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魔王様の膝の上で食べさせてもらっています 1
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レイラは瘴気の穴を塞ぐ調査に同行するとき以外は、夜はラディスの寝室、昼は鳥かごの中で過ごすように言われていた。
シルファの説明では魔族という種族は、人間を害することを何とも思っていないのだという。
ラディスの保護を受けていると周知されているのに隙あらばレイラを害しようとする魔族もいるので、油断はできない。
鳥かごの中で過ごすことに抵抗はあったが、昨日いた3人の狂暴な美女のことを思い出し、おとなしく鳥かごで過ごすことにした。
朝食は鳥かごの中にラディスの従者であるロビィが直接持ってきた。
だから昼食も同じように持ってきてくれると思っていたのだが、ロビィは食事の準備が整ったと言い、レイラを食事が用意してあるという部屋に案内してくれた。
部屋には昼食というにはいささか豪華な食事が用意されていた。
それから……何がどうなって、今の状況になったのかわからないが、ラディスがフォークをもって、レイラにサラダを食べさせている。
助けを求めて、テーブルの脇に待機して立っているシルファに視線を送るが、ふふっと意味ありげな笑いを返されただけだった。
レイラは口に押し付けられたサラダを素早くのみこんで、口を開く。
「これは……むぐっ」
話そうと口を開いたら、次は薄く切ったハムを口に押し込まれた。
「うまいか? 一番近くの人間の町まで人をやって急ぎで用意させた。街で人気のあるブランド肉のハムだそうだ」
レイラはハムをかみしめながら、話せない代わりにコクコクとうなずいた。
確かに美味しい。市販のハムではお目にかかったことのない旨味だった。
濃厚な肉の味が口の中に広がり、塩加減もほど良くてパンがあれば何枚でも食べられそうだ。
……じゃなくて。
口の中に食べ物がなくなるタイミングを見計らって、ハムを口に運ぼうとするラディスの手首をレイラは手でおさえた。
「ふぐ、むぐっ、ゴホゴホっ」
ちょっと待って、聞きたいことがあるんだけど。と言いたかったのだが、ハムを飲み込んでいる途中だったので盛大にむせてしまった。
「すまない……焦らせすぎたな」
「ううん。いいの。それより、普通に食べたいのだけど」
レイラはラディスの膝の上に横向きに座らされていた。
ラディスは腰に回した左手でレイラの体を支え、右手でレイラに食事を食べさせている。
……わけがわからない。
「ロビィの持ってきた本に書いてあった。人間は食事がすぐに体調に出る。ストレスや睡眠、寒さ熱さに対して体調管理をしないとあっという間に体を壊すぞ」
ペットの本を参考にしているくせに、妙に人間に詳しい言い回しをするので、余計に混乱する。
「いや、でもここまでする必要は……」
「ふふっ」
耐えきれなくなったようで、シルファがまた笑った。
その横では、ロビィが昨晩手にしていた本を熱心に読んでいる。表紙に犬の絵が見える。
「ラディス様、食事の後は適度な運動。ブラッシングもスキンシップになるって」
レイラをペットのようなものといったが、あれは人間ではなく犬の飼い方だ。
あの本を実践していくつもりだろうか。
「どこか具合が悪いのか?」
青くなったレイラを見て、ラディスは心配そうに眉間にしわを寄せた。
ラディスは魔族の王ということもあってか、人間離れした秀麗な顔立ちをしている。
そのうえ常に威圧感を放っているため、レイラは少し緊張していたのだが、困ったような表情をすると途端に人間臭く見える。
レイラの肩から力がぬける。
「あの、犬じゃないから本は参考にしないで、普通に食事をさせてもらいたいんだけど」
正直に言うと、ラディスは明らかに驚いた顔をした。それから不機嫌そうな顔になる。
「それはできない」
「えぇ?」
「私が面倒を見ると決めたのだ」
本当に、魔族だから考え方が違うのか、さっぱり意味が分からない。
こんな忙しそうな人に、世話をしてもらう必要はないと思うのだが。
困惑したレイラを見て、シルファが噴き出して笑いだす。
「いつも世話をさせるだけのラディス様が、こんなにかいがいしく世話を焼くなんて、この先、何千年生きても、二度と見られませんよ」
「あ、これじゃない? ペットにエサをやったり、なでるだけで癒されるって書いてある」
レイラは正直引いた。
それからだんだんと心配になってくる。
レイラなんかに食事を食べさせる行為が癒しになるとしたら、末期症状だ。
昨晩も思ったが、ラディスは相当、無理をして仕事をしているのではないだろうか。
「……午後には、瘴気の穴の調査に向かわなくてはいけません。申し訳ありませんが、ラディス様の楽しみにもう少しお付き合いください」
楽しみって言った! 楽しみっていたぞ。
言い方は丁寧だが、完全に面白がっている。
ラディスはラディスで、レイラの要望を無視して、食事のバランスが大切だと言い張って、次の食べ物をレイラの口に運んで来ようとする。
「ところで、その……」
ラディスが珍しく言いよどみ、口ごもった。
「昨晩の行為には、本来は手順があって道具を使うと聞いたのだが……」
行為というと、変な誤解をされそうなのでやめて欲しい。
マッサージが気に入ったのかな?
レイラが口を開こうとしたときだった。
部屋の扉が開き、17歳ほどの金髪の美少女が入ってくる。
そして、レイラをぎろりとにらみつけた。
シルファの説明では魔族という種族は、人間を害することを何とも思っていないのだという。
ラディスの保護を受けていると周知されているのに隙あらばレイラを害しようとする魔族もいるので、油断はできない。
鳥かごの中で過ごすことに抵抗はあったが、昨日いた3人の狂暴な美女のことを思い出し、おとなしく鳥かごで過ごすことにした。
朝食は鳥かごの中にラディスの従者であるロビィが直接持ってきた。
だから昼食も同じように持ってきてくれると思っていたのだが、ロビィは食事の準備が整ったと言い、レイラを食事が用意してあるという部屋に案内してくれた。
部屋には昼食というにはいささか豪華な食事が用意されていた。
それから……何がどうなって、今の状況になったのかわからないが、ラディスがフォークをもって、レイラにサラダを食べさせている。
助けを求めて、テーブルの脇に待機して立っているシルファに視線を送るが、ふふっと意味ありげな笑いを返されただけだった。
レイラは口に押し付けられたサラダを素早くのみこんで、口を開く。
「これは……むぐっ」
話そうと口を開いたら、次は薄く切ったハムを口に押し込まれた。
「うまいか? 一番近くの人間の町まで人をやって急ぎで用意させた。街で人気のあるブランド肉のハムだそうだ」
レイラはハムをかみしめながら、話せない代わりにコクコクとうなずいた。
確かに美味しい。市販のハムではお目にかかったことのない旨味だった。
濃厚な肉の味が口の中に広がり、塩加減もほど良くてパンがあれば何枚でも食べられそうだ。
……じゃなくて。
口の中に食べ物がなくなるタイミングを見計らって、ハムを口に運ぼうとするラディスの手首をレイラは手でおさえた。
「ふぐ、むぐっ、ゴホゴホっ」
ちょっと待って、聞きたいことがあるんだけど。と言いたかったのだが、ハムを飲み込んでいる途中だったので盛大にむせてしまった。
「すまない……焦らせすぎたな」
「ううん。いいの。それより、普通に食べたいのだけど」
レイラはラディスの膝の上に横向きに座らされていた。
ラディスは腰に回した左手でレイラの体を支え、右手でレイラに食事を食べさせている。
……わけがわからない。
「ロビィの持ってきた本に書いてあった。人間は食事がすぐに体調に出る。ストレスや睡眠、寒さ熱さに対して体調管理をしないとあっという間に体を壊すぞ」
ペットの本を参考にしているくせに、妙に人間に詳しい言い回しをするので、余計に混乱する。
「いや、でもここまでする必要は……」
「ふふっ」
耐えきれなくなったようで、シルファがまた笑った。
その横では、ロビィが昨晩手にしていた本を熱心に読んでいる。表紙に犬の絵が見える。
「ラディス様、食事の後は適度な運動。ブラッシングもスキンシップになるって」
レイラをペットのようなものといったが、あれは人間ではなく犬の飼い方だ。
あの本を実践していくつもりだろうか。
「どこか具合が悪いのか?」
青くなったレイラを見て、ラディスは心配そうに眉間にしわを寄せた。
ラディスは魔族の王ということもあってか、人間離れした秀麗な顔立ちをしている。
そのうえ常に威圧感を放っているため、レイラは少し緊張していたのだが、困ったような表情をすると途端に人間臭く見える。
レイラの肩から力がぬける。
「あの、犬じゃないから本は参考にしないで、普通に食事をさせてもらいたいんだけど」
正直に言うと、ラディスは明らかに驚いた顔をした。それから不機嫌そうな顔になる。
「それはできない」
「えぇ?」
「私が面倒を見ると決めたのだ」
本当に、魔族だから考え方が違うのか、さっぱり意味が分からない。
こんな忙しそうな人に、世話をしてもらう必要はないと思うのだが。
困惑したレイラを見て、シルファが噴き出して笑いだす。
「いつも世話をさせるだけのラディス様が、こんなにかいがいしく世話を焼くなんて、この先、何千年生きても、二度と見られませんよ」
「あ、これじゃない? ペットにエサをやったり、なでるだけで癒されるって書いてある」
レイラは正直引いた。
それからだんだんと心配になってくる。
レイラなんかに食事を食べさせる行為が癒しになるとしたら、末期症状だ。
昨晩も思ったが、ラディスは相当、無理をして仕事をしているのではないだろうか。
「……午後には、瘴気の穴の調査に向かわなくてはいけません。申し訳ありませんが、ラディス様の楽しみにもう少しお付き合いください」
楽しみって言った! 楽しみっていたぞ。
言い方は丁寧だが、完全に面白がっている。
ラディスはラディスで、レイラの要望を無視して、食事のバランスが大切だと言い張って、次の食べ物をレイラの口に運んで来ようとする。
「ところで、その……」
ラディスが珍しく言いよどみ、口ごもった。
「昨晩の行為には、本来は手順があって道具を使うと聞いたのだが……」
行為というと、変な誤解をされそうなのでやめて欲しい。
マッサージが気に入ったのかな?
レイラが口を開こうとしたときだった。
部屋の扉が開き、17歳ほどの金髪の美少女が入ってくる。
そして、レイラをぎろりとにらみつけた。
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