海優～かいゆう～

今とるべき行動

　男はまず考えた。こういう場合どういう行動をすることが適切であるかということを。男の思考回路はいつも単純明解。はじめに最悪の事態を想定する。この場合の最悪の事態。普通であれば鷺に襲われ頭部を突かれる。もしかすれば運悪くその研ぎ澄まされた動物の本能で、目玉をくり抜かれるかもしれない。さらに運が悪ければ目玉と間違え睾丸をくり抜かれるかもしれない。そして、多大な量の出血をした所にたまたま通りかかった島民が119番の通報をし、ピーポーピーポーの末、気がつくICUのベッドの上で、たくさんの白衣の巨人に囲まれている。という所だろうか。いろいろ賛否両論あると思うが、攻撃されるという点においては見解が一致していると思う。
　ただ彼の場合、人生において自分こそが最も不幸な人間であると思っている節があり、その瞬間においても違うことを予期していた。
　鷺が甘えてくるパターンである。
　甘えてくるならむしろ微笑ましいではないかと思う人も多いであろう。人世代前の人間なら、ムツゴロウ王国を一代にして築いたムツゴロウさんのように、よーしよしよしと撫でることで友達になれるのではないか？その結果、種別は違えど、数百年前の伝記のように、恩返しにやってくるのでないか？そのようなことを考えれるだろう。
　ただ、彼はあまりにも幸福から遠ざかった世界をさまよっていた。この嘘と無関心の満ち満ちた世界で、そこまでポジティブにはどうしても考えられずにいた。
 　甘えてくる。甘えてくる?甘えてくる!?................................

ぞわ

・・・彼の職業を考えてみると、甘えられるのには慣れているはずではないか？と、考える人も多いだろう。もしかして子どもが嫌いなのにそんな職業に就いているのか！？けしからん！？なぜそんな奴が保育士になどなっているのか！！
　まぁまぁまぁ。話の途中です。勝手に想像するのは読者の特権ですが、そうは焦らずに。
　ここから話を一度飛ばして。（鷺だけに。）彼の仕事ぶりについて語りたい。この後の展開は、首を長くして待っていただければと思う。（鷺だけに）