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復讐

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「聖女様。この度はよくも……私を婚約破棄にまで導いてくださいましたわね???」

ガクガクと震えている聖女様……いっそのこと、このまま人形として売り出せば、高い値段が付くかしら、とかなんとか思いながら、まずは一発蹴りを入れてみました。

「止めなさいよ……あなた、私に対してこんな狼藉を働いて……許されるとでも思っているのかしら???」

「あらあら……相変わらずそのお口だけは達者なのですね???でもね、もうじきそのお口をふさいであげますから!!!」

私は聖女様の口を手で塞いでしまいました。

「こら……何をしているの!!!」

恐らく、こう言っているのだと思いました。でもね、私は何も聞いておりませんでしたよ。だって……この人は聖女様なんかではないのですから。聖女様とか言って、実際は男を誑かしているだけなのですから。

そう、私の敬愛する第一王子のコリンズ様と首尾よく婚約が内定したと言いますのに……その婚約を滅茶苦茶にしてしまったのは、他でもなくこの聖女様なのですから。

「ねえ、その色気でコリンズ様を誘惑したのでしょう???ねえ、どうやって???私をないがしろにして……それでも、あなたは自分のことを聖女だと思っているのですか???」

「あれは……コリンズ殿のほうから来たから……仕方なく……」

「へえ……そうやって言い訳するんですか???全く……仕方のない人ですねえ……。わかりました。それならば、仕方がありませんね。えっと……そうだ、このまま死んでもらいましょうか???」

「どうして、そうなるのよ!!!私は何も悪いことなんてしてないって!!!あなた、そんなことをしたら一生呪われるわよ!!!」

「へいへい、そんなことはいちいち気にしませんから。ええ、私は何も怖くないんですよ。例えね、あなたが神様だとしたって、そしたら私が悪魔になればいいだけの話じゃないですか???ねえ、そうでしょう???それくらいの覚悟はね、私にはあるんですよ!!!ああ、私の大好きだったあの人を奪ったあなたには復讐しないと気が済まないのです!!!」

そう言って、私は聖女様を何度も何度も殴ってしまいました。まあ、聖女様っていうのは、不死鳥のようなものですから、殴っても殴っても、またすぐ傷が治って蘇るのですよ。でもね、だからこそ、無限に殴り続けることができるわけでして、そうしますと私は腕が疲れたりするわけでございますが、まあ、快感だったわけですよ。

そこにはコリンズ様の面影も現れて、

「ああ、君は随分と変わってしまったなあ……」

なんて言われてみたりもしながら……聖女様が行方不明になってもう1年くらい経ったでしょうか。私は今でも日課のように聖女様を殴り続けています。聖女様の記憶には痛みのみが加わります。傷はありません。

「ねえ、いい加減に止めない???」

「ええ、私が死ぬまで付き合ってもらいますから!!!」

そう言って、私は今日も元気に聖女様に傷を加えていくのです。
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