静かなる公爵令嬢と不貞な王子~婚約破棄の代償は国家転覆の危機?~

岡暁舟

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 第一王子スミス率いる帝国軍は隣国との戦いに明け暮れていた。国境付近での攻防は特に激しく、若き陸軍士官:オングリザ率いる突撃部隊はまさに四面楚歌であった。

「オングリザ殿・・・もう終わりです」

 下士官数名がオングリザの元に集った。

「帝国軍の名誉にかけて、潔くこの場で自決しましょう・・・」

 自決と聞いて、オングリザは発言者につかみ掛かった。

「自決だと?お前、正気なのか?どうして自ら死なねばならないのだ?今日は私の愛する妹がスミス様と婚約する日だというのに!」

「それとこれとは関係ありません。今更ですが・・・あの状況で突撃するというのは、戦略上あり得なかったと思います」

「だから、お前たちはこの場で死ねというのか?」

「よもや、逃げるわけではないでしょうな?敵前逃亡はそれだけで死罪に該当いたします・・・」

「・・・お前たちの頭は時代遅れだろっ!」

 オングリザは叫んだ。

「敵前逃亡などと、そんな恥ずかしいことはしないさ。私は必ず生きて帰ると決めている。愛しの妹の婚約を見届ける義務があるのだっ!」

「ならば・・・一体どうするというのですか?」

「決まっているだろう。このまま敵陣に突っ込むのだ!」

「・・・・・・」

 誰もオングリザについて行こうとはしなかった。敵に捕まって捕虜となることが決まる状況・・・帝国軍の仁義に反するのであった。

「あの若武者はなんとかして生き残りたいらしいなっ」

「確かに、まあそもそもこの戦い自体曖昧だからなっ・・・」

「今更仁義もへったくれもないのか・・・」

 オングリザは1人本陣から敵陣めがけて出陣した。

「私は今日死ぬわけにはいかないのだっ!!!」

 大声で敵陣に突っ込んでいった。

「我が名はオングリザである!帝国軍の奇襲であるぞっ!」

 敵陣の兵士たちは四面楚歌におかれた帝国軍を前にして余裕であった。酒が振る舞われ、兵士たちはみんな、裸踊りをしていた。拍子抜けしてしまったオングリザは再び叫んだ。

「おいおい、帝国軍の奇襲であるぞっ!」

 オングリザがいくら叫んでも、誰も相手にしなかった。酒に酔った敵軍の兵士がオングリザに絡んだ。

「お前、見ない顔だな。酒飲むか?」

「ふざけるなっ!私は帝国軍の士官、オングリザだっ!」

「オングリザ?聞いたことない名前だなっ・・・おーい、新入りだぞっ!」

 まさに四面楚歌・・・酒の入った樽を持った兵士たちがオングリザを囲い込んだ。

「さあさあ、まあ堅苦しいことは抜きにして、酒でも飲もうやっ!」

「だから、私は帝国軍の・・・」

「そういうことはいいからっ、さあ飲むんだっ!」

 オングリザは敵軍の振る舞い酒を飲むことになった。

「ったく、こうなったらヤケクソだっ!」

 オングリザは酒を飲んで飲んで飲みまくった。酒豪として知られたオングリザにとって、敵国の酒は自国と比較して非常に緩い酒であった。

「おおっ、新入り!いい飲みっぷりじゃないか!これならテネリア様といい勝負が出来そうだなっ!」

「テネリア様?それは誰だっ?」

「お前、新入りだからテネリア様を知らないな?いいだろう、それならば教えてやろう!我が偉大なる祖国の第一王子テネリア様だっ!」

 敵国の第一王子・・・それほどの敵将が戦場の最前線にやってくるのか・・・オングリザは疑問だった。

「そのテネリア様っていうのは、この戦場にいらっしゃるのか?」

「当たり前だろうっ!どこぞの王子様とは違ってだな、テネリア様は自ら最前線にいらっしゃるのだよっ!」

 本当なのか・・・オングリザはこの時、まだ半信半疑であった。
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