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3.  アレクとなった俺、陰謀に巻きこまれる

―― 殿下の陰謀 10 ――

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 俺は、ずっと聞いていた三人の顔色をうかがった。
 三人が口をきかないので、こちらから訊いた。
「どうだ? 何か質問はあるか?」
 グスタフが、恐るおそる尋ねてきた。
「この方法しか、ないんですか?」
「――ああ、おそらく、いま、あなたと交流している者たちのなかに、セルゲイ派の息のかかった者がいる。――屋敷も見張られているだろう。……わたしが尋ねてきたことも、報告がいっているはずだ。ただ、質素な格好だし、王族だと思うものは、まだいないだろう。しかし、気づかれるのは時間の問題だ。それまでに、事故で死んだフリをするしかない」

 エルフが口を開いた。
「――少し相談させていただいて、よろしいですか?」
 俺がうなずくと、グスタフとレンと呼ばれていた魔法使いを呼び、部屋の隅で小声で相談をはじめた。
 相談の前に、レンが何か、小声で唱えていた。おそらく、隠蔽魔法の呪文だ。呪文のあと、彼らの話し声が意味をなさない、受信不良のラジオやテレビからでるノイズのような音になった。

 みていると、レンが怒ったような様子で、エルフとグスタフに、話しかけている。エルフは、落ち着いてそれを聞き、静かに答えている。グスタフは、ふたりのあいだに挟まって、おろおろしている様子だ。
 あまり待たせても悪いと思われたのか、意外に早く相談が終り、三人は戻ってきた。   
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