静かなる公爵令嬢と不貞な王子~婚約破棄の代償は国家転覆の危機?~

岡暁舟

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「それで・・・ここまで聞けばこれ以上罪を確認する必要もないと思うが、アリスも何か言いたいことはあるのか?」

 スミスはアリスにも質問した。ただ、アリスは残念ながら可愛いのだが姉のチャーリーやカレンよりも頭が弱く、あんまり喧嘩が得意ではなかった。むしろ温厚で物静か・・・そういう点では、どこかアリエッタに似ている側面もあったわけだ。

「・・・お姉様、好き・・・」

「まあまあ、うちのアリスったら!」

 アリスは姉のチャーリーやカレンに溺愛されていた。だから、アリエッタと触れることはほとんどなかった。そもそも学年が5つも離れていた。

「・・・そうかそうか、それは良かったな。それはさておき、これではっきりしたな!」

 スミスは意気揚々としていた。

「この会場にいる者たちも聞き届けてくれただろうか?私の婚約者候補はこれほど悪名高いのである!このまま婚約に至ってしまっては、私の名誉に関わる大問題であり、この場において正式に婚約の破棄を宣言しようと思うのだ!」

 スミスがこう宣言すると、会場がわあっと盛り上がった。

「私どもをお救いくださりありがとうございます!」

 チャーリーやカレンはスミスに対して深々と頭を下げた。

「いやいや、当然のことをしたまでだ」

「・・・・・・」

 アリエッタは会場全体から冷ややかな視線を浴びることとなった。だが、相変わらず口を割らなかった。

「さて、アリエッタ!公爵家の処遇についてだが・・・この場においてチャーリー、カレンに対して正式に謝罪するのであれば、家の取り潰しだけは見逃してやってもいいぞ?」

「・・・・・・」

 アリエッタは表情を一切変えなかった。

「この人でなしっ!」

 チャーリーが叫んだ。それでも、アリエッタは反応しなかった。

「・・・そうかそうか、自らの非を謝罪することも出来ないとは。だとしたら、そんな令嬢を生み出した公爵家は取り潰しが望ましいな!」

 スミスは言った。こうしてアリエッタとスミスの婚約披露宴は幕を閉じた。
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