静かなる公爵令嬢と不貞な王子~婚約破棄の代償は国家転覆の危機?~

岡暁舟

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「皇帝陛下に敬礼っ!!!」

 けたたましい号令とともに扉が開く。第一王子スミスの父親、帝国最高の権力者である皇帝ゴードンが議会に姿を現わした。おおよそ40名の貴族議員から構成される議会・・・最高位公爵でありゴードンの盟友であったアダムスはアリエッタの一件があり、顔を出さなかった。変わって議会の末席には辺境子爵ホルストの姿があった。

 新入りの議員は議会終了後、皇帝に謁見することが慣例となっており、ホルストは子爵としては異例の謁見を許可されることとなった。

「お初にお目にかかりますっ・・・」

「噂はそれとなく聞いておるよ・・・」

 ゴードンははあっとため息をついた。

「以降お見知りおきを・・・」

「願わくは、そうならないことを望むのだがなっ・・・」

 ホルストの悪名は、当然ゴードンの耳にも届いていた。

「とは言っても、ご存じの通りご子息であられるスミス様は、私の娘たちにぞっこんでございますからね・・・」

「・・・要求はなんだ?」

「皇帝陛下、私のような辺境子爵が要求などと、とても恐れ多いわけでございますから・・・まずは私どものことをお忘れなきように・・・」

 そう言ってホルストは議会を去っていった。

「これは・・・まずいことになりそうだなっ・・・」

 スミスと違ってゴードンは理性的であり、スミスの犯した罪に後々悩むこととなった。盟友アダムスの姿がなかったことも憂いの原因であった。
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