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公爵令嬢のメイロンは一人、華やかなパーティーの月になっていた。
「あぁ……退屈だわ」
「お嬢様! そのようなことを言ってはいけません!」
メイロンがため息をついたとき、メイド長に注意された。彼女は困ったように眉を下げる。
「わかっているわよ。でもねぇ……私には合わないと思うのよね……」
「そんなことありません!!︎ お嬢様はこの国の宝ですからね!?︎」
「……そうかしら?」
メイロンは首を傾げた。適当に励ましてくれるメイド長。それがどれほど意味のあることなのか、と考えてみると、実際は大したことないのだ。だって、単なる貴族の娘が国を代表するほど偉い存在ではないのだから。
するとその時、会場に音楽が流れ始めた。人々はハッとしてダンスホールの方を見やる。そして我先にと手を取り合い踊り出した。
「あら? 何かしら?」
「さぁ……私は存じませんが……」
「ちょっと見てくるわね」
「えっ!?︎ ちょ、お嬢様!?︎」
メイロンは幼い頃から好奇心だけが旺盛だった。メイド長が止める声も聞かず、メイロンは人混みの中に入っていった。しばらく進むと、少しだけ空いた空間があった。そこには美しいドレスを着た女性が二人いた。周りにいる男性たちは彼女たちに見惚れているようだった。
(あの方たち……どこかで見たような気がするけど……)
メイロンはその女性のうちの一人を見て目を見開いた。
「ま、まさか……リリアーナ・ハーデス公爵令嬢!?︎??????」
「えぇ、そうですよ」
「うそぉ!?︎??????????」
突然話しかけられたことに驚きつつも、メイロンはリリアーナを見た。確かに彼女は噂通りとても美しかった。流れる金髪や澄んだ青い瞳はとても美しく、まるで物語に出てくる妖精のようだと思った。世界で最も美しい女性といってもおそらく過言ではなかったはずだ。
「あ、あのっ……失礼ですがどうしてここにいらっしゃるんですか!?︎」
「それは私が聞きたいぐらいなんだけど……。それよりあなたこそどうしたのかしら?……確かエメライン家のご息女よね?」
「はい、そうです。私はエメルダ・フォン・ローエンスの娘でメイロンといいます」
「そうなのね。よろしくお願いしますね」
ニッコリと微笑む彼女に、思わずドキッとする。しかしすぐに我に返って慌てて頭を下げた。
「こちらこそよろしくお願い致します!」
「ところで……あなたはここで何をしているのかしら?」
「実はダンスの練習をしようと思いまして……」
メイロンはすぐさま嘘をついた。貴族と言うものはすぐに嘘を作り上げることができる。確かに彼女は多少はダンスの術を理解している。でも、彼女には相手がいないのだ。
「練習?……もしかして踊れないのですか?」
「はい……。恥ずかしながら……」
メイロンが赤面しながら答えると、リリアーナはクスッと笑った。
「それならよかったら教えましょうか?」
「ほ、本当ですか!?︎」
このような展開になることを、メイロンは全く予想していなかった。自分よりもはるかに美しい女性が、自分にダンスを教えてくれる……それだけでも、夢のような展開だった。
「えぇ。私こう見えても一応貴族の端くれだから多少嗜んでいるわ」
端くれと言う表現がどれほど似つかわしくなかっただろうか。彼女にとっては。その場にいた人間全てが、そう感じたはずだった。
「ありがとうございます!……それでしたら是非ともお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「もちろんよ。じゃあまずは基本からやりましょうか??????」
それから二人は時間を忘れるほど楽しくダンスをした。その様子は他の人たちにも目撃されており、後にこの話が社交界に広がることになるとは思わなかった。
「あぁ……退屈だわ」
「お嬢様! そのようなことを言ってはいけません!」
メイロンがため息をついたとき、メイド長に注意された。彼女は困ったように眉を下げる。
「わかっているわよ。でもねぇ……私には合わないと思うのよね……」
「そんなことありません!!︎ お嬢様はこの国の宝ですからね!?︎」
「……そうかしら?」
メイロンは首を傾げた。適当に励ましてくれるメイド長。それがどれほど意味のあることなのか、と考えてみると、実際は大したことないのだ。だって、単なる貴族の娘が国を代表するほど偉い存在ではないのだから。
するとその時、会場に音楽が流れ始めた。人々はハッとしてダンスホールの方を見やる。そして我先にと手を取り合い踊り出した。
「あら? 何かしら?」
「さぁ……私は存じませんが……」
「ちょっと見てくるわね」
「えっ!?︎ ちょ、お嬢様!?︎」
メイロンは幼い頃から好奇心だけが旺盛だった。メイド長が止める声も聞かず、メイロンは人混みの中に入っていった。しばらく進むと、少しだけ空いた空間があった。そこには美しいドレスを着た女性が二人いた。周りにいる男性たちは彼女たちに見惚れているようだった。
(あの方たち……どこかで見たような気がするけど……)
メイロンはその女性のうちの一人を見て目を見開いた。
「ま、まさか……リリアーナ・ハーデス公爵令嬢!?︎??????」
「えぇ、そうですよ」
「うそぉ!?︎??????????」
突然話しかけられたことに驚きつつも、メイロンはリリアーナを見た。確かに彼女は噂通りとても美しかった。流れる金髪や澄んだ青い瞳はとても美しく、まるで物語に出てくる妖精のようだと思った。世界で最も美しい女性といってもおそらく過言ではなかったはずだ。
「あ、あのっ……失礼ですがどうしてここにいらっしゃるんですか!?︎」
「それは私が聞きたいぐらいなんだけど……。それよりあなたこそどうしたのかしら?……確かエメライン家のご息女よね?」
「はい、そうです。私はエメルダ・フォン・ローエンスの娘でメイロンといいます」
「そうなのね。よろしくお願いしますね」
ニッコリと微笑む彼女に、思わずドキッとする。しかしすぐに我に返って慌てて頭を下げた。
「こちらこそよろしくお願い致します!」
「ところで……あなたはここで何をしているのかしら?」
「実はダンスの練習をしようと思いまして……」
メイロンはすぐさま嘘をついた。貴族と言うものはすぐに嘘を作り上げることができる。確かに彼女は多少はダンスの術を理解している。でも、彼女には相手がいないのだ。
「練習?……もしかして踊れないのですか?」
「はい……。恥ずかしながら……」
メイロンが赤面しながら答えると、リリアーナはクスッと笑った。
「それならよかったら教えましょうか?」
「ほ、本当ですか!?︎」
このような展開になることを、メイロンは全く予想していなかった。自分よりもはるかに美しい女性が、自分にダンスを教えてくれる……それだけでも、夢のような展開だった。
「えぇ。私こう見えても一応貴族の端くれだから多少嗜んでいるわ」
端くれと言う表現がどれほど似つかわしくなかっただろうか。彼女にとっては。その場にいた人間全てが、そう感じたはずだった。
「ありがとうございます!……それでしたら是非ともお願いしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「もちろんよ。じゃあまずは基本からやりましょうか??????」
それから二人は時間を忘れるほど楽しくダンスをした。その様子は他の人たちにも目撃されており、後にこの話が社交界に広がることになるとは思わなかった。
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