ぐるりぐるりと

安田 景壹

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序章

九宇時那岐 1

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 時間も空間も飛び越えて、残るものは魂ひとつ。人に九生なし。宇宙に人生ひとつ。

      ※

 少し先に、赤い服を着た女の人が歩いているのが見えた。道路には、その人と自分達のほかは誰もいない。

「実際問題、心霊現象っていうのは思った以上に身近にあるものだよ」

 何でもないような口ぶりで、九宇時くうじ那岐なぎが言った。那岐が自分から心霊現象の話をするのは珍しかった。

「見える人にははっきり見えるし、自分は見えないと思っている人でも案外見えていたり、存在を感じ取っていたりするものなんだ。同じ層に存在しているんだから、本来は見えるも見えないもないと俺は考えているんだけど、まあ、認識出来る事は人それぞれだね」
「俺、見た事ないけど……」
「そんな事ないよ。穂結ほむすびさんも絶対会ってるって」

 那岐はやけに自信のある口ぶりだ。
 穂結煌津きらつは、さて、そんな事はあっただろうかと記憶の中を探ってみた。

「九宇時くーん、やっぱりないよ。幽霊と会った事」
「まあ、向こうから接触ないとわからないもんだから。でも絶対見ているよ」
「妖怪とか、そういう話は好きだけど。実際に出くわすのは嫌だな。俺苦手なんだよ、ホラー」
「えー。前にオカルト漫画買ってたじゃん」
「あれはほら……どちらかといえばかっこいい寄りだから」
「線引きが微妙だねえ。まあ、怖い時は怖いけどね、心霊現象」
「どんな時だって怖いでしょ。俺、オカルト漫画は好きでも霊感とかはいらないから」

 昔から、ホラー映画の予告編は目を閉じてやり過ごしていたほうだ。配信サービスで勝手に再生される予告編も、苦手なものは全部非表示にしている。妖怪やUFOやUMAは好きだが、怖い話は、読んでいると何だが左肩が少し重くなるような気がするのだ。

「言ったでしょ。霊感ってのは誰にでもあるものなんだよ。ただ、個人差があるだけ。……人によっては、全く見えないのに惹き付けてしまう体質ってのもあるし」
「そんなもんかなあ。九宇時ははっきり見えるんでしょ?」
「まあね。おかげで高一なのに働いているよ」

 那岐の実家は神社をやっていて、那岐はその手伝いがてら霊媒師のような事をやっている、らしい。高校生なのに。

「悪霊を祓ったりするんだよね。霊媒師って」
「いやまあ、霊媒師とはまたちょっと違うんだけど。悪霊を祓ったりはするよ。……たまにだけど」
「何か、お経とか唱えたり?」
「まあ、そんな感じ」
「……聞いてもいい?」
「え。な、何だよ、改まって」
「……呪いのビデオって、本当にある?」
「…………ビデオ?」
「ビデオ」
「ないよ、そんなの。ていうか、それ古い映画の話でしょ。穂結さん、ビデオ見た事ないでしょ。実物」
「…………昔、近所のお兄ちゃんが拾ったの見せてくれたよ。その、なんていうか、エッチな奴。パッケージだけ」
「……うわあ」
「いや、引かないでよ! いいじゃん、子どもだったんだから」

 いつもこんな調子で話している。
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