ニアリー・シンメトリー・ハート——お前の手だけだよ……こんなゾクゾクさせられるの……

街田あんぐる

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20. ニアリー・シンメトリー・ハート

3**

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 梓はこてんと寝てしまったが、寝る前のひと言が遥二の気持ちをたかぶらせて眠れない。

「明日朝、起きたら、シよ?」

 おれの恋人は、おれが思ってる以上に積極的で大胆だ。どうしよう。こんなラッキーでいいんだろうか……。

「……ねえ、遥二」

 肩を揺すられて目が覚めた。

「う……おはよ」
「朝ごはん買いに行きたい。鍵貸して」

 梓がお腹をすかせている! その情報で遥二の脳は覚醒した。

「あ、ごめん、何時?」
「9時過ぎ」
「あー……。何時に起きたの?」
「8時。お腹すいちゃった」
「そういうときは1時間待たずに起こしてー!?」
「そっか。分かった」

 梓はふわっと笑った。朝からかわいい。
 それから遥二の腰に腕を回して顔を肩にうずめた。これは絶対に顔を見られないぞという構えだ。

「ね、でも、家に食べるものがあるなら軽く食べて……する?」

 梓は恥ずかしそうに誘った。
 おれの恋人は大胆なんだかシャイなんだか分からない。かわいい。

 8枚切りの食パンをトーストして食べて、歯を磨いて、着々と近づいてくる甘い行為に2人はそわそわして顔を合わせない。

 なぜかベッドに体育座りで待機する梓がかわいくて、遥二は全身で覆い被さった。
 けらけら笑ってからじゃれるようなキスを。それからゆったりと、愛を確かめ合うキスを。

「よーじ、ゆび」
「指?」

 手を差し出すと、待ちきれないようにぱくりとくわえて舌ですみずみまでたどる。

 この行為は2回目だけれど、もう遥二はクセになりそうで焦っている。指を舐められてくらくらするほど興奮するなんて、思ってもみなかったから。

「交代しよ」

 名残惜しそうに梓が口を離す。梓がよく分からない表情で右手を差し出すのを遮る。

「そっちじゃなくて。脚開いて」

 一瞬考えて意味を理解した梓は、恥ずかしさと期待でぽうっと頬を染めた。遥二がパジャマのズボンと下着をまとめて脱がせる。梓は腰を浮かせて、素直に脱がされる。

 梓のまだ柔らかいものに手を触れると、どんどん硬さを増してゆく。梓は必死に声をこらえてシーツを握りしめる。

 上目遣いで見せつけて舐めようと思ったのに、梓は目をぎゅっとつむってそれどころではない様子だ。
 舌を上から下まで這わせると、梓の弱いところはすぐに分かってしまった。

「あぁっそこだめっ!!」
「だめなの? もうやめる?」
「もう交代!」
「交代はないよ」

 また口に含む。反応して漏れる甘い吐息が愛しくて仕方ない。

 とろけるような恋人同士の時間を過ごした。甘い愛の言葉を交わした。

 梓はカーテンを少しだけ開けて「雨だよ」と言う。その裸の背中に遥二が抱きついて、梓の肩に顔を乗せる。

「ほんとだ」

 小雨だった。遥二は雨よりも恋人の首筋を嗅ぐことに興味があった。すんすんと鼻をうずめて嗅ぐ。梓が身をよじり、「ちょっと」と軽く抗議する。

「跡つけていい?」
「えっ!? 見えないとこにして」
「こことか」

 浮き上がった肩甲骨に唇をつける。

「ひゃっ! くすぐったい」
「ここでいい?」
「いいけど……」

 遥二は独占欲に突き動かされるままに、じゅうっと皮膚を吸い上げた。赤い印がぽつんとついて、満足で頬を緩める。
 このままもう一回戦……。

 ぐぅ。
 梓のお腹が鳴った。二人で笑う。トースト一枚じゃ少なかったな。

「近くのスーパーのクリームコロッケがうまいんだけど。買ってこようか?」
「一緒に行きたい」

 大好きな人とスーパーへデート。嬉しくないわけがなく、遥二は笑顔を隠しきれずに了承した。

「あ、傘。返すよ」

 玄関で傘を渡された梓は、ハッと目を見開いてくしゃりと笑った。

「え、どうしたの?」
「思ったよりずっと早く返してもらえたなって」
「確かに」

 噛み締めるように遥二は返事をした。あのときの約束は「いつか」「また」「何年後でも」だったのに。2人の運命はくるくると回って、こんなに早く好きな人と恋人になれた。

「相合傘しよ」

 恋人らしいことがしたくて、遥二は少し甘えてみる。小降りだし。

「うん」

 梓がはにかむ。もしかして、同じことを思っていたのかもしれない。
 幸福だ。

「おれが持つよ」
「うん。遥二は背が高いねえ。かっこいい」

 謙遜を許さない、まっすぐな褒め言葉と輝く瞳だった。遥二は照れて笑う。

「遥二、ちゃんと傘に入ってるの? もっとそっちに傾けて」
「いやいや。小降りだし」
「こういうときは平等でなくちゃ……」
「相合傘で平等は難しい」
「うーん」

 梓は遥二の腕を引き寄せて、よりぴったりと身体を密着させた。

「これでどう? 入れた?」
「だいたいオッケー」
「ならよし」

 肩を寄せ合う遥二と梓は、外から見たら全然似ていなくて、傘だって本当は梓の方に少し傾いていて、遥二の肩の方が濡れている。
 でも、二人の長い「これから」のうちのほんの些細なアンバランスなのだ。

 ——その「これから」が、できるだけ長くありますように。

 遥二は傘の中で、頬を梓の頬にすり寄せた。

「わ! なにー!?」
「なんでもない」
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