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5回目の巻き込まれ

第10話

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 通常、雷系の魔法は貫通力や麻痺の効果が表れるのが普通だが神鳴は違う。神鳴は音と光により死をもたらす魔法なのである。

 神鳴は自然支配系の魔法で見た目は雷の雨なのだが、雷自体は普通の貫通、副次効果で麻痺・火傷などが付く場合もあるがあくまでそちらがおまけなのである。

 雷雨に触れなくともその時に発生する音と光を利用した死の暗示に掛かり死を迎える魔法である。

 これには回避の方法もあるが言うのとやるのとでは難易度が段違いなのである。

 理由は簡単、視覚を遮断しながら雷雨をよければいいとはいうが、普通の雨ではない雷速で降ってくるのを目をつぶって避けるなど到底不可能である。

 勿論、結界なんかの防御を取るのもアリだが、腐っても最上級魔法、同じぐらいの物でなければ簡単に破られてしまう。

 『神狼琥珀しんろうこはく・』これは、姿は琥珀の様な透明度を持つ狼であり単体でも戦闘ができるまで魔力で具現化されている。触れると凍結・麻痺・火傷が発生し魔法抵抗力の低い個体白狼刻はくろうとうかによる精神凍結を、抵抗力の強い個体には『神鳴かみなり』による。暗示による死をもたらす。

(説明がなげーんだよ。さっさと話し進めろや!)

 ・・・・どうぞ~

「群れなきゃ何もできないトカゲどもが!! 死に晒せや!『神狼琥珀』」

 詠唱キーを唱えた事により龍崎の周りに数百に及ぶ狼が姿を現し、ドラゴンへ向けて駆け出したかと思ったらすでに数匹が息絶え森の中へ落ちて行った、

 一匹は雷速による貫通力強化により身体に穴を空けられそれだけで瀕死だがあけられた内部から凍結し死亡 一匹は魔法抵抗が弱かったのだろうかすり傷程度の傷で凍結効果がそして精神だ死ぬ。

 光と音による効果は今の所発動していない

「ん~久しぶりにこれ使ったが過剰だったかもしれない、あいつ警戒で神鳴を混ぜる必要なかったかもしれないな、全然発動してない・・・白狼刻だけでよかったかもしれないな。」

 龍崎の目の前では一方的な殺戮が繰り広げられているだけであった、狼はタダの一匹も落とされる事無くドラゴンを屠っている。

 だが白狼刻だけでは、ここまで一方的な事にはならない『神鳴』を大賢者のスキルでもある合成を使用した事で初めて実体としての魔法が出来たのである。

 「あのグラントドラゴンはもう死んだかな?ここまで数が多いとさすがに見つけられん、ん?」

 その時ピカッと言う音と共に爆音が響いた、その光を見た者は関係なく死んだ。

「お? やっと手応えのある奴らが来たかな?・・・あ?おいおい、なんでここにあんなのまでいるんだよ。しかも神鳴の効果聞いて無いし、どうやって無効かしてんだ?」

 目の前には無数の屍が重力に逆らう事無く落ちて行く中で一匹・・・いや、数匹だろうか、光と音を見ているのに死ぬことが無く未だに空を飛んでいる。

「なんだって龍王クラスがこんな所に・・・この世界はどうなってるんだ?今までのだってここまで無茶苦茶じゃなかったぞ、ッ!ブレス!!」

 避ける事の不可能な死の光が目の前を覆う。ブレスの範囲が広く回避行動をしても無事では済まないが龍崎に最初っから避けると言う考えは無い、向かって来るのであれば正面から潰すまでの事。

 死の光を目の前にした龍崎は初めて詠唱を唱える。



 黒、とは何物にも染められることのない色として闇属性と同じくいやそれ以上に避けられている物である。理由としては[死]を操り塗り替える魔法だからである。

 黒は何も生まない、ただ染めるだけ、そこには黒以外何も残らない、例え死と言う避けられないモノでも塗り替える物だから。

「濃く、深く、何色にも染まらない黒よ。目の前の死を塗り替えろ!」

「圧縮、圧縮、圧縮、圧縮、・・・『黒霆こくてい』」

 それは黒い雷、濃く、深い、闇よりも深い深い黒、そこには何も存在しない、雷という現象さえも塗りつぶされる。ただの黒。

 それはかつての世界で禁術として本人が封印した者でもある。が本人が封印したのである。使用も本人の自由である。

 それは、圧縮による圧縮で最初雷の形をした槍だったが、今は黒い球体に収まっているが、それはいつあふれてもおかしくない魔力が込められている。制御している本人がギリギリ維持できる量の魔力が込められているのである。手元を離れた場合いつこぼれるかわかったものでは無いそれを龍崎は目の前に突き出し。












 死のブレスを迎え撃った。
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