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第一章
七話 水源地調査
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「…」
ホープは機嫌が悪い。
「アレサは前衛だから負傷するのはわかる。それに変則な戦法にはめっぽう弱いのもわかるわ…だからこそ今回は嫌な予感がしたわ。ヴァンに薬を預けたのはそのためよ」
難しい表情のホープ。
「はい、ヴァンから聞きました。ですがなかなか使うタイミングが難しくて…」
「まあレフトーラ君を責めても仕方ないわね。アレサもよく考えて行動したんだと思う」
「そうですね…」
「あなたが復興機関から離れたことはおおっぴらにはなっていないようね」
「はい、敵は知らなかったようで、事実を伝えると豹変したというか…」
「よくわかったわ。おそらくオメガたちが情報の公開を控えるよう進言したのだと思う」
腕を組み状況整理をするホープ。
レフトは椅子に座りひと息つく。
診療所はだいぶ落ち着き日常を取り戻している。
「復興機関の問題はオメガやニナに任せるしか…ないわね」
部外者となったレフトにはどうすることもできない。
「わかりました。アレサの容体はどうでしょう?」
「ああ、そうだわ、一つお願いがあったのよ」
何かを思い出したようにひらめくホープ。
うわ、これこそ嫌な予感がする…そんなレフトの心の声が聞こえる。
「…」
「何黙ってるのよ、また面倒事とか思っての?」
「…はい」
「……そう正直に言われるとちょっと困るわね…」
レフトの直球に動揺するホープ。
棚から資料を出してレフトに説明する。
「えーと…ここから西へちょっと行くと水源地があるのだけれど、ここのところ調子がおかしいのよ」
「…」
無言のレフト。
「ねえ、受けるかは任せるけど、とりあえず話を聞いてくれるかしら?」
「様子を見てきて、問題があれば解決してくれ……でしょうか」
「そうそう、さすが物分かりが良くて助かるわ。技術者に同行して、もし問題があれば解決願うわ」
「わかりました。確かに水の出が悪かったり気にはなってました」
「先に言っておくと…これはモンスターが原因だと思われる」
「……それを退治しろと?」
レフトは依頼の主旨を理解し席を立った。
水源地の設備メンテナンスとモンスター討伐、これが今回の依頼らしい。
そんなレフトをみてヴァンが話しかける。
「レフト様、水の調査でしょうか」
「うん、先生にお願いされて」
「申し訳ないです。これは自分とキバで向かう予定でした」
「ああ、いいよ。ここの手伝いをやっててよ」
ホープは外に出て警備隊へ伝言をお願いした。
どうやら技術者を呼んだみたいだ。
「先生の言う通りモンスターが施設を占拠している可能性が高いです」
ヴァンもモンスターが関係していると言うが…。
「施設を破壊しないように注意しないとだね」
レフトは護衛しつつ技術者の支援をする、その程度の依頼だと思っていた。
「レフト様、そのモンスターはここの住民の誰かが飼育している可能性が高いです」
「えっ」
突然のヴァンの言葉にびっくりするレフト。
「おそらくですが、普段は大人しいモンスターが凶暴化した……そしてその凶暴化した原因が分かれば事態は解決するかと…」
ヴァンはある程度の解決策を立案していた。
水源問題は集落のライフラインに直結するため早急に解決する必要があるのだ。
「ありがとうヴァン」
レフトはホープと合流し技術者を待った。
「モンスターね…」
「はい、ヴァンはそういってました」
「まあわからなくもないけど、油断はしないでね。相手がモンスターであれ人であれ、事実、この集落が被害を受けているのよ」
「そうですね。冷静に対応します」
すぐに技術者が到着し出発の準備をする。
工具やら荷物があると思ったのだが、小さなカバンのみで身軽だ。
「私はコーグと申します。レフトーラさん、お会いできて光栄です。よろしくお願い致します」
礼儀正しく、技術者といった感じがしない。
…微弱だが魔力を感じる。
この人物は…何者だ。
「はじめましてコーグ殿、よろしくお願い致します。早速ですが現場へ向かいましょう」
ホープに挨拶し二人で水源地へと向かう。
コーグは周囲を気にしながらレフトに耳打ちする。
「私は怪しい者ではございません。ここを出たら全てをお話します」
「…」
表情を変えないレフト。
この依頼はひと癖あるようだ。
集落を出るとすぐにコーグは話し始めた。
「レフトーラさん、結論から言いますと今、水源地は邪悪なモンスターが支配しております」
「モンスター?」
「はい、私はあるモンスターと心を通わせ、二人で水源を見つけました」
「なるほど。ではそのモンスターが凶暴化したと?」
「いえ、違います。突如現れたモンスターに水源地を占拠され重傷だそうです。現在は、かろうじて集落に水の供給ができているのですが…それも…」
「それでコーグさんに助けを?」
「はい、そのモンスターの正体は蝿です。その仲間が命懸けで私に危機を伝えてくれました」
蝿と聞き、一瞬戸惑ったレフト。
だが、コーグは躊躇することなく蝿が仲間だとレフトに告げる。
「つまり益虫…というか有益なモンスターが水源地を管理していたが、そこを支配されたから何とかしてほしいということですね」
「その通りです。水の管理と供給はフリーがいないと難しい。人には不可能なことがフリーはできるのです」
なるほど…そのフリーってのが蝿の名か…。
まあ人間離れしたことができるというのは納得できる。
あとは敵の情報か。
「そのフリーという者のことはわかりました。では次に…」
その時レフトは動きが止まった。
水源地と呼ばれる施設は湧く水を貯める貯水施設と水を浄化する設備と供給する施設が複合した、巨大な機械施設だった。
そこを巨大な化け物カエルが三匹陣取り、飛び交う武装した蝿を飲み込んでいる。
「…これは…現実…か…」
非現実の光景を目の当たりにし、どうすればいいかわからないレフト。
ただただ目の前の現実を眺めていた。
「レフトーラさん、大丈夫ですか」
コーグがレフトの肩を叩く。
それにはっとするレフト。
「あ、あのカエルを討てばよいですか?」
「そうなのですが、今、攻撃したら施設が破壊されてしまいます」
「…そ、そうなりますね」
「フリーの軍団がカエルを施設から離すので、そのあとをお願いしたいです」
「わかりました」
……焼く…か。
次回へ続く。
ホープは機嫌が悪い。
「アレサは前衛だから負傷するのはわかる。それに変則な戦法にはめっぽう弱いのもわかるわ…だからこそ今回は嫌な予感がしたわ。ヴァンに薬を預けたのはそのためよ」
難しい表情のホープ。
「はい、ヴァンから聞きました。ですがなかなか使うタイミングが難しくて…」
「まあレフトーラ君を責めても仕方ないわね。アレサもよく考えて行動したんだと思う」
「そうですね…」
「あなたが復興機関から離れたことはおおっぴらにはなっていないようね」
「はい、敵は知らなかったようで、事実を伝えると豹変したというか…」
「よくわかったわ。おそらくオメガたちが情報の公開を控えるよう進言したのだと思う」
腕を組み状況整理をするホープ。
レフトは椅子に座りひと息つく。
診療所はだいぶ落ち着き日常を取り戻している。
「復興機関の問題はオメガやニナに任せるしか…ないわね」
部外者となったレフトにはどうすることもできない。
「わかりました。アレサの容体はどうでしょう?」
「ああ、そうだわ、一つお願いがあったのよ」
何かを思い出したようにひらめくホープ。
うわ、これこそ嫌な予感がする…そんなレフトの心の声が聞こえる。
「…」
「何黙ってるのよ、また面倒事とか思っての?」
「…はい」
「……そう正直に言われるとちょっと困るわね…」
レフトの直球に動揺するホープ。
棚から資料を出してレフトに説明する。
「えーと…ここから西へちょっと行くと水源地があるのだけれど、ここのところ調子がおかしいのよ」
「…」
無言のレフト。
「ねえ、受けるかは任せるけど、とりあえず話を聞いてくれるかしら?」
「様子を見てきて、問題があれば解決してくれ……でしょうか」
「そうそう、さすが物分かりが良くて助かるわ。技術者に同行して、もし問題があれば解決願うわ」
「わかりました。確かに水の出が悪かったり気にはなってました」
「先に言っておくと…これはモンスターが原因だと思われる」
「……それを退治しろと?」
レフトは依頼の主旨を理解し席を立った。
水源地の設備メンテナンスとモンスター討伐、これが今回の依頼らしい。
そんなレフトをみてヴァンが話しかける。
「レフト様、水の調査でしょうか」
「うん、先生にお願いされて」
「申し訳ないです。これは自分とキバで向かう予定でした」
「ああ、いいよ。ここの手伝いをやっててよ」
ホープは外に出て警備隊へ伝言をお願いした。
どうやら技術者を呼んだみたいだ。
「先生の言う通りモンスターが施設を占拠している可能性が高いです」
ヴァンもモンスターが関係していると言うが…。
「施設を破壊しないように注意しないとだね」
レフトは護衛しつつ技術者の支援をする、その程度の依頼だと思っていた。
「レフト様、そのモンスターはここの住民の誰かが飼育している可能性が高いです」
「えっ」
突然のヴァンの言葉にびっくりするレフト。
「おそらくですが、普段は大人しいモンスターが凶暴化した……そしてその凶暴化した原因が分かれば事態は解決するかと…」
ヴァンはある程度の解決策を立案していた。
水源問題は集落のライフラインに直結するため早急に解決する必要があるのだ。
「ありがとうヴァン」
レフトはホープと合流し技術者を待った。
「モンスターね…」
「はい、ヴァンはそういってました」
「まあわからなくもないけど、油断はしないでね。相手がモンスターであれ人であれ、事実、この集落が被害を受けているのよ」
「そうですね。冷静に対応します」
すぐに技術者が到着し出発の準備をする。
工具やら荷物があると思ったのだが、小さなカバンのみで身軽だ。
「私はコーグと申します。レフトーラさん、お会いできて光栄です。よろしくお願い致します」
礼儀正しく、技術者といった感じがしない。
…微弱だが魔力を感じる。
この人物は…何者だ。
「はじめましてコーグ殿、よろしくお願い致します。早速ですが現場へ向かいましょう」
ホープに挨拶し二人で水源地へと向かう。
コーグは周囲を気にしながらレフトに耳打ちする。
「私は怪しい者ではございません。ここを出たら全てをお話します」
「…」
表情を変えないレフト。
この依頼はひと癖あるようだ。
集落を出るとすぐにコーグは話し始めた。
「レフトーラさん、結論から言いますと今、水源地は邪悪なモンスターが支配しております」
「モンスター?」
「はい、私はあるモンスターと心を通わせ、二人で水源を見つけました」
「なるほど。ではそのモンスターが凶暴化したと?」
「いえ、違います。突如現れたモンスターに水源地を占拠され重傷だそうです。現在は、かろうじて集落に水の供給ができているのですが…それも…」
「それでコーグさんに助けを?」
「はい、そのモンスターの正体は蝿です。その仲間が命懸けで私に危機を伝えてくれました」
蝿と聞き、一瞬戸惑ったレフト。
だが、コーグは躊躇することなく蝿が仲間だとレフトに告げる。
「つまり益虫…というか有益なモンスターが水源地を管理していたが、そこを支配されたから何とかしてほしいということですね」
「その通りです。水の管理と供給はフリーがいないと難しい。人には不可能なことがフリーはできるのです」
なるほど…そのフリーってのが蝿の名か…。
まあ人間離れしたことができるというのは納得できる。
あとは敵の情報か。
「そのフリーという者のことはわかりました。では次に…」
その時レフトは動きが止まった。
水源地と呼ばれる施設は湧く水を貯める貯水施設と水を浄化する設備と供給する施設が複合した、巨大な機械施設だった。
そこを巨大な化け物カエルが三匹陣取り、飛び交う武装した蝿を飲み込んでいる。
「…これは…現実…か…」
非現実の光景を目の当たりにし、どうすればいいかわからないレフト。
ただただ目の前の現実を眺めていた。
「レフトーラさん、大丈夫ですか」
コーグがレフトの肩を叩く。
それにはっとするレフト。
「あ、あのカエルを討てばよいですか?」
「そうなのですが、今、攻撃したら施設が破壊されてしまいます」
「…そ、そうなりますね」
「フリーの軍団がカエルを施設から離すので、そのあとをお願いしたいです」
「わかりました」
……焼く…か。
次回へ続く。
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