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第1話:婚約破棄は優雅に
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その日、わたくし――ロゼリア=グレイスは、公爵令嬢としての最期を迎えました。
「ロゼリア=グレイス。貴女との婚約は、ここに破棄させていただきます」
玉座の間に響き渡るエドワード殿下の言葉に、わたくしは静かに一礼しました。
「――ご判断、誠にありがとうございますわ」
騒然とする宮廷。
令嬢たちは目を見開き、ざわざわとした視線を向けてきます。
わたくしが怒鳴り返すと思ったのでしょうか? 泣き崩れると思ったのでしょうか?
無駄ですわ。
この婚約が、いずれこうなることなど――とっくにわかっておりましたもの。
「な、なんだ……まったく反省の色もないとは!」
エドワード殿下が苦々しげに眉をひそめます。
ですが、わたくしはそれに微笑を返しました。
「ええ。反省しておりませんことよ?」
「な……!」
「わたくしは、あくまで“公爵令嬢として”振る舞ってきただけですもの。それが貴方様のお気に召さなかったなら、仕方ございませんわね」
わたくしの優雅な微笑みに、周囲の侍女や貴族たちは戦慄を走らせました。
「こ、怖ぇ……!」
「やっぱ悪役令嬢だ……!」
「というか、ちょっと格好良い……」
――余計なささやきは、聞かなかったことにいたします。
さて、わたくしはこれにて、王都を去ります。
令嬢ではなく、ただの“ロゼリア”として、第二の人生を生きる覚悟はできておりますの。
***
それから一週間後。
わたくしは、王都から遥か離れた辺境の村・ミルトにおりました。
石畳も無ければ、豪華なドレスも無い。
ですが、ここには美しい自然と、ほんの少しの静けさがございます。
「……ふう。これでようやく、薬草店が開けますわね」
小さな一軒家。
元は空き家だった建物を改装し、店兼住居に仕立て直したのです。
看板には、手書きでこう記しました。
《ロゼリア薬草店》
※毒入りではありません。多分。
「……ちょっとお茶目すぎたかしら?」
しばし悩みましたが、まあ愛嬌ということで。
――わたくし、実は薬草の知識にはちょっぴり自信がございますの。
貴族としてのたしなみのひとつでしたから。
「これからは、誰にも媚びず、平穏に生きていく……そう、それがわたくしの第二の人生」
しみじみと決意を口にした、その瞬間。
「すまん! 誰か薬草を――!」
どんっ、と勢いよく扉が開かれました。
現れたのは、長身で鋭い目をした――
「……アレクシス、様?」
「お、おまえ……ロゼリアか……!? こんな所で何を……いや、それより!」
あらあら。
どうやら、薬草店が開いて早々、波乱の予感でございますわね。
「何でも結構ですわ。さあ、お入りなさいませ。話は、お茶でも淹れながら伺いましょう」
「いや、だから怪我人が……!」
「お茶の準備が先ですわ」
「やっぱり怖ぇな、おまえ……」
――こうして、わたくしの平穏なはずの辺境スローライフは、静かに、しかし確実にモテと事件の渦に巻き込まれていくのでした。
「ロゼリア=グレイス。貴女との婚約は、ここに破棄させていただきます」
玉座の間に響き渡るエドワード殿下の言葉に、わたくしは静かに一礼しました。
「――ご判断、誠にありがとうございますわ」
騒然とする宮廷。
令嬢たちは目を見開き、ざわざわとした視線を向けてきます。
わたくしが怒鳴り返すと思ったのでしょうか? 泣き崩れると思ったのでしょうか?
無駄ですわ。
この婚約が、いずれこうなることなど――とっくにわかっておりましたもの。
「な、なんだ……まったく反省の色もないとは!」
エドワード殿下が苦々しげに眉をひそめます。
ですが、わたくしはそれに微笑を返しました。
「ええ。反省しておりませんことよ?」
「な……!」
「わたくしは、あくまで“公爵令嬢として”振る舞ってきただけですもの。それが貴方様のお気に召さなかったなら、仕方ございませんわね」
わたくしの優雅な微笑みに、周囲の侍女や貴族たちは戦慄を走らせました。
「こ、怖ぇ……!」
「やっぱ悪役令嬢だ……!」
「というか、ちょっと格好良い……」
――余計なささやきは、聞かなかったことにいたします。
さて、わたくしはこれにて、王都を去ります。
令嬢ではなく、ただの“ロゼリア”として、第二の人生を生きる覚悟はできておりますの。
***
それから一週間後。
わたくしは、王都から遥か離れた辺境の村・ミルトにおりました。
石畳も無ければ、豪華なドレスも無い。
ですが、ここには美しい自然と、ほんの少しの静けさがございます。
「……ふう。これでようやく、薬草店が開けますわね」
小さな一軒家。
元は空き家だった建物を改装し、店兼住居に仕立て直したのです。
看板には、手書きでこう記しました。
《ロゼリア薬草店》
※毒入りではありません。多分。
「……ちょっとお茶目すぎたかしら?」
しばし悩みましたが、まあ愛嬌ということで。
――わたくし、実は薬草の知識にはちょっぴり自信がございますの。
貴族としてのたしなみのひとつでしたから。
「これからは、誰にも媚びず、平穏に生きていく……そう、それがわたくしの第二の人生」
しみじみと決意を口にした、その瞬間。
「すまん! 誰か薬草を――!」
どんっ、と勢いよく扉が開かれました。
現れたのは、長身で鋭い目をした――
「……アレクシス、様?」
「お、おまえ……ロゼリアか……!? こんな所で何を……いや、それより!」
あらあら。
どうやら、薬草店が開いて早々、波乱の予感でございますわね。
「何でも結構ですわ。さあ、お入りなさいませ。話は、お茶でも淹れながら伺いましょう」
「いや、だから怪我人が……!」
「お茶の準備が先ですわ」
「やっぱり怖ぇな、おまえ……」
――こうして、わたくしの平穏なはずの辺境スローライフは、静かに、しかし確実にモテと事件の渦に巻き込まれていくのでした。
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