気まぐれな婚約者に振り回されるのはいやなので、見守ります

岡暁舟

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「ナターシャ……」

「ねえ、ボリス様???」

わたしは質問をする。

「なんだい???」

「あの…わたしの相手をしてくださるのは結構ですけれども……エリスは大丈夫なんですか???」

当然の疑問……。

「ああ、エリスはきっと大丈夫だ。最近、あんまり仲が良くなくてね」

「それにしても……旦那様がほかの女の相手ばかりしていると、もっともっと仲が悪くなってしまいませんか???」

「なんだね……君は俺たちの事を心配してくれるのかね???ああ、素晴らしいなあ……」

「素晴らしいですって???そうですか???」

「だって、ついこの前までは自分が死ぬ運命にあったわけじゃ無いか。それを見事回避して……」

今度は他人の心配をするのがすごいって……そういうことか???

「いやあ、ありがとう。君のおかげでなんとかなりそうだよ」

「なんとかなる???」

「心配してくれる人がいるっていうのは、なんとも心強い話じゃないか……ああ、それでいいんだよ」

「ふーん……よく分かりませんけど、あなたがそうおっしゃるのでしたら……」

本当にわからない世界……そうだとしても、わたしが何かできるわけでは無いからそのまま静観しているのだ。

「さて……そろそろエリスを呼んでくるか……」

ボリス様はそう言って、わたしの前から消えた。

しばらくしても、ボリス様は帰ってこなかった。何かあったのだろうか???

「こんばんは」

だれ???だれかが話しかけている。

「ここにおります……」

天井からやって来た新人……まるでスパイのように。

「ああ、驚く必要はありません。盗人とか、そういう下世話な者ではございませんゆえ……」

「だとすると……目的は???」

「今すぐには申し上げられませんが……わたしどもはあなたのことを高く評価しております……」

「高く評価???」

もちろん、言っている意味がわからなかった。

「まあ、いいですよ。そのうちわかってもらえると思いますから……」

男が話し終わった後……きゃああああっ、と声が響いた。

「なにごとですか???」

わたしの知らないところで、また新たな世界が動き出そうとしているようだった。

「あれはねえ、ちょっとした犠牲ですよ。新しい世界を作るためのね……」

男は一人で笑っていた。そして、知らないうちにこの新しい世界に少しずつ飲み込まれていくのだと思った……。
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