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その16
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ジューン・バレットが逃走したという話を知っていた者は多くない。
「これはまた、面白いお客さんがいらっしゃったなあ」
離れ小島の小さな酒場に、一際美しい女がやって来た。
「私、お酒は飲めないから、クロードをお願い」
「クロードでございますか?生憎、切らしておりまして」
マスターは、女の視線から逃れつつ、その優雅に飾られた肢体に見惚れていた。
「そうなの?ならば、牛乳をちょうだい。水で薄めてね」
「かしこまりました」
随分とイキな客である、と、マスターは思った。
「今日は男の方が少ないのね」
女は遊び相手を探している、とマスターは思った。
「島の連中は出払っております」
「へえ、そうなんだ。なにか、わけがあるの?」
「年に一回、王都で開かれる祭りの見物らしいですよ」
「ああ、そうなんだ。困ったわね」
「誰かお探しなんですか?」
「まあ、そうね。古い知り合いを探しているの。噂に聞いたのだけど、この島にいるらしいわ」
女の古い知り合いと聞いて、マスターは男たちの顔を思い浮かべてみた。しかし、皆目見当がつかなかった。こんな女の知り合いなんて、恐らくいないだろうと思った。
「お金はここに置ておくから。ごちそうさま……」
女は30分くらい滞在して、出ていった。マスターはしばらく首を傾げていた。
「どこにいるのかしら?私を食べようと狙っている男は?」
女は明かりの灯らない小さな街道を夜通し歩き続けた。痩せこけた老人たちはいても、若い男はどこにもいなかった。
「これはまた、面白いお客さんがいらっしゃったなあ」
離れ小島の小さな酒場に、一際美しい女がやって来た。
「私、お酒は飲めないから、クロードをお願い」
「クロードでございますか?生憎、切らしておりまして」
マスターは、女の視線から逃れつつ、その優雅に飾られた肢体に見惚れていた。
「そうなの?ならば、牛乳をちょうだい。水で薄めてね」
「かしこまりました」
随分とイキな客である、と、マスターは思った。
「今日は男の方が少ないのね」
女は遊び相手を探している、とマスターは思った。
「島の連中は出払っております」
「へえ、そうなんだ。なにか、わけがあるの?」
「年に一回、王都で開かれる祭りの見物らしいですよ」
「ああ、そうなんだ。困ったわね」
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「お金はここに置ておくから。ごちそうさま……」
女は30分くらい滞在して、出ていった。マスターはしばらく首を傾げていた。
「どこにいるのかしら?私を食べようと狙っている男は?」
女は明かりの灯らない小さな街道を夜通し歩き続けた。痩せこけた老人たちはいても、若い男はどこにもいなかった。
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