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新雪小太郎

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屋台が消える日

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あなたが静かに、
ほんまに静かに言ったひとこと。
「……主にはならん。」
その言葉は、
屋台の根っこ──千願樹の記憶に突き刺さる。
木が軋む。
屋台を囲む空気が薄くなる。
シェリー
「……そんな……
 店が……消えていく……」
小太郎
「おい、屋台! やめろや!!
 まだ何も言うてへんやんか!!」
でも屋台は止まらへん。
まるで、
“長い役目をようやく終えられる”
そんな安堵すら感じさせる静けさや。
◆ ■ 千願樹の最後の囁き
屋台の柱が、かすかに光って、
あなたに声なき声を送る。
──ありがとう。
 あなたが拒んでくれたことで、
 わたしはようやく眠れる。
屋台は、
誰かの願いを吸いすぎて、
もう限界やったんや。
本来は万央が死んだ時点で終わるはずやった。
小太郎を拾ったときも、
無理して動いていた。
あなたが主になれば、
もう一度無理をすることになる。
あなたが拒んだことで、
屋台は“終わってよい”と判断した。
◆ ■ 光がひとつずつ消える
奥の部屋にあった願いの光が、
ひとつずつ、
ロウソクの火が消えるように消えていく。
泣き声も、笑い声も、
未練も、祈りも──
静かに、静かに消えていく。
シェリー
「……千願樹が……願いを返してる……
 みんなの夜に、そっと戻してる……」
千願樹は、
吸い続けていた願いを、
元の持ち主にゆっくり返しながら、
命を手放していってる。
◆ ■ 小太郎の変化
屋台が消えると、
小太郎の体から淡い光が抜けていく。
あの“主”の力や。
小太郎
「……これで、普通の人間に戻れるんやな……
 なんか……軽くなった気ぃするわ。」
魔人になりかけた時に宿った力も、
屋台に結びついていた縁も、
ぜんぶ解けていく。
ただの、
優しくて、不器用で、働き者の青年に戻る。
◆ ■ シェリーの変化
シェリーは影の守り人やった。
屋台の守りそのものの役割。
屋台が消えれば、
本来は彼女も消えてしまうはずや。
でも──
シェリー
「……あれ? わたし……消えへん……?」
理由はひとつ。
シェリーは、すでに“屋台ではなく小太郎を選んでいた”から。
屋台に縛られてへんかったんや。
これには屋台自身も驚いていたようで、
消えゆく木が優しく震える。
千願樹
(よかった……君は自由や……)
◆ ■ 屋台が落とした“最後の贈り物”
屋台が完全に光を失う直前、
あなたの足元に、
ひとつの小さな木片が落ちてくる。
指で触ると、
わずかに温もりが残っている。
それは千願樹の最後の欠片。
あなたにだけ見える文字が刻まれている。
「願いを持て。
 今度はあなたのために。」
これが屋台からの最終のメッセージ。
◆ ■ 屋台の消滅
光がふっと消える。
音もなく、煙もなく、
屋台はその場から消え去る。
ただの夜風が、
何事もなかったかのように通り過ぎる。
小太郎
「……ありがとうな。
 最後まで、無茶させてもうて。」
シェリー
「……終わったんやね。
 長い長い旅が。」
あなた
(胸の奥が、少しだけ熱い)

そして、屋台なき世界で
三人はその場に立っている。
魔法も、奇跡も、
願いの光も消えた世界。
でも──
あなたの手の中には、
最後の木片だけが残った。
これは“続き”がまだある証拠や。
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