静かなる公爵令嬢と不貞な王子~婚約破棄の代償は国家転覆の危機?~

岡暁舟

文字の大きさ
2 / 28

2

しおりを挟む
「まずはチャーリーから聞いてみよう。一体、どんな具合なのだ?」

 長女のチャーリーは王子スミスに促されて話を始めた。

「まずはこの場で公爵令嬢アリエッタ様の罪を告白出来ることにつきまして、王子スミス様に御礼申し上げます」

 恭しく頭を下げたかと思えば、今度は品のないウインクをした。実際のところ、スミスはアリエッタのような淑やかな令嬢よりも、チャーリーのような品のない令嬢を好んだのだ。

「アリエッタ様は公爵令嬢の地位を利用して、私を始めとして多くの学生を虐めておりました・・・私が関わったのは試験のカンニングですね。アリエッタ様は学院の中で成績が・・・正直なところよろしくないようで留年の危機にありました。そんな折、私に助けを求めたのです。試験の時、カンニングさせろ、と・・・」

「そんなのは言いがかりだ!アリエッタは常にトップクラスの成績を修めているんだっ!」

 アリエッタの父:アダムスが直ちに反論した。

「アダムス殿・・・今はチャーリーの話を聞いているのです。余計な口出しはなきように!」

 スミスはアダムスの反論を封じた。王子に命令されてしまったので、アダムスはチャーリーに対する糾弾がこの場ではひとまず出来なくなった。

「その成績は・・・要するに我々名もなき令嬢たちがカンニングに協力しているからなのです。実際のところ、アリエッタ様の能力はほとんどないのですっ・・・」

 会場が騒然となった。カンニングが真実であれば、アリエッタのみならず、チャーリーたちも処罰の対象になる。罪の意識が芽生えて勇気を出し告白に至ったチャーリーたちを称賛する声が少しずつ出始めた。

「そんなこと・・・私の娘に限ってありえない。なあ、アリエッタ?君には反論する権利がある。あの者たちが言っていることは全て嘘なんだよな?なあ、なんとか言ってみなさい!」

「・・・・・・」

 アリエッタはやはり反論しなかった。

「反論しないということは・・・やはり、私どもの主張が正しいということになりますね・・・」

 アダムスは娘の無実を信じていた。だが、アリエッタが反論しない以上、話のなり行きはチャーリーたちに有利となった。

「どうして何も言わないんだ?アリエッタ・・・我が公爵家はこれで終わりだっ・・・」

 アダムスはその場で卒倒し会場から運び出された。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もてあそんでくれたお礼に、貴方に最高の餞別を。婚約者さまと、どうかお幸せに。まぁ、幸せになれるものなら......ね?

当麻月菜
恋愛
次期当主になるべく、領地にて父親から仕事を学んでいた伯爵令息フレデリックは、ちょっとした出来心で領民の娘イルアに手を出した。 ただそれは、結婚するまでの繋ぎという、身体目的の軽い気持ちで。 対して領民の娘イルアは、本気だった。 もちろんイルアは、フレデリックとの間に身分差という越えられない壁があるのはわかっていた。そして、その時が来たら綺麗に幕を下ろそうと決めていた。 けれど、二人の関係の幕引きはあまりに酷いものだった。 誠意の欠片もないフレデリックの態度に、立ち直れないほど心に傷を受けたイルアは、彼に復讐することを誓った。 弄ばれた女が、捨てた男にとって最後で最高の女性でいられるための、本気の復讐劇。

婚約者に捨てられた私ですが、王子曰く聖女の力が宿っているみたいです。

冬吹せいら
恋愛
婚約者である伯爵令息に婚約破棄をされ、森に置き去りにされた、男爵令嬢のエメラ。   街に戻ろうとする道中、王子に拾われ……。 とある出来事がきっかけで、聖女であることが判明した。 その一方、伯爵令息と新たに婚約を結び直した子爵令嬢は、男爵家を潰す計画を立てていて……?

元婚約者が「俺の子を育てろ」と言って来たのでボコろうと思います。

音爽(ネソウ)
恋愛
結婚間近だった彼が使用人の娘と駆け落ちをしてしまった、私は傷心の日々を過ごしたがなんとか前を向くことに。しかし、裏切り行為から3年が経ったある日…… *体調を崩し絶不調につきリハビリ作品です。長い目でお読みいただければ幸いです。

【完結】両親が亡くなったら、婚約破棄されて追放されました。他国に亡命します。

西東友一
恋愛
両親が亡くなった途端、私の家の資産を奪った挙句、婚約破棄をしたエドワード王子。 路頭に迷う中、以前から懇意にしていた隣国のリチャード王子に拾われた私。 実はリチャード王子は私のことが好きだったらしく――― ※※ 皆様に助けられ、応援され、読んでいただき、令和3年7月17日に完結することができました。 本当にありがとうございました。

(完結)自分勝手すぎる彼から婚約破棄をされました

しまうま弁当
恋愛
舞踏会に出席していたティルスタール侯爵家の令嬢メリッサは突然婚約者である王太子のブリュードから婚約破棄を突きつけられたのでした。 ただメリッサは婚約破棄されるような理由に心当たりがなかったので、ブリュードにその理由を尋ねるのでした。するととんでもない答えが返ってきたのです。 その理由とはブリュードがメリッサに対して嫌がらせをした時にメリッサが大声で泣きわめかなかったからでした。 ブリュードは女子をイジメたり泣かしたりして大喜びするようなクズ男だったのです。

私、今から婚約破棄されるらしいですよ!卒業式で噂の的です

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、アンジュ・シャーロック伯爵令嬢には婚約者がいます。女好きでだらしがない男です。婚約破棄したいと父に言っても許してもらえません。そんなある日の卒業式、学園に向かうとヒソヒソと人の顔を見て笑う人が大勢います。えっ、私婚約破棄されるのっ!?やったぁ!!待ってました!! 婚約破棄から幸せになる物語です。

(完結)貴女は私の親友だったのに・・・・・・

青空一夏
恋愛
私、リネータ・エヴァーツはエヴァーツ伯爵家の長女だ。私には幼い頃から一緒に遊んできた親友マージ・ドゥルイット伯爵令嬢がいる。 彼女と私が親友になったのは領地が隣同志で、お母様達が仲良しだったこともあるけれど、本とバターたっぷりの甘いお菓子が大好きという共通点があったからよ。 大好きな親友とはずっと仲良くしていけると思っていた。けれど私に好きな男の子ができると・・・・・・ ゆるふわ設定、ご都合主義です。異世界で、現代的表現があります。タグの追加・変更の可能性あります。ショートショートの予定。

(完結)伯爵家嫡男様、あなたの相手はお姉様ではなく私です

青空一夏
恋愛
私はティベリア・ウォーク。ウォーク公爵家の次女で、私にはすごい美貌のお姉様がいる。妖艶な体つきに色っぽくて綺麗な顔立ち。髪は淡いピンクで瞳は鮮やかなグリーン。 目の覚めるようなお姉様の容姿に比べて私の身体は小柄で華奢だ。髪も瞳もありふれたブラウンだし、鼻の頭にはそばかすがたくさん。それでも絵を描くことだけは大好きで、家族は私の絵の才能をとても高く評価してくれていた。 私とお姉様は少しも似ていないけれど仲良しだし、私はお姉様が大好きなの。 ある日、お姉様よりも早く私に婚約者ができた。相手はエルズバー伯爵家を継ぐ予定の嫡男ワイアット様。初めての顔あわせの時のこと。初めは好印象だったワイアット様だけれど、お姉様が途中で同席したらお姉様の顔ばかりをチラチラ見てお姉様にばかり話しかける。まるで私が見えなくなってしまったみたい。 あなたの婚約相手は私なんですけど? 不安になるのを堪えて我慢していたわ。でも、お姉様も曖昧な態度をとり続けて少しもワイアット様を注意してくださらない。 (お姉様は味方だと思っていたのに。もしかしたら敵なの? なぜワイアット様を注意してくれないの? お母様もお父様もどうして笑っているの?)  途中、タグの変更や追加の可能性があります。ファンタジーラブコメディー。 ※異世界の物語です。ゆるふわ設定。ご都合主義です。この小説独自の解釈でのファンタジー世界の生き物が出てくる場合があります。他の小説とは異なった性質をもっている場合がありますのでご了承くださいませ。

処理中です...