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9.都会の夜景

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社外でのミィーティング
を終えて帰社すると
持ち帰った案件整理で
百瀬も車内に同席してた
杉下もクマストラップの
事に触れる余裕はなかった。

就業時間の間近に
百瀬から夕食を
誘われたが
帰宅後に明日の資料
作成があるのでと
やんわりお断りした。

連日の激務でタワマンの
掃除に週末行けなかった
ので平日の会社帰りに
立ち寄った。

コンシェルジュに
郵便物が来てないか
確認して、部屋に
向かうエレベーター
から水平線に浮かぶ
夕日が見えた。

タワマンの部屋を
掃除していると
壁に掛かってる
幼い頃の私と美咲
の写真に目が止まった。

「このクマ……」
思わず、大声を出して
しまった。

(回想)

「れいちゃん、今日ね
みーちゃん、スゴ-く
かわいいクマさん
みつけたの」

「みーちゃん、
見せて!見せて!」

大切そうに、小箱を開けた

「これ!好きなの
れいちゃんにあげる。」

「どれにしようかな!
クマちゃんだから
茶色がいい」

「みーは、
ピンクのクマちゃん
が好き」

「クマちゃんて色んな
色してるんだね!
みーちゃんは、
かわいいから
ピンクが似合うよ」

そうだ、このクマの
ストラップは、
美咲からもらった物
だった。

(タワマンの部屋)

LINEで美咲に
今電話で話したいと
連絡すると
直ぐに美咲から電話が

「美咲ちゃん、
クマのストラップて
覚えてる」

「クマねぇー!」

「この部屋の写真に
写ってる子供の頃の」

「ピンクのクマちゃん
懐かしい」

「あのクマて当時、
限定販売だったのかなぁ」

「違うよ!
あのクマちゃんは、
非売品でパパの試作品
だったと思う」

「美咲ちゃん、私以外に
他の子にクマちゃん
プレゼントした。」

「急に言われても、
思い出せない。
ごめんなさい。」

「あのクマちゃんが、
どうかしたの」
(さすがに、百瀬さんの
事は、言えないし)

「今も売ってたら
欲しいと思って
聞いてみただけ」

「そうなんだ!
あのクマちゃんは、
パパが私にて
作らせただと思うから
売ってないよ。」

「あぁー!思い出した
れいちゃんの他に
空港で会った子
にクマちゃんあげた。」
(その子が、百瀬さんだ)

「美咲ちゃん、
忙しいのにありがとう。」

美咲の話だと、百瀬さん
の事を美咲は覚えない。

この都会の夜景みたいに
きらびやかな光りが
似合う容姿端麗な
美咲が初恋相手なのに……

地味でブチャかわと
呼ばれる私を
初恋相手と思って
るなんて勘違いしてる
のがせつない。
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