空想小説『ふたがみ山の怪』

新雪小太郎

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二上山の怪 続編 核心へ

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封印の心臓
小太郎とシェリーは、重い空気の漂う石造りの洞窟の中へ足を踏み入れた。灯りは手にした小さな懐中電灯だけ。壁には無数の古い文字や不気味な絵が彫られている。
「…なんやこれ。地獄絵図か?」
小太郎が壁を見上げて呟く。
シェリーも眉をひそめて言った。
「違う。これ…“封印”を警告しとるんやない? 『心臓に触れる者は、災厄を招く』って書いとる。」
その時、二人の目の前に広がるのは――巨大な石の祭壇。中央には赤く輝く水晶のようなものが静かに鎮座している。
「これが…封印の心臓か。」
小太郎が思わず呟くと、シェリーが小声で注意した。
「下手に近づかんほうがええで。なんかヤバい気配する…」
だが――
「待っていたぞ、小僧ども。」
洞窟に響く低い声。二人が振り返ると、そこには鬼のお面をつけた黒服の大男が立ちはだかっていた。
「なんやお前!?」
「お前ら、山の力を渡すつもりはないんやな?」
ゴゴゴゴ…
洞窟全体が低い振動とともに揺れ始める。大男が一歩踏み出すたびに、その圧力に洞窟の空気が張り詰めた。
激突! 鬼のお面の男 VS 小太郎とシェリー
大男が拳を振り下ろす。地面に亀裂が走るほどの威力!
「やばっ!」
小太郎はすんでのところで横に飛び、シェリーも回し蹴りで大男の腕を弾き返す。
「うちの蹴りを受け止めるなんて…ただ者ちゃうな。」
シェリーは舌打ちしつつ、構えを整えた。
「ふっ、小娘が。」
大男はさらに腕を振り上げるが――その瞬間、小太郎が背後に回り込んだ!
「古武道の真髄見せたるわ!」
小太郎が低い姿勢から一気に大男の膝へ打ち込む。崩し技の一本! 大男の体勢が一瞬揺らぐ。
「今や、シェリー!」
「任せとき!」
シェリーは渾身の力を込めて――上段突き!
大男の顔に向けて拳を打ち込む。鬼のお面が粉々に砕け散る。
「ぐぉぉぉっ!」
素顔を晒した大男は後ずさり、その場に膝をついた。
封印の解放
「終わりか…?」
小太郎が息を整えながら尋ねるが、シェリーが周囲を見回して叫ぶ。
「小太郎! 水晶が光っとる!!」
二人の視線の先、封印の心臓――赤い水晶が激しく輝き始め、洞窟全体が唸りを上げた。
ゴゴゴゴ…!
「まずい! 封印が壊れる!!」
小太郎が叫び、二人は急いで水晶の前に立つ。
その時――
洞窟の奥から何かが浮かび上がるように現れた。黒い影。それはまるで山の怒りそのもののように、巨大な姿で二人を見下ろしていた。
山の守り神
「シェリー…どうするんや、あれ。」
「山の守り神…やと思う。でも、怒っとる。封印が触れられたからや。」
小太郎が深呼吸し、決意に満ちた声で言った。
「ほな、謝るしかないやろ。」
「え?」
「こういう時、礼儀や。」
小太郎は水晶の前に正座し、深く頭を下げる。
「山の神様、すんません! うちら、悪いことするつもりやなかったんや!」
シェリーも慌てて隣に座り、頭を下げた。
「そうや! あんたを守るために来たんや!」
黒い影がしばらく二人を見下ろした後――ゆっくりと、その形を霧のように散らしていった。そして、洞窟は静寂に包まれる。
エピローグ
数時間後――
洞窟の外には、政府機関の車が何台も止まり、黒服たちが辺りを封鎖していた。
「ほんまギリギリやったな。」
シェリーが息をつきながら笑う。
小太郎も疲れ切った顔で頷く。
「もうええわ。山登りはしばらく遠慮しとく。」
その時、空に朝日が差し込んだ。遠くから見える二上山の稜線が、まるで何事もなかったかのように穏やかに輝いている。
「…でも、うちらやったな。守ったんや、ふたがみ山を。」
シェリーが満足げに呟くと、小太郎がぼそっと言う。
「まぁな。でも、次は平和な山登りしよな。」
「そん時は、おにぎり持ってこよ。」
「ツナマヨと昆布な。」
「何でそんな地味やねん!」
「ええやろ、古武道は渋いんや!」
二人の笑い声が、山頂に吹く風に乗って、遠くへと広がっていった――。
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