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「お帰りなさいませ、サンダー様!!!!」
直系ではないものの、サンダー様はやはり皇帝の血筋を引く正当な王子様だった。だから、彼には大きな屋敷が与えられ、多くの侍従やメイドたちが与えられる。大勢の出迎えを受けたサンダー様は、
「ありがとう」
と軽く挨拶をして、いつものように食事をとった。
「今日は静かだね……アンネは眠ってしまったのかい???」
サンダー様は侍従に問いかけた。
「はい、サンダー様のお帰りをお待ちになっていらっしゃいましたが……夜も遅くなりますと、起きていることはできませんでしょう……」
「まあ、それもそうか……」
時計を見遣ると、間もなく日付が変わろうとしていた。
「やはり、あちらの世界だと、こっちと時間の流れるスピードが違うのか……」
「あちらの世界、とおっしゃいますと???」
「ああ、なんでもない。こっちの話だ……」
サンダー様はそう言って誤魔化した。
「とはいうものの、最近アンネと話をする機会がすっかり減ってしまったからな……。明日の朝にでも、話をしてみようか」
「それはよろしゅうございますな。アンネ様も、サンダー様とたくさんお話をしたいと……そうおっしゃっておりましたよ」
「そうかそうか。まあ、そうだろうなあ……」
食事を終えたサンダー様は自室に戻る前、とある女性の部屋に立ち寄った。人形のように小さく、でも確かに芽吹く命の営み……サンダー様にとっては唯一の家族……名前はアンネと言う妹だった。
「アンネ……もう少しだ」
サンダー様はアンネ様の元に歩み寄り、そう声をかけた。
「明日、お話をしよう」
眠りかけたアンネ様は……しかしながら、サンダー様の声をきちんと聴いていた。
「やっと……やっとですわ。これでやっと……お兄様とお話が出来ます……」
アンネ様は喜んだ。
直系ではないものの、サンダー様はやはり皇帝の血筋を引く正当な王子様だった。だから、彼には大きな屋敷が与えられ、多くの侍従やメイドたちが与えられる。大勢の出迎えを受けたサンダー様は、
「ありがとう」
と軽く挨拶をして、いつものように食事をとった。
「今日は静かだね……アンネは眠ってしまったのかい???」
サンダー様は侍従に問いかけた。
「はい、サンダー様のお帰りをお待ちになっていらっしゃいましたが……夜も遅くなりますと、起きていることはできませんでしょう……」
「まあ、それもそうか……」
時計を見遣ると、間もなく日付が変わろうとしていた。
「やはり、あちらの世界だと、こっちと時間の流れるスピードが違うのか……」
「あちらの世界、とおっしゃいますと???」
「ああ、なんでもない。こっちの話だ……」
サンダー様はそう言って誤魔化した。
「とはいうものの、最近アンネと話をする機会がすっかり減ってしまったからな……。明日の朝にでも、話をしてみようか」
「それはよろしゅうございますな。アンネ様も、サンダー様とたくさんお話をしたいと……そうおっしゃっておりましたよ」
「そうかそうか。まあ、そうだろうなあ……」
食事を終えたサンダー様は自室に戻る前、とある女性の部屋に立ち寄った。人形のように小さく、でも確かに芽吹く命の営み……サンダー様にとっては唯一の家族……名前はアンネと言う妹だった。
「アンネ……もう少しだ」
サンダー様はアンネ様の元に歩み寄り、そう声をかけた。
「明日、お話をしよう」
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「やっと……やっとですわ。これでやっと……お兄様とお話が出来ます……」
アンネ様は喜んだ。
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