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私のせいで、ザイツ様がもっと大変な状況に追い込まれるのだとしたら……やはり、自分自身を許すことができなかった。そんなことを声高に叫んで変わることはないと思った。でも、ザイツ様はより一層素気なくなってしまった。

ここまできたら、もはや夫婦である必要はないと思った。私はこの後……どのように振る舞えばいいのかしら???本気で考えても、分からない。とにかくこのまま……私は何もできないまま終わってしまうような感じがして……逆に言えば、人生なんてどうでもいいのかも、なんて思ってしまうのだった。

ザイツ様のことを何となく考えながら……でも何もできない日々が静かに過ぎていった。話は変わるが、隣国との戦争はますます激化……そのうちにザイツ様も現場の最高指揮官として出向くことが噂されていた。

どうして???戦争なんていまさら必要ないと思うけど……。

あの時は私に優しかったザイツ様……しかしながら、誰よりも欲深く、自己顕示欲が高いらしかった。自らが世界一強いことを証明したい……国家の歴史に名を刻みたい……そう言うことだろうか???

でも、一歩間違えれば、自らの命を失うことにもなる。まあ、自分が死なないにしても、戦争に出向いた自国民が死ぬことは確実だろう。勝ち目のある戦とは聞いているが、万が一ということもある。負けたらどうなるのだろうか。今回は我が国から仕掛けたのだから、王家は滅ぶことになろう。そうすると……私も悲劇のヒロインコースを歩むことになるのだろうか???まあ、それも悪くないか。どうせ、私は今も死んでいるようなものだから。

「マリア殿はいらっしゃいますか???」

聴き慣れた声……ザイツ様だった。私の部屋に来たのは……一体何の用なのだろうか???

「私はいつでもここにおります」

私はそう答えた。

「よかった。一つお話したいことがあります……」

そう言って、ザイツ様は私の近くに腰かけるのだった。やけに深刻そうな顔立ちで……私は少し心配になった。
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