振るう。
だが、バロンは斧で受け止めた。
火花が散る。
「なかなかやるな、カイ! だが、まだまだだ!」
バロンが斧を振り回す。
俺は、バックステップで距離を取った。
だが、バロンは追ってくる。
まずい。このままでは、スタミナ勝負になる。体力では、俺が不利だ。
頭を使え。バロンの弱点は——
そうだ。あの巨体。動きは速いが、小回りは利かない。
俺は、バロンの懐に飛び込んだ。
「何!?」
バロンが驚く。
俺は、光剣でバロンの足を狙った。
だが、バロンは予想以上に反応が速かった。
斧を下に振り下ろし、俺の剣を弾く。
そして、そのまま蹴りを放った。
「ぐあっ!」
俺は、吹き飛ばされた。
壁に叩きつけられ、息が止まる。
「カイ!」ゼノが叫んだ。
バロンが近づいてくる。
「終わりだ」
斧が振り上げられる。
だが、その時。
突然、警報が鳴り響いた。
「警告! 帝国軍艦隊接近! 戦闘配置に就け!」
バロンが舌打ちした。
「帝国軍だと? なぜここが分かった?」
リラが叫んだ。
「分かりません! ですが、敵艦隊は二十隻! 戦艦三隻を含みます!」
「くそ! 決闘は中断だ。全員、戦闘準備!」
バロンが命令を下した。
俺は、立ち上がった。
「待て。これはチャンスだ」
「何?」
「帝国軍と戦え。俺たちも協力する。そして、勝てたら、同盟に参加しろ」
バロンは、少し考えてから頷いた。
「面白い。やろうじゃないか」
宇宙空間で、激しい戦闘が始まった。
レッドファング艦隊の戦闘艦十五隻が、帝国軍の艦隊と交戦している。
俺とゼノは、ファルコン号で出撃した。
「ゼノ、敵の戦艦を狙う。エンジン部に魚雷を叩き込め」
「了解!」
ファルコン号は、小型で機動性が高い。大型艦の間をすり抜け、敵戦艦に接近する。
だが、敵の戦闘機が迎撃してきた。
「敵機、八機! 撃墜する!」
ゼノが、レーザー砲を連射した。
三機撃墜。だが、残り五機が迫る。
俺も砲座に座り、応戦した。
「くそ、数が多い!」
その時、援軍が来た。
リラが、自分の戦闘機で敵機を撃墜してくれた。
「カイおじさん、大丈夫?」
「助かった! 恩に着る!」
俺たちは、協力して敵戦艦に肉薄した。
「魚雷発射!」
ゼノが、魚雷を放った。
命中。敵戦艦のエンジンが爆発した。
「やった!」
だが、喜んでいる場合ではなかった。
帝国軍の旗艦が、超大型のビーム砲を充填している。
「あれは......プラズマ・キャノン! 一撃でクリムゾン・ハンターを破壊できるぞ!」
リラが叫んだ。
「どうする!?」
その時、通信が入った。
ドレイクの声だった。
「カイ、聞こえるか。俺たちも到着した。今から援護する」
「ドレイク!」
宙域に、デスフォートレスが出現した。
そして、要塞の主砲が、帝国軍旗艦を狙った。
「発射!」
巨大なビームが、帝国軍旗艦を貫いた。
旗艦は、真っ二つに裂けた。
「やった! 勝った!」
レッドファング艦隊のクルーたちが歓声を上げた。
だが、その時。
通信が、全艦に入った。
「これより、帝国軍第七艦隊が到着する。全海賊艦隊は投降せよ」
遠方から、さらに巨大な艦隊が出現した。
その数、百隻以上。
「罠だ......」バロンが呟いた。
第四章 三艦隊連合
「撤退だ! 全艦、超空間へ跳べ!」
ドレイクが命令した。
だが、帝国軍は既に超空間妨害装置を展開していた。
「跳べません! 超空間が封鎖されています!」
ゼノが叫んだ。
「くそ! これは完全に罠だった!」
俺は、状況を理解した。
帝国軍は、最初から俺たちがレッドファング艦隊と接触することを知っていた。そして、二つの艦隊をまとめて殲滅するつもりだ。
「誰かが、情報を漏らしたのか?」
リナが疑念を口にした。
「今はそれを追求している場合じゃない! 戦うしかない!」
バロンが吠えた。
「だが、敵は百隻以上だぞ! 勝ち目がない!」
その時、新しい通信が入った。
「やあ、カイ。久しぶりだな」
聞き覚えのある声だった。
「まさか......ヴィクター・ゴースト!?」
暗黒星域を支配するゴースト艦隊のリーダー、ヴィクター・ゴースト。かつて俺が借金をしている相手だ。
「借金の取り立てに来たわけじゃない。助けに来た」
宙域に、黒い艦隊が出現した。
ゴースト艦隊、三十隻。
「ヴィクター、なぜここに?」
「ドレイクから連絡があった。三艦隊同盟の話、面白そうだからな。参加させてもらう」
「借金は?」
「後で返せ。今は、帝国軍を倒すのが先だ」
ヴィクターの艦隊が、帝国軍に攻撃を開始した。
「よし! 三艦隊で協力して戦う!」
ドレイクが指揮を執った。
「シルヴァー艦隊は中央を攻める! レッドファング艦隊は左翼! ゴースト艦隊は右翼! カイ、お前は遊撃隊だ。敵の指揮艦を狙え!」
「了解!」
三艦隊連合、総勢六十隻が、帝国軍百隻と激突した。
激しい戦闘。
レーザーが飛び交い、魚雷が爆発し、艦が次々と撃沈される。
だが、数の差は埋まらない。
「このままでは、じり貧だ!」
ゼノが叫んだ。
俺は、作戦を考えた。
「ドレイク、デスフォートレスの次元跳躍装置、まだ使えるか?」
「使えるが、要塞しか跳べない。艦隊全体は無理だ」
「いや、それでいい。要塞を敵艦隊の中心に跳ばせろ。そして、至近距離で主砲を全門斉射しろ」
「危険すぎる! 要塞が敵の集中砲火を浴びる!」
「だから、その前に俺たちが敵の注意を引く。全艦隊で、敵の旗艦を攻撃しろ!」
バロンが笑った。
「無茶な作戦だが、面白い! やってやろうじゃないか!」
ヴィクターも同意した。
「賛成だ。どうせ、このままでは全滅する。賭けに出よう」
三艦隊が、帝国軍旗艦に突撃した。
帝国軍は、旗艦を守るために艦隊を集中させた。
「今だ! ドレイク!」
「了解! 次元跳躍、開始!」
デスフォートレスが、一瞬で消えた。
そして、敵艦隊の中心に出現した。
「全門、発射!」
要塞の全ての砲台が、一斉に火を噴いた。
数百のビームが、敵艦を貫いた。
十隻、二十隻、三十隻——
敵艦が次々と爆発した。
「やった!」
だが、帝国軍もすぐに反撃してきた。
デスフォートレスが、集中砲火を浴びる。
「シールド出力低下! 持ちません!」
ドレイクの艦で、警報が鳴り響いた。
「撤退だ! 全艦、デスフォートレスを援護しろ!」
俺が叫んだ。
三艦隊が、要塞を守るために敵艦に攻撃を加えた。
そして、ついに帝国軍旗艦が爆発した。
指揮系統を失った帝国軍は、混乱した。
「今だ! 超空間妨害装置を破壊しろ!」
ゼノが、妨害装置を搭載した敵艦に魚雷を撃ち込んだ。
装置が破壊され、超空間が開放された。
「全艦、撤退! 超空間へ跳べ!」
三艦隊は、一斉に超空間へ跳んだ。
こうして、三艦隊連合の最初の勝利を得た。
第五章 海賊王の誕生
安全な宙域に到着した後、三艦隊のリーダーたちが会議を開いた。
ドレイク、バロン、ヴィクター、そして俺。
「カイ、お前の作戦が成功した」
ドレイクが言った。
「運が良かっただけだ」
「いや、お前の判断力と度胸だ」バロンが笑った。「俺は認める。お前は強い」
ヴィクターも頷いた。
「借金はチャラにしてやる。今回の働きで十分だ」
「ありがとう......でも、これからどうする? 帝国は、本気で俺たちを潰しにくるぞ」
ドレイクが立ち上がった。
「だから、正式に同盟を結ぶ。三艦隊連合——いや、『自由艦隊同盟』を結成する」
「自由艦隊同盟?」
「ああ。俺たちは、自由のために戦う。帝国の圧政から、銀河の人々を解放するために」
バロンが手を差し出した。
「賛成だ。俺も、自由が好きだ」
ヴィクターも手を重ねた。
「同意する。帝国には、借りがある。返させてもらう」
ドレイクが俺を見た。
「カイ、お前はどうする? 俺たちと共に戦うか?」
俺は、少し考えた。
五年前、俺は海賊を辞めた。平和な生活を望んだ。
だが、平和は幻想だった。
帝国がある限り、真の自由はない。
「やるよ。ただし、条件がある」
「条件?」
「俺が、作戦指揮を執る。お前たちは、俺の指示に従え」
ドレイクが笑った。
「生意気な奴だ。だが、いいだろう。お前の能力は認める」
こうして、自由艦隊同盟が結成された。
それから半年が経った。
自由艦隊同盟は、各地で帝国軍と戦い、勝利を重ねた。
辺境の星系を解放し、民衆の支持を得た。
そして、同盟に参加する艦隊が増えた。
今や、自由艦隊同盟は百隻以上の艦隊を擁する大勢力になった。
だが、帝国も黙っていなかった。
帝国軍最強の提督、アドミラル・クロノスが、大艦隊を率いて攻めてきた。
「敵艦隊、三百隻! 旗艦は超弩級戦艦『インペリアル』!」
ゼノが報告した。
「三百隻か......こちらは百二十隻。数では不利だが、勝機はある」
俺は、作戦を立てた。
「敵の戦力を分断する。小部隊で敵を引きつけ、主力で各個撃破する」
「分かった。だが、誰が囮になる?」
「俺たちだ」
俺は、ファルコン号で出撃した。
ゼノ、リナ、リラ、そして選ばれた精鋭パイロットたちと共に。
「行くぞ。帝国軍に、海賊の恐ろしさを教えてやる」
激しい戦闘が始まった。
俺たちの小部隊は、敵艦隊の中に突入した。
「撃て! 撃て!」
敵艦が次々と攻撃してきた。
だが、俺たちは巧みに回避し、反撃した。
「敵の注意を引いた! 主力艦隊、攻撃開始!」
ドレイク、バロン、ヴィクターが率いる主力艦隊が、分断された敵艦隊を攻撃した。
敵は混乱した。
だが、旗艦インペリアルは健在だった。
「カイ・ハルトマン、お前がリーダーか」
通信に、アドミラル・クロノスの声が入った。
「ああ、そうだ」
「面白い。では、一騎打ちといこう。お前の船と、俺の旗艦で」
「馬鹿げている。小型船が戦艦に勝てるわけがない」
「ならば、戦艦を落としてみせろ」
俺は笑った。
「いいだろう。やってやる」
ファルコン号は、インペリアルに突撃した。
敵の砲撃が、次々と迫る。
だが、ゼノの操縦技術は神業だ。
全ての攻撃を回避し、敵艦に接近した。
「カイ、どうする気だ!?」
「シールド発生装置を狙う。そこを破壊すれば、装甲が剥き出しになる」
「無茶だ! 近づく前に撃墜される!」
「だから、お前の腕を信じてる」
ゼノは、決意を固めた。
「分かった。やってやる!」
ファルコン号は、敵艦の下部に回り込んだ。
そして、シールド発生装置に魚雷を撃ち込んだ。
命中。
シールドが消失した。
「今だ! 全艦、インペリアルを攻撃しろ!」
自由艦隊同盟の全艦が、旗艦に集中砲火を浴びせた。
装甲が耐えきれず、インペリアルは爆発した。
「やった! 勝った!」
歓声が上がった。
帝国軍は、旗艦を失い、撤退した。
戦闘後、俺たちは勝利を祝った。
ドレイクが、俺の肩を叩いた。
「カイ、お前は本物のリーダーだ。俺は、お前を『海賊王』と呼ぼう」
「海賊王? 大げさだろ」
「いや、ふさわしい」バロンが言った。「お前は、俺たちをまとめ、勝利に導いた」
ヴィクターも頷いた。
「今日から、お前が自由艦隊同盟の総司令官だ」
俺は、仲間たちを見渡した。
リナ、ゼノ、リラ、そして無数のクルーたち。
「分かった。俺が、海賊王になろう。そして、この銀河に自由をもたらす」
全員が、歓声を上げた。
「海賊王万歳!」
エピローグ
それから三年が経った。
自由艦隊同盟は、帝国との戦いを続けた。
そして、ついに帝国の首都星を包囲した。
皇帝は降伏し、新しい政府が樹立された。
銀河に、自由が戻った。
俺は、海賊王として、新政府の顧問に就任した。
だが、俺の心は、まだ宇宙を彷徨っている。
「カイ、次はどこに行く?」
ゼノが尋ねた。
「未知の宙域だ。まだ見ぬ星々を探検しよう」
「いつまでも冒険者だな」
「ああ。それが、俺の生き方だ」
ファルコン号は、再び星海へ飛び立った。
冒険は、終わらない。
星海は広く、俺たちの旅は続く。
俺の名前はカイ・ハルトマン。宇宙海賊だ。
いや、正確には「元」宇宙海賊。五年前に足を洗って、今は辺境惑星でしがない運送屋をやっている。
だが、過去は簡単には消えない。
「カイ! 帝国軍の巡洋艦が接近中! 超空間ジャンプまであと三分!」
相棒のゼノが、操縦席から叫んだ。ゼノは青い肌を持つゼルタ星人で、宇宙最高のパイロットだ。まあ、自称だが。
「くそっ、なんで俺たちを追ってくる!」
俺は、船倉に積んだ貨物を確認した。医薬品、食料、そして——
「まずいな......これ、ブラックマーケットの横流し品じゃないか」
依頼主に騙された。いや、最初から罠だったのかもしれない。
「カイ、決断しろ! このまま捕まるか、超空間に逃げ込むか!」
「決まってる。逃げるに決まってるだろ!」
ゼノが操縦桿を引いた。俺たちの船「ファルコン号」は、亜光速に加速し、超空間へ突入した。
視界が歪み、星々が光の線になる。超空間航行——通常空間を超えて、一瞬で何光年も移動する技術だ。
だが、問題があった。
「座標計算が間に合わなかった! どこに出るか分からない!」
「何だと!?」
超空間から通常空間に戻ると、そこは見知らぬ星域だった。
だが、星域だけではなかった。
目の前には、巨大な宇宙要塞が浮かんでいた。
全長十キロはある、黒い鋼鉄の塊。無数の砲台が、こちらを狙っている。
「これは......デスフォートレス!」
ゼノが叫んだ。
デスフォートレス——伝説の宇宙海賊王、ドレイク・シルヴァーの移動要塞。五年前、帝国軍との大戦で消えたと言われていた。
「まさか、まだ存在していたのか......」
通信が入った。
「正体不明の船、これよりデスフォートレスの管制下に入る。抵抗すれば撃沈する」
俺とゼノは、顔を見合わせた。
「どうする?」
「選択肢はないな。降伏だ」
こうして、俺たちは宇宙海賊の巣窟に引きずり込まれた。
デスフォートレスの格納庫に着陸すると、武装した海賊たちが取り囲んだ。
だが、その中に一人、見覚えのある顔があった。
「カイ・ハルトマン......久しぶりだな」
赤い髪の女性。鋭い目つき、腰には二丁の光線銃。
「リナ・クロス......お前、まだ生きていたのか」
リナは、俺のかつての仲間だ。五年前、帝国軍との戦いで死んだと思っていた。
「死ぬほど柔じゃない。それより、お前こそ何してる。海賊を辞めたって聞いたが」
「辞めたさ。でも、運悪く帝国軍に追われてな。超空間でランダムジャンプしたら、ここに出た」
「運が悪いのか、良いのか」リナは笑った。「とにかく、船長が会いたがっている。来い」
リナに案内され、俺たちは要塞の中枢へ向かった。
廊下を歩きながら、リナが説明した。
「五年前の戦いで、ドレイク船長は帝国の主力艦隊を相手に戦った。だが、圧倒的な戦力差で敗北寸前だった。その時、船長は秘密兵器を使った」
「秘密兵器?」
「次元跳躍装置。要塞ごと異次元に逃げ込んだんだ。そして、五年間、この空間に隠れていた」
「異次元だと? そんな技術、存在するのか?」
「船長が開発した。天才科学者でもあるからな」
広大な司令室に到着すると、そこには一人の男が立っていた。
五十代くらいの、白髪混じりの髪。だが、その目は若々しく、鋭い。
「カイ・ハルトマン。噂は聞いている。かつては『疾風の海賊』と呼ばれた男だな」
「ドレイク・シルヴァー......伝説の海賊王」
ドレイクは笑った。
「伝説? 俺はまだ現役だ。そして、お前に提案がある」
「提案?」
「俺たちと共に、帝国を倒さないか」
俺は、言葉を失った。
第二章 海賊同盟
「帝国を倒す? 正気か?」
俺は、ドレイクの言葉を信じられなかった。
銀河帝国は、千の星系を支配する巨大な勢力だ。軍事力、経済力、どれをとっても圧倒的。海賊ごときが勝てる相手ではない。
「正気さ」ドレイクは真剣な表情だった。「帝国は腐敗している。強者が弱者を搾取し、自由は奪われ、民は苦しんでいる。誰かが止めなければならない」
「それが俺たちの仕事か? 俺たちは海賊だぞ。正義の味方じゃない」
「正義? そんなものは知らん」ドレイクは吐き捨てた。「だが、俺には譲れないものがある。自由だ。誰にも支配されず、自分の意思で生きる権利。それを奪う者には、容赦しない」
俺は、ドレイクの目を見た。
そこには、確固たる信念があった。
「で、どうやって帝国を倒すつもりだ? いくらお前でも、帝国軍の全戦力を相手にはできないだろう」
「もちろんだ。だから、同盟を作る」
ドレイクは、ホログラムのスターマップを表示した。
「現在、銀河には三つの大きな海賊勢力がある。俺のシルヴァー艦隊、辺境のレッドファング艦隊、そして暗黒星域のゴースト艦隊。この三つが手を組めば、帝国にも対抗できる」
「だが、海賊同士が協力するか? 普段は敵同士だろう」
「だから、お前が必要なんだ」
ドレイクは、俺を指差した。
「お前は、三つの艦隊全てと関係がある。シルヴァー艦隊には元メンバーとして、レッドファング艦隊にはかつての取引相手として、ゴースト艦隊には......まあ、色々あるだろう」
「ゴースト艦隊とは、借金があるだけだが」
「それも関係だ」ドレイクは笑った。「お前が交渉役になれ。三つの艦隊を説得し、同盟を成立させろ」
「断ったら?」
「帝国軍に引き渡す」
リナが、冗談めかして言った。だが、その目は本気だった。
「脅迫か」
「交渉だ」ドレイクは訂正した。「お前には選択肢がある。俺たちと共に戦うか、帝国の奴隷になるか」
俺は、ゼノを見た。
ゼノは肩をすくめた。
「俺はお前についていく。どんな選択でも」
「......分かった。やるよ」
ドレイクは満足そうに頷いた。
「良い返事だ。では、さっそく準備を始めよう」
翌日、俺たちは最初の交渉先、レッドファング艦隊の本拠地へ向かった。
レッドファング艦隊は、辺境の無法地帯を支配する海賊団だ。リーダーは、獣人族のバロン・レッドファング。戦闘狂で知られている。
「カイ、バロンとは仲良いのか?」
ゼノが尋ねた。
「まあ、昔は取引していた。だが、最後の取引で少しトラブルがあってな......」
「どんなトラブルだ?」
「約束の貨物を、半分しか届けなかった」
「それは、まずいな」
レッドファング艦隊の母艦「クリムゾン・ハンター」に到着すると、バロンが出迎えた。
三メートルはある巨体、赤い毛皮、鋭い牙。まさに獣だ。
「カイ・ハルトマン! 五年ぶりだな! 借りを返しに来たのか?」
バロンの声は、雷のように響いた。
「いや、今日は別の用事だ。話を聞いてくれ」
「話? 俺は話より拳で語る方が好きだ!」
バロンが拳を振り上げた。
だが、その時、一人の少女が割って入った。
「父さん、待って。まず話を聞きましょう」
少女は、バロンの娘、リラだった。十五歳くらいに見えるが、すでに副長を務めている。
「リラ......お前、大きくなったな」
「カイおじさん、久しぶり。何の用?」
俺は、ドレイクの提案を説明した。
三つの海賊艦隊が同盟を組み、帝国に対抗する。
バロンは、しばらく考えてから言った。
「面白い。だが、条件がある」
「条件?」
「決闘だ。お前と俺、一対一で戦う。お前が勝ったら、同盟に参加する」
「負けたら?」
「お前は俺の部下になる」
リラが抗議した。
「父さん、それはフェアじゃない!」
「フェア? 海賊にフェアなんてないだろう」
バロンは笑った。
俺は、拳を握り締めた。
「いいだろう。やろうじゃないか」
決闘場に、歓声が響いた。
第三章 決闘と裏切り
決闘場は、クリムゾン・ハンターの格納庫を改造したものだった。
周囲には、レッドファング艦隊のクルーたちが集まり、賭けを始めている。
「カイ、お前大丈夫か? バロンは銀河でも有数の戦士だぞ」
ゼノが心配そうに言った。
「大丈夫じゃない。だが、やるしかない」
俺は、光剣を構えた。
バロンは、巨大な戦斧を持っている。
「ルールは簡単だ。武器は何を使ってもいい。相手が降参するか、戦闘不能になるまで戦う」
リラが審判を務めた。
「始め!」
バロンが突進してきた。
速い! あの巨体からは想像できない速度だ。
俺は横に跳び、バロンの斧を避けた。
反撃。光剣を振るう。
だが、バロンは斧で受け止めた。
火花が散る。
「なかなかやるな、カイ! だが、まだまだだ!」
バロンが斧を振り回す。
俺は、バックステップで距離を取った。
だが、バロンは追ってくる。
まずい。このままでは、スタミナ勝負になる。体力では、俺が不利だ。
頭を使え。バロンの弱点は——
そうだ。あの巨体。動きは速いが、小回りは利かない。
俺は、バロンの懐に飛び込んだ。
「何!?」
バロンが驚く。
俺は、光剣でバロンの足を狙った。
だが、バロンは予想以上に反応が速かった。
斧を下に振り下ろし、俺の剣を弾く。
そして、そのまま蹴りを放った。
「ぐあっ!」
俺は、吹き飛ばされた。
壁に叩きつけられ、息が止まる。
「カイ!」ゼノが叫んだ。
バロンが近づいてくる。
「終わりだ」
斧が振り上げられる。
だが、その時。
突然、警報が鳴り響いた。
「警告! 帝国軍艦隊接近! 戦闘配置に就け!」
バロンが舌打ちした。
「帝国軍だと? なぜここが分かった?」
リラが叫んだ。
「分かりません! ですが、敵艦隊は二十隻! 戦艦三隻を含みます!」
「くそ! 決闘は中断だ。全員、戦闘準備!」
バロンが命令を下した。
俺は、立ち上がった。
「待て。これはチャンスだ」
「何?」
「帝国軍と戦え。俺たちも協力する。そして、勝てたら、同盟に参加しろ」
バロンは、少し考えてから頷いた。
「面白い。やろうじゃないか」
宇宙空間で、激しい戦闘が始まった。
レッドファング艦隊の戦闘艦十五隻が、帝国軍の艦隊と交戦している。
俺とゼノは、ファルコン号で出撃した。
「ゼノ、敵の戦艦を狙う。エンジン部に魚雷を叩き込め」
「了解!」
ファルコン号は、小型で機動性が高い。大型艦の間をすり抜け、敵戦艦に接近する。
だが、敵の戦闘機が迎撃してきた。
「敵機、八機! 撃墜する!」
ゼノが、レーザー砲を連射した。
三機撃墜。だが、残り五機が迫る。
俺も砲座に座り、応戦した。
「くそ、数が多い!」
その時、援軍が来た。
リラが、自分の戦闘機で敵機を撃墜してくれた。
「カイおじさん、大丈夫?」
「助かった! 恩に着る!」
俺たちは、協力して敵戦艦に肉薄した。
「魚雷発射!」
ゼノが、魚雷を放った。
命中。敵戦艦のエンジンが爆発した。
「やった!」
だが、喜んでいる場合ではなかった。
帝国軍の旗艦が、超大型のビーム砲を充填している。
「あれは......プラズマ・キャノン! 一撃でクリムゾン・ハンターを破壊できるぞ!」
リラが叫んだ。
「どうする!?」
その時、通信が入った。
ドレイクの声だった。
「カイ、聞こえるか。俺たちも到着した。今から援護する」
「ドレイク!」
宙域に、デスフォートレスが出現した。
そして、要塞の主砲が、帝国軍旗艦を狙った。
「発射!」
巨大なビームが、帝国軍旗艦を貫いた。
旗艦は、真っ二つに裂けた。
「やった! 勝った!」
レッドファング艦隊のクルーたちが歓声を上げた。
だが、その時。
通信が、全艦に入った。
「これより、帝国軍第七艦隊が到着する。全海賊艦隊は投降せよ」
遠方から、さらに巨大な艦隊が出現した。
その数、百隻以上。
「罠だ......」バロンが呟いた。
第四章 三艦隊連合
「撤退だ! 全艦、超空間へ跳べ!」
ドレイクが命令した。
だが、帝国軍は既に超空間妨害装置を展開していた。
「跳べません! 超空間が封鎖されています!」
ゼノが叫んだ。
「くそ! これは完全に罠だった!」
俺は、状況を理解した。
帝国軍は、最初から俺たちがレッドファング艦隊と接触することを知っていた。そして、二つの艦隊をまとめて殲滅するつもりだ。
「誰かが、情報を漏らしたのか?」
リナが疑念を口にした。
「今はそれを追求している場合じゃない! 戦うしかない!」
バロンが吠えた。
「だが、敵は百隻以上だぞ! 勝ち目がない!」
その時、新しい通信が入った。
「やあ、カイ。久しぶりだな」
聞き覚えのある声だった。
「まさか......ヴィクター・ゴースト!?」
暗黒星域を支配するゴースト艦隊のリーダー、ヴィクター・ゴースト。かつて俺が借金をしている相手だ。
「借金の取り立てに来たわけじゃない。助けに来た」
宙域に、黒い艦隊が出現した。
ゴースト艦隊、三十隻。
「ヴィクター、なぜここに?」
「ドレイクから連絡があった。三艦隊同盟の話、面白そうだからな。参加させてもらう」
「借金は?」
「後で返せ。今は、帝国軍を倒すのが先だ」
ヴィクターの艦隊が、帝国軍に攻撃を開始した。
「よし! 三艦隊で協力して戦う!」
ドレイクが指揮を執った。
「シルヴァー艦隊は中央を攻める! レッドファング艦隊は左翼! ゴースト艦隊は右翼! カイ、お前は遊撃隊だ。敵の指揮艦を狙え!」
「了解!」
三艦隊連合、総勢六十隻が、帝国軍百隻と激突した。
激しい戦闘。
レーザーが飛び交い、魚雷が爆発し、艦が次々と撃沈される。
だが、数の差は埋まらない。
「このままでは、じり貧だ!」
ゼノが叫んだ。
俺は、作戦を考えた。
「ドレイク、デスフォートレスの次元跳躍装置、まだ使えるか?」
「使えるが、要塞しか跳べない。艦隊全体は無理だ」
「いや、それでいい。要塞を敵艦隊の中心に跳ばせろ。そして、至近距離で主砲を全門斉射しろ」
「危険すぎる! 要塞が敵の集中砲火を浴びる!」
「だから、その前に俺たちが敵の注意を引く。全艦隊で、敵の旗艦を攻撃しろ!」
バロンが笑った。
「無茶な作戦だが、面白い! やってやろうじゃないか!」
ヴィクターも同意した。
「賛成だ。どうせ、このままでは全滅する。賭けに出よう」
三艦隊が、帝国軍旗艦に突撃した。
帝国軍は、旗艦を守るために艦隊を集中させた。
「今だ! ドレイク!」
「了解! 次元跳躍、開始!」
デスフォートレスが、一瞬で消えた。
そして、敵艦隊の中心に出現した。
「全門、発射!」
要塞の全ての砲台が、一斉に火を噴いた。
数百のビームが、敵艦を貫いた。
十隻、二十隻、三十隻——
敵艦が次々と爆発した。
「やった!」
だが、帝国軍もすぐに反撃してきた。
デスフォートレスが、集中砲火を浴びる。
「シールド出力低下! 持ちません!」
ドレイクの艦で、警報が鳴り響いた。
「撤退だ! 全艦、デスフォートレスを援護しろ!」
俺が叫んだ。
三艦隊が、要塞を守るために敵艦に攻撃を加えた。
そして、ついに帝国軍旗艦が爆発した。
指揮系統を失った帝国軍は、混乱した。
「今だ! 超空間妨害装置を破壊しろ!」
ゼノが、妨害装置を搭載した敵艦に魚雷を撃ち込んだ。
装置が破壊され、超空間が開放された。
「全艦、撤退! 超空間へ跳べ!」
三艦隊は、一斉に超空間へ跳んだ。
こうして、三艦隊連合の最初の勝利を得た。
第五章 海賊王の誕生
安全な宙域に到着した後、三艦隊のリーダーたちが会議を開いた。
ドレイク、バロン、ヴィクター、そして俺。
「カイ、お前の作戦が成功した」
ドレイクが言った。
「運が良かっただけだ」
「いや、お前の判断力と度胸だ」バロンが笑った。「俺は認める。お前は強い」
ヴィクターも頷いた。
「借金はチャラにしてやる。今回の働きで十分だ」
「ありがとう......でも、これからどうする? 帝国は、本気で俺たちを潰しにくるぞ」
ドレイクが立ち上がった。
「だから、正式に同盟を結ぶ。三艦隊連合——いや、『自由艦隊同盟』を結成する」
「自由艦隊同盟?」
「ああ。俺たちは、自由のために戦う。帝国の圧政から、銀河の人々を解放するために」
バロンが手を差し出した。
「賛成だ。俺も、自由が好きだ」
ヴィクターも手を重ねた。
「同意する。帝国には、借りがある。返させてもらう」
ドレイクが俺を見た。
「カイ、お前はどうする? 俺たちと共に戦うか?」
俺は、少し考えた。
五年前、俺は海賊を辞めた。平和な生活を望んだ。
だが、平和は幻想だった。
帝国がある限り、真の自由はない。
「やるよ。ただし、条件がある」
「条件?」
「俺が、作戦指揮を執る。お前たちは、俺の指示に従え」
ドレイクが笑った。
「生意気な奴だ。だが、いいだろう。お前の能力は認める」
こうして、自由艦隊同盟が結成された。
それから半年が経った。
自由艦隊同盟は、各地で帝国軍と戦い、勝利を重ねた。
辺境の星系を解放し、民衆の支持を得た。
そして、同盟に参加する艦隊が増えた。
今や、自由艦隊同盟は百隻以上の艦隊を擁する大勢力になった。
だが、帝国も黙っていなかった。
帝国軍最強の提督、アドミラル・クロノスが、大艦隊を率いて攻めてきた。
「敵艦隊、三百隻! 旗艦は超弩級戦艦『インペリアル』!」
ゼノが報告した。
「三百隻か......こちらは百二十隻。数では不利だが、勝機はある」
俺は、作戦を立てた。
「敵の戦力を分断する。小部隊で敵を引きつけ、主力で各個撃破する」
「分かった。だが、誰が囮になる?」
「俺たちだ」
俺は、ファルコン号で出撃した。
ゼノ、リナ、リラ、そして選ばれた精鋭パイロットたちと共に。
「行くぞ。帝国軍に、海賊の恐ろしさを教えてやる」
激しい戦闘が始まった。
俺たちの小部隊は、敵艦隊の中に突入した。
「撃て! 撃て!」
敵艦が次々と攻撃してきた。
だが、俺たちは巧みに回避し、反撃した。
「敵の注意を引いた! 主力艦隊、攻撃開始!」
ドレイク、バロン、ヴィクターが率いる主力艦隊が、分断された敵艦隊を攻撃した。
敵は混乱した。
だが、旗艦インペリアルは健在だった。
「カイ・ハルトマン、お前がリーダーか」
通信に、アドミラル・クロノスの声が入った。
「ああ、そうだ」
「面白い。では、一騎打ちといこう。お前の船と、俺の旗艦で」
「馬鹿げている。小型船が戦艦に勝てるわけがない」
「ならば、戦艦を落としてみせろ」
俺は笑った。
「いいだろう。やってやる」
ファルコン号は、インペリアルに突撃した。
敵の砲撃が、次々と迫る。
だが、ゼノの操縦技術は神業だ。
全ての攻撃を回避し、敵艦に接近した。
「カイ、どうする気だ!?」
「シールド発生装置を狙う。そこを破壊すれば、装甲が剥き出しになる」
「無茶だ! 近づく前に撃墜される!」
「だから、お前の腕を信じてる」
ゼノは、決意を固めた。
「分かった。やってやる!」
ファルコン号は、敵艦の下部に回り込んだ。
そして、シールド発生装置に魚雷を撃ち込んだ。
命中。
シールドが消失した。
「今だ! 全艦、インペリアルを攻撃しろ!」
自由艦隊同盟の全艦が、旗艦に集中砲火を浴びせた。
装甲が耐えきれず、インペリアルは爆発した。
「やった! 勝った!」
歓声が上がった。
帝国軍は、旗艦を失い、撤退した。
戦闘後、俺たちは勝利を祝った。
ドレイクが、俺の肩を叩いた。
「カイ、お前は本物のリーダーだ。俺は、お前を『海賊王』と呼ぼう」
「海賊王? 大げさだろ」
「いや、ふさわしい」バロンが言った。「お前は、俺たちをまとめ、勝利に導いた」
ヴィクターも頷いた。
「今日から、お前が自由艦隊同盟の総司令官だ」
俺は、仲間たちを見渡した。
リナ、ゼノ、リラ、そして無数のクルーたち。
「分かった。俺が、海賊王になろう。そして、この銀河に自由をもたらす」
全員が、歓声を上げた。
「海賊王万歳!」
エピローグ
それから三年が経った。
自由艦隊同盟は、帝国との戦いを続けた。
そして、ついに帝国の首都星を包囲した。
皇帝は降伏し、新しい政府が樹立された。
銀河に、自由が戻った。
俺は、海賊王として、新政府の顧問に就任した。
だが、俺の心は、まだ宇宙を彷徨っている。
「カイ、次はどこに行く?」
ゼノが尋ねた。
「未知の宙域だ。まだ見ぬ星々を探検しよう」
「いつまでも冒険者だな」
「ああ。それが、俺の生き方だ」
ファルコン号は、再び星海へ飛び立った。
冒険は、終わらない。
星海は広く、俺たちの旅は続く。
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