12 / 34
第一章
十一話 鳥人
しおりを挟む
「ベルーナか……どこかの販売店みたいな名前だね…」
「えっ」
「いや……ごめん。それより鳥人と話すのは初めてだよ」
「みたいね、実際はホープも言ってたように人と変わらないわよ」
アレサとレフトは荷造りをして集落を出ていた。
目指すはベルーナという鳥人が運営する宿だ。戦闘を離れ久しぶりに二人の時間を楽しんでいる。アレサはもじもじとレフトの手を眺めている。
「ベルーナさんは女性なのかな…」
レフトのその言葉にピクリと反応するアレサ。
「さあ、そんなの知らないわよっ」
急に不機嫌になるアレサ。
その様子に戸惑うレフト。
よく見かける夫婦の光景である。
「え…どうしたのアレサ?」
「もう、いいわよ…」
ふてくされるアレサだったが、宿が見えてきた瞬間に顔色が変わる。
「…アレサ…ごめんね、機嫌を…」
「静かに…宿の様子がおかしいわ」
「えっ…おかしいって…」
レフトは嫌な予感がした。
またトラブルか。
二人は宿と距離をとりつつ周囲を警戒する。
「…見張りがいるわね。どうやらトラブルみたいだわ」
「……」
レフトは無言で剣に手を置く。
「待ってレフト、ほらみて」
宿から強面の男性と清楚で物静かな印象の女性が出てくる。
「あの女性が鳥人だわ」
「…そうなの?」
「うん。男性は…人だわ。つまり女性がベルーナね」
「…」
見分けができない…。
とはいえ今、宿は非常事態。
盗賊らしき数名が男性を痛めつけている。
女性は拘束され身動きがとれない。
「助けよう」
「いえ、大丈夫。あの女性…」
すると女性の目つきが変わる。
男性を痛めつけていた盗賊たちは手を止めて女性をみる。
なんと拘束を自力で解き鋭い眼光で盗賊たちを睨む。
「強いわ、あの女性」
腕を組み様子を見ているアレサ。
襲いかかる盗賊を次々と倒す女性。
最後の一人になると、盗賊は小さな角笛を取り出し、ニタニタ笑いながら吹いた。
すると宿から獣人が現れる。
「あら獣人じゃないの」
「あの獣人…どこかで…」
ガーデンにそっくりな獣人が女性の前に立ちふさがった。
「ほう浮遊剣のベルーナか。その実力をみせてもらおうか」
この女性はやはりベルーナだった。
どうやら二つ名があるようで、それは浮遊剣らしい。
剣を使うらしいがベルーナは剣を持っておらず体術で獣人と戦っている。
屈強な獣人に華奢な女性の体術では効果がないように見える。
「浮遊剣を見せろと言って、普通丸腰で戦わせるかな…」
レフトは獣人のとんちんかんな発言にツッコミを入れていた。
アレサはそんなレフトのツッコミはスルーし戦局を分析。
「レフト、このままだと宿泊できない…ベルーナが不利よ」
「宿泊って…ベルーナさんは剣がないと…」
二人は宿へ走った。
レフトは剣ならば…とゾルムの剣をベルーナへ投げた。
「ベルーナさん、この剣をっ」
「えっ」
ベルーナは剣を受け取った。
獣人はレフトたちを睨みつけたが、すぐにベルーナが攻撃し激しい戦いが始まった。
アレサが盗賊を無力化しレフトは男性に回復魔法をかける。
「あ、あなた方は…」
「あの、これが済んだら宿泊を…」
このような事態なのだが申し訳なさそうにレフトは伝える。
宿泊と聞いて大笑いする男性。
「これは失礼しました。お客様でしたか」
「はい、部屋が空いてますか…」
「空いてますよ、ぜひ宿泊を」
意気投合する男性とレフト。
「ちょっと二人ともっ」
そんな二人を注意するアレサ。
ベルーナは受け取った剣を何故か抜刀しない。
「あれ、何で剣を抜刀しないのかな?」
「んっ…あの剣は…」
追い込まれるベルーナ。
レフトの方をみて、剣を指差し抜刀できない素振りをした。
「おそらくあの剣は幻獣から譲り受けた者しか抜刀できませんよ…」
「…そうなの…」
ベルーナは剣をレフトに投げ返した。
茶番劇のような動きに獣人は激昂しさらに戦闘力をアップさせた。
見かねたアレサが動くがレフトはそれを止める。
「レフト…」
「たまには前に出させてくれるかい?」
「ふふっ」
「ありがとうアレサ…って」
「ダメよ、あなたは後ろ」
「…」
沈黙するレフトと男性。
アレサはすっとベルーナの前に立ち獣人の攻撃を受け止めた。
「き、貴様…邪魔するのか」
「あなたは…」
突然の仲裁に戸惑う二人。
「獣人よ、お眠り」
そう言うとアレサは獣人の腹部にきつい一撃入れた。
腹をおさえ苦しそうに後退する獣人。
やがて立っているのが困難になり座り込んでしまった。
「あなたはベルーナね?」
「えっ…はい、私はベルーナですが…」
「しばらく宿に泊めてくれる?」
「お、お客様でしたか…」
盗賊たちは獣人を担ぎどこかへと撤退した。
ベルーナは宿の中を片付けるといい、レフトたちをテラスらしき場所に案内し待機させた。
ひと息つく二人。
屈強な男性の名はダン。
やがて彼もベルーナをフォローするため宿へ入っていった。
「浮遊剣か…」
「ああ、みてみたかったね」
「ベルーナは強いのだけど強さの本質がわからないわ」
「えっ…」
「得意な戦闘スタイルというか…」
「ああ、そういうことね。浮遊剣ならやっぱり剣士なのかも」
「そうね…まあ詮索は止めましょう。ここには静養に来たのだし」
「わかった」
のどかな場所にあるこの宿は、旅人に人気がある。また、人ごみや社会に疲れた方が静養するにはもってこいである。
次回へ続く
「えっ」
「いや……ごめん。それより鳥人と話すのは初めてだよ」
「みたいね、実際はホープも言ってたように人と変わらないわよ」
アレサとレフトは荷造りをして集落を出ていた。
目指すはベルーナという鳥人が運営する宿だ。戦闘を離れ久しぶりに二人の時間を楽しんでいる。アレサはもじもじとレフトの手を眺めている。
「ベルーナさんは女性なのかな…」
レフトのその言葉にピクリと反応するアレサ。
「さあ、そんなの知らないわよっ」
急に不機嫌になるアレサ。
その様子に戸惑うレフト。
よく見かける夫婦の光景である。
「え…どうしたのアレサ?」
「もう、いいわよ…」
ふてくされるアレサだったが、宿が見えてきた瞬間に顔色が変わる。
「…アレサ…ごめんね、機嫌を…」
「静かに…宿の様子がおかしいわ」
「えっ…おかしいって…」
レフトは嫌な予感がした。
またトラブルか。
二人は宿と距離をとりつつ周囲を警戒する。
「…見張りがいるわね。どうやらトラブルみたいだわ」
「……」
レフトは無言で剣に手を置く。
「待ってレフト、ほらみて」
宿から強面の男性と清楚で物静かな印象の女性が出てくる。
「あの女性が鳥人だわ」
「…そうなの?」
「うん。男性は…人だわ。つまり女性がベルーナね」
「…」
見分けができない…。
とはいえ今、宿は非常事態。
盗賊らしき数名が男性を痛めつけている。
女性は拘束され身動きがとれない。
「助けよう」
「いえ、大丈夫。あの女性…」
すると女性の目つきが変わる。
男性を痛めつけていた盗賊たちは手を止めて女性をみる。
なんと拘束を自力で解き鋭い眼光で盗賊たちを睨む。
「強いわ、あの女性」
腕を組み様子を見ているアレサ。
襲いかかる盗賊を次々と倒す女性。
最後の一人になると、盗賊は小さな角笛を取り出し、ニタニタ笑いながら吹いた。
すると宿から獣人が現れる。
「あら獣人じゃないの」
「あの獣人…どこかで…」
ガーデンにそっくりな獣人が女性の前に立ちふさがった。
「ほう浮遊剣のベルーナか。その実力をみせてもらおうか」
この女性はやはりベルーナだった。
どうやら二つ名があるようで、それは浮遊剣らしい。
剣を使うらしいがベルーナは剣を持っておらず体術で獣人と戦っている。
屈強な獣人に華奢な女性の体術では効果がないように見える。
「浮遊剣を見せろと言って、普通丸腰で戦わせるかな…」
レフトは獣人のとんちんかんな発言にツッコミを入れていた。
アレサはそんなレフトのツッコミはスルーし戦局を分析。
「レフト、このままだと宿泊できない…ベルーナが不利よ」
「宿泊って…ベルーナさんは剣がないと…」
二人は宿へ走った。
レフトは剣ならば…とゾルムの剣をベルーナへ投げた。
「ベルーナさん、この剣をっ」
「えっ」
ベルーナは剣を受け取った。
獣人はレフトたちを睨みつけたが、すぐにベルーナが攻撃し激しい戦いが始まった。
アレサが盗賊を無力化しレフトは男性に回復魔法をかける。
「あ、あなた方は…」
「あの、これが済んだら宿泊を…」
このような事態なのだが申し訳なさそうにレフトは伝える。
宿泊と聞いて大笑いする男性。
「これは失礼しました。お客様でしたか」
「はい、部屋が空いてますか…」
「空いてますよ、ぜひ宿泊を」
意気投合する男性とレフト。
「ちょっと二人ともっ」
そんな二人を注意するアレサ。
ベルーナは受け取った剣を何故か抜刀しない。
「あれ、何で剣を抜刀しないのかな?」
「んっ…あの剣は…」
追い込まれるベルーナ。
レフトの方をみて、剣を指差し抜刀できない素振りをした。
「おそらくあの剣は幻獣から譲り受けた者しか抜刀できませんよ…」
「…そうなの…」
ベルーナは剣をレフトに投げ返した。
茶番劇のような動きに獣人は激昂しさらに戦闘力をアップさせた。
見かねたアレサが動くがレフトはそれを止める。
「レフト…」
「たまには前に出させてくれるかい?」
「ふふっ」
「ありがとうアレサ…って」
「ダメよ、あなたは後ろ」
「…」
沈黙するレフトと男性。
アレサはすっとベルーナの前に立ち獣人の攻撃を受け止めた。
「き、貴様…邪魔するのか」
「あなたは…」
突然の仲裁に戸惑う二人。
「獣人よ、お眠り」
そう言うとアレサは獣人の腹部にきつい一撃入れた。
腹をおさえ苦しそうに後退する獣人。
やがて立っているのが困難になり座り込んでしまった。
「あなたはベルーナね?」
「えっ…はい、私はベルーナですが…」
「しばらく宿に泊めてくれる?」
「お、お客様でしたか…」
盗賊たちは獣人を担ぎどこかへと撤退した。
ベルーナは宿の中を片付けるといい、レフトたちをテラスらしき場所に案内し待機させた。
ひと息つく二人。
屈強な男性の名はダン。
やがて彼もベルーナをフォローするため宿へ入っていった。
「浮遊剣か…」
「ああ、みてみたかったね」
「ベルーナは強いのだけど強さの本質がわからないわ」
「えっ…」
「得意な戦闘スタイルというか…」
「ああ、そういうことね。浮遊剣ならやっぱり剣士なのかも」
「そうね…まあ詮索は止めましょう。ここには静養に来たのだし」
「わかった」
のどかな場所にあるこの宿は、旅人に人気がある。また、人ごみや社会に疲れた方が静養するにはもってこいである。
次回へ続く
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる