ファンタジー/ストーリー2

雪矢酢

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第一章

十四話 刀剣

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闘いながら技を競う大会。
それが闘技大会の目的だそうだ。

「なるほど闘技大会か。見学する価値はあるね」

「ねえ、あなたは参加するのよ」

「え、参加?」

「これは魔力抜きの実力を試す良い機会でリハビリにもなる。さらには賞金まで出る」

「…」

「もうエントリーしたからお願いね」

「…案内を全て読んでないでしょ?」

「えっ」

「これ武器が必須みたいよ」

「武器?」

「魔法が禁止だから魔封剣は使えないよ。この平和な集落に武器屋なんか無いでしょ」

「ああ、武器の使用が必須なのか。ならその辺の農具でも持って出場すればいいでしょ」

「…」

「…ごめんなさい。そうね、大会を汚すような行為はよくないわね」

「ジジさんに相談してみるかな」

「それはいいね。いきましょう」


軽快な足取りのアレサ。
もう頭は賞金のことでいっぱいいっぱいのようだ。


屋敷は丁度バザーを開催していた。
金銭の取引は禁じられている文字通り欲しいものは持っていけ状態である。
ものすごい品々が展示されており、欲しいものはあちこちにいる屋敷の関係者に一言かける。

「すごい賑わいですね」

「これは奥様にレフトーラさん」

「忙しそうね」

「はい、今年は特にモノが多くて。お二方も何かあればどうぞお持ちください」

「ありがとうございます」

アレサはさっそく品々を見て回る。

「ちょっと…」

「レフト、たぶんここに探している武器がきっとあるわ」

「…」

「さあ、突っ立ってないであなたも探してちょうだい」

レフトは武器はさすがに無いだろうと思った。
事実、食器や衣類が圧倒的に多い。
とにかく数が尋常ではないので探すのもひと苦労だ。

「…これ片付けるが大変だろうな」

そうつぶやくレフトに関係者が言う。

「いえ、片付けは楽ですよ」

「楽…なんですか?」

「はい。最終日に専門の人達が服は燃やし、食器類は粉々にして建造物の補修などに使います。よくわからない品々や残品はヘルゲートの闇商人が引き取ってくれるので、実質我々は片付けませんよ」

「へえ。機能的で各国は見習うべきところがたくさんあるね」

レフトは驚きながらも、何かないかと物色を始めた。アレサは既に両手いっぱいにモノを抱えている。
やれやれといった表情のレフトだが、アレサの周囲に剣のような物体を発見する。

「これは…」

緩やかな曲線の物体は一種の長剣かと思われる。
だが抜刀し刃をみたレフトは驚愕した。

「片刃か……鋭い刃がキレイだが…これは扱いが難しいな」

いわゆる日本刀だ。


出所は不明だが、最近は人があちこちの異世界へ転生しまくっているらしく、転生は別に珍しくもないだろう。たまたまこの世界は人ではなく物が転生した…ということだろう。


「これは恐ろしく殺傷力が強いから刃で攻撃するよりかは刃を返して殴打するほうがよいだろう」

「…そうなんですか……」

関係者に武器の話をしても通じる訳もなく、レフトは詫びてこの武器を受け取った。

「あら、武器があったの?」

アレサが合流するレフト。
するとアレサはいきなりレフトへ剣を投げる。

「おっと…」

なんとかキャッチするレフト。
日本刀と比べると少々重い。
こちらも抜刀して刃を確認する。

「へえ、これも十分実用的だね」

突き刺しに関しては日本刀のほうが上手だが、連続した斬撃や攻撃を受けることを考えた場合はこちらのほうが優秀だろう。

「このバザーは優秀な武器があるわね」

驚くアレサ。

「武器はこの集落の周辺に住む方が置いていくんですよ。住民は武器は使わないですから」

「なるほどね」

周辺に住む方は不要品を片付けられるから便利というわけだ。


「二本の刀があればまさしく二本刀だね」


「…」

「…」


周囲が凍りつく寒いレフトのギャグ。


「さあいきましょう。ジジありがとう。皆さんもありがとうございました」


その場を後にした二人。
大量の品々を運ぶレフト。
ご満悦のアレサ。


「ねえレフト」

「ん?」

「もしもよ、もしもあなたより強者が現れたら…」

「ああ…先に言っておくけどたぶん優勝は難しいと思う」

「…」

テンションが一気に降下するアレサ。
感情の起伏が激しく本当は人間なのではと思うレフト。

「もちろん全力で戦うつもりだけど、本来は魔法剣士だから…魔法が使えないとねえ…」

「ちょっと、戦う前から何言い訳しているのよ。魔法が無くて剣士は剣士でしょう。もっと自分を信じてほしいわ」

落ちたテンションが今度は一気に急上昇。

「えー」

レフトはもう慣れたようだ。
悪魔がどうこうはわからないが、軍人である彼女は日々抑圧されて生活していたのだろう。
そのようなオンとオフが明確な生活を続けていくうちにこのような起伏の激しい性格へとなった…のかもしれない。



「ご、ごめんなさい。言い過ぎたわ」

「いや、アレサの言うことはわかるよ。ただ、どうもこの大会は胡散臭い気がして…」

「胡散臭い?」

「うん。そんな大会があれば必ず機関に一報入ると思うんだよね」

「武器使用の真剣勝負だと確かに危険ね」

「秘密裏の開催だと、よくわからない組織に巻き込まれてアレサが危険になるのでは…」

「私は戻ったら退役するつもりよ。そして軍の許可があれば可能な限りあなたのそばにいたい」

「…」

「何黙り込んでるのよ」

「どう言えば嬉しいってことが伝わるのかなと…」

「もう、素直に嬉しいって言えばいいじゃないの」

「嬉しい」

「言われる前にいいなさい」

「…」

なんとも人間らしい会話だ。


「私も注意はするわ。ただ優勝したら賞金は頂くわ」

「…わかった…よくわかったよ」

「ふふふ」



次回へ続く
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