6 / 6
6話 妻(仮)が出来ました
しおりを挟む
「つ、付いて行くって・・・もしかしてヤロヴァツカに!?」
「アタシってば、自分の目で確かめないと気が済まない性質じゃない?」
「いや、知らないですけど・・・」
「いつかはアタシらにとって最低最悪の国をこの目で見てみたいって
思ってたのよね。・・・と、いうわけでアンタ、協力しなさい」
「いや、ホント危ないから行かないほうがいいって! 何故そんな
自殺行為的な事を? 何か悩んでるの? 自暴自棄になっちゃいけない。
話し聞こか?」
「う、うるさい!! そんなんじゃないわよ!! あのね、アンタが無事
なのはアタシが何もしいないからなのよ? ・・・協力しないって言うなら
今すぐにでもその首をチョンパっちゃってもいいんだけど?」
そう言いながら意地の悪そうな顔で彼女は僕にスッと近づいて人差し指で首を横になぞった。
「ううっ!(ブルッ) ・・・わ、分かった。協力するよ・・・」
「うんうん♪ 分ればよろしい」
「・・・じゃあ、僕らの国に着く前にこれをつけて欲しいんだ」
僕は屈魂指輪を取り出して彼女に見せた。
「何それ?」
「ああ、これはね――」
僕は指輪の事や妻の事、国での亜人の扱いなどを詳しく彼女に話した。
「・・・ふぅ~ん、なるほどねぇ」
そう言いながら彼女は左手の薬指に屈魂指輪をスッと嵌めた。
「ちょっ、ちょっと何してるの!!」
「え? 何よ」
屈魂指輪の屈魂魔法を発動させるには使用者の血を指輪に吸わせる必要があるのだ。
「何の警戒もなしに指輪を嵌めるなんて、何を考えてるんだ!! その指輪はまだ
屈魂魔法が発動してないから良かったものの、僕が君を騙していたらとか疑わな
かったの!?」
「あん? アンタ、アタシを騙そうとしたの?」
「いや、そんな気は無いけど・・・」
「ならいいじゃん。ほら、さっさとアタシを連れて行きなさいよ」
(な、何なんだこの娘は・・・)
「あ、そーいやまだアタシの名前言ってなかったわ。アタシは「ルビィ」。宜しくね、
ジェント♪」
こうして僕とんでもない不安を抱えながら帰路についたのだった。
◇◇◇◇◇
「――いやぁ~ははは・・・こいつは驚いた。無事に帰って来ただけじゃなく
妻まで捕えて来るとは・・・」
報告しようとロージさんの所に行くと、ワッセさんと共にすごく驚かれた。まぁ城壁の所のミリハさんや、ここまでくる途中の皆の顔でもう慣れたんだけど。
「偶然寝ていた所を捕まえることが出来たんですよ。運が良かったんです。
運が~・・・いやホント。あはははっ!」(チラッ)
「・・・・」
・・・という体でいこうと事前にルビィと決めておいた。今も彼女は屈魂指輪の力に屈しているフリをして無言、無表情を頑張っている。ボロが出る前にさっさと帰ろう・・・。
「・・・ジェント殿。落街にどんな手を使ってもここから這い上がろうとする連中が
ごまんといる。連中は君の妻をどうにかして奪おうとしてくるだろう。手元に置いて
おきたいと思うなら十分に気を付けた方がいい」
・・・おいおい、マジかよ。僕はルビィに目をやる。彼女は無表情にパチパチと瞬きをしてきた。多分、「大丈夫。問題ない」と言っている。・・・と思う。僕たちが出て行こうとするとロージさんが懐から小さな紙を出して渡してきた。
「この紙に書かれている大通りの道具屋に集めた薬草を売りに行きなさい。
本来は外で手に入れた物はギルドに卸すのが決まりだ。だがそこは昔からの
馴染みの奴がしている店だ。ワシの名を出せば悪いようにはせんだろう」
「ありがとうございます。早速行ってきます」
――僕たちはロージさんから貰った紙を頼りにヤロヴァツカの中央に伸びる大通りまでやって来た。落街の住人でもここへ来るのに問題なく行き来はできる。が、行きかう人々の目は明らかに差別的な視線を感じるな・・・。そんな男たちの少し後ろを妻たちが歩いている。中には可愛らしい服を着ていたり、派手な装飾品を身に付けた娘もいるが、あれは主人の力を周りに誇示する為であって、そこに情も愛もない。こんなものを見て僕の後ろを「妻」のフリをして付いて来ているルビィはどう思っているんだろう・・・。
◇◇◇◇◇
「――別に?」
「え」
道具屋で薬草を換金を済ませて家に帰って来た。夕食にと帰りの途中の屋台で買った物を食べながらその事をルビィに聞いたら、そんなあっさりとした答えが返ってきた。
「・・・別に知り合いでもないし。まぁ同族なら気の毒だなくらいは
思うかもけど」
「そ、そう・・・」
・・・ずいぶんと淡白だな。それにこの国の事を知りたいとか言ってたけどそれほど興味もなさそうに見えたた。・・・はぁ、もういいか。ともかく今日は色々あって疲れた。明日も外に行く予定だし早く寝てしまおう。
「じゃあルビィはそこのベッドでやすんで。僕はこっちの床で寝るから」
「襲わないの?」
「ブッッ!!」
あまりにあっけらかんとそういう事を言うルビィに、思わず僕は吹いてしまった。
「いきなり何てこと言うんだよ!! お、襲うわけないだろ!!」
「・・・はぁ? 何、アンタもしかして「不能」だったりするわけぇ?」(ニヤニヤ)
俺を弄って遊んでやろうと思っているようだが、乗ってやらない。
「何とでも言え。明日も早いんだ。さっさと寝ろよな」
僕は毛布に包まり、彼女に背を向けて床に寝ころんだ。
「・・・ふん」
そんな態度の少し不満を洩らしつつもルビィもベッドに横になったようだ。暫くすると小さな寝息が聞こえてきた。それを聞いた僕も安心したのか、瞼が重くなりそのまま眠りに落ちていったのだった。
「アタシってば、自分の目で確かめないと気が済まない性質じゃない?」
「いや、知らないですけど・・・」
「いつかはアタシらにとって最低最悪の国をこの目で見てみたいって
思ってたのよね。・・・と、いうわけでアンタ、協力しなさい」
「いや、ホント危ないから行かないほうがいいって! 何故そんな
自殺行為的な事を? 何か悩んでるの? 自暴自棄になっちゃいけない。
話し聞こか?」
「う、うるさい!! そんなんじゃないわよ!! あのね、アンタが無事
なのはアタシが何もしいないからなのよ? ・・・協力しないって言うなら
今すぐにでもその首をチョンパっちゃってもいいんだけど?」
そう言いながら意地の悪そうな顔で彼女は僕にスッと近づいて人差し指で首を横になぞった。
「ううっ!(ブルッ) ・・・わ、分かった。協力するよ・・・」
「うんうん♪ 分ればよろしい」
「・・・じゃあ、僕らの国に着く前にこれをつけて欲しいんだ」
僕は屈魂指輪を取り出して彼女に見せた。
「何それ?」
「ああ、これはね――」
僕は指輪の事や妻の事、国での亜人の扱いなどを詳しく彼女に話した。
「・・・ふぅ~ん、なるほどねぇ」
そう言いながら彼女は左手の薬指に屈魂指輪をスッと嵌めた。
「ちょっ、ちょっと何してるの!!」
「え? 何よ」
屈魂指輪の屈魂魔法を発動させるには使用者の血を指輪に吸わせる必要があるのだ。
「何の警戒もなしに指輪を嵌めるなんて、何を考えてるんだ!! その指輪はまだ
屈魂魔法が発動してないから良かったものの、僕が君を騙していたらとか疑わな
かったの!?」
「あん? アンタ、アタシを騙そうとしたの?」
「いや、そんな気は無いけど・・・」
「ならいいじゃん。ほら、さっさとアタシを連れて行きなさいよ」
(な、何なんだこの娘は・・・)
「あ、そーいやまだアタシの名前言ってなかったわ。アタシは「ルビィ」。宜しくね、
ジェント♪」
こうして僕とんでもない不安を抱えながら帰路についたのだった。
◇◇◇◇◇
「――いやぁ~ははは・・・こいつは驚いた。無事に帰って来ただけじゃなく
妻まで捕えて来るとは・・・」
報告しようとロージさんの所に行くと、ワッセさんと共にすごく驚かれた。まぁ城壁の所のミリハさんや、ここまでくる途中の皆の顔でもう慣れたんだけど。
「偶然寝ていた所を捕まえることが出来たんですよ。運が良かったんです。
運が~・・・いやホント。あはははっ!」(チラッ)
「・・・・」
・・・という体でいこうと事前にルビィと決めておいた。今も彼女は屈魂指輪の力に屈しているフリをして無言、無表情を頑張っている。ボロが出る前にさっさと帰ろう・・・。
「・・・ジェント殿。落街にどんな手を使ってもここから這い上がろうとする連中が
ごまんといる。連中は君の妻をどうにかして奪おうとしてくるだろう。手元に置いて
おきたいと思うなら十分に気を付けた方がいい」
・・・おいおい、マジかよ。僕はルビィに目をやる。彼女は無表情にパチパチと瞬きをしてきた。多分、「大丈夫。問題ない」と言っている。・・・と思う。僕たちが出て行こうとするとロージさんが懐から小さな紙を出して渡してきた。
「この紙に書かれている大通りの道具屋に集めた薬草を売りに行きなさい。
本来は外で手に入れた物はギルドに卸すのが決まりだ。だがそこは昔からの
馴染みの奴がしている店だ。ワシの名を出せば悪いようにはせんだろう」
「ありがとうございます。早速行ってきます」
――僕たちはロージさんから貰った紙を頼りにヤロヴァツカの中央に伸びる大通りまでやって来た。落街の住人でもここへ来るのに問題なく行き来はできる。が、行きかう人々の目は明らかに差別的な視線を感じるな・・・。そんな男たちの少し後ろを妻たちが歩いている。中には可愛らしい服を着ていたり、派手な装飾品を身に付けた娘もいるが、あれは主人の力を周りに誇示する為であって、そこに情も愛もない。こんなものを見て僕の後ろを「妻」のフリをして付いて来ているルビィはどう思っているんだろう・・・。
◇◇◇◇◇
「――別に?」
「え」
道具屋で薬草を換金を済ませて家に帰って来た。夕食にと帰りの途中の屋台で買った物を食べながらその事をルビィに聞いたら、そんなあっさりとした答えが返ってきた。
「・・・別に知り合いでもないし。まぁ同族なら気の毒だなくらいは
思うかもけど」
「そ、そう・・・」
・・・ずいぶんと淡白だな。それにこの国の事を知りたいとか言ってたけどそれほど興味もなさそうに見えたた。・・・はぁ、もういいか。ともかく今日は色々あって疲れた。明日も外に行く予定だし早く寝てしまおう。
「じゃあルビィはそこのベッドでやすんで。僕はこっちの床で寝るから」
「襲わないの?」
「ブッッ!!」
あまりにあっけらかんとそういう事を言うルビィに、思わず僕は吹いてしまった。
「いきなり何てこと言うんだよ!! お、襲うわけないだろ!!」
「・・・はぁ? 何、アンタもしかして「不能」だったりするわけぇ?」(ニヤニヤ)
俺を弄って遊んでやろうと思っているようだが、乗ってやらない。
「何とでも言え。明日も早いんだ。さっさと寝ろよな」
僕は毛布に包まり、彼女に背を向けて床に寝ころんだ。
「・・・ふん」
そんな態度の少し不満を洩らしつつもルビィもベッドに横になったようだ。暫くすると小さな寝息が聞こえてきた。それを聞いた僕も安心したのか、瞼が重くなりそのまま眠りに落ちていったのだった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる