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その3

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「いや、別にそういうわけでは無いのですが。どうにも気になってしまうのでして……」

ファンデルワールスはずいぶんと呆れた顔をしていた。でも確かに、これ以上問題がこじれるのもめんどくさかったので、何とか説明しようと考えた。はっきり言って、理由なんていくらでもでっち上げることができたわけだ。

「そうだな。例えば、君が非常に嫉妬深い女であるから、と言うのはどうだろうか」

ファンデルワールスはそういうのだった。

「嫉妬深い女、私がですか?」

「そうだと思う。君は非常に嫉妬深い女のようだ。例えば、君と私との婚約が決まった時、私はたくさんの人々から祝福された。そして、君もまたたくさんの人々から祝福された。しかしながら、それ以降、君は私が他の女と喋ることに対して、少なからず抵抗するようになったのではないだろうか?」

「そんなことないですよ。いつ、私がそのような態度をとったとおっしゃるんですか?」

「あくまでも、身に覚えがないと言い張るつもりか」

ファンデルワールスはそれでも、証拠をでっち上げるのが得意だった。

「ならば、これを見てもらおうか?」

そう言って、ファンデルワールスは引き出しの中からたくさんの手紙を取り出した。

「それは一体何でございますか?」

ファンデルワールスは最初から最後まで、ずっと笑っていた。それはまるで、マリアのことを馬鹿にしているようだった。
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