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「ソフィア、君のことを私は一生愛するよ!」
第一王子ロベルトと婚約してから、彼は毎晩私に愛を囁く。
「私も…ロベルトのことを一生愛すると誓いますわ!」
「おおっ、言ってくれるね。それならば…君の美しい唇にキスをしよう!!!」
「喜んで!!もっともっと、私のことを愛してくださいな!!!」
ロベルトが笑い、私もまた、笑い返す。ロベルトが私にキスをして、私もまた、ロベルトにキスを返す。
素敵なカップルでしょう。ロベルトは私のことを段々と愛するようになってきたと思う。
でもね、正直に言って、ロベルト以外の王家の人間がどれほど私のことを家族として愛してくれているのかは分からない。要するに打算的なんだよね。私がロベルトの婚約者になれたのは、絶世の美女で誰もが羨ましがるレベルの令嬢だから、というわけではない。ルックスは平凡で、正直オシャレとかそういうものには大して興味がない。いや、正確に言えば幼少期から過度な詰め込み教育を受け続けたせいで、そういったことに無頓着となってしまったのだ。
その理由は…私が正真正銘の聖女であるから。聖女というのは、この国では非常に重要な意味を持つ。政治、経済、医療、福祉、教育など様々な分野の知見を吸収し、神様から導き出された予言を世界に還元する。要するに、生まれながらにして、この世界の未来がどうなっていくのか、見えてしまう。不思議なことに自分自身の未来を予想することは難しい。それは、神様なりの配慮なのだろう。自分自身の未来が最初から全部分かってしまったら、人生が嫌になって死んでしまう可能性があるから。生きるという行為はほとんどめんどくさくて、死んだ方が楽だと思うことが多いから。
私の予言に導かれて国政が成り立つ。私が言った通りに動けば、この世界はしばらく平和であり続ける。人々、特に貴族たちは国家の安寧を一番重視する。庶民たちが反乱を起こして自分たちの首が飛んでしまうことを一番恐れるわけだから。
そんな安寧の礎となる聖女は慣例としてその時代の最も格式高い未婚男性と婚約することになる。第一王子ロベルトは容姿端麗で美しい。将来の皇帝陛下になるべく王道を歩む典型的な王家の貴族である。本来ならば、私とロベルトは釣り合わないことが多い。でも、彼らが私を無下にすることは出来ない。私を蔑ろにしてしまうと、国政に大きな影響が出てしまう。コンパスを失った遭難船のようなものだ。
まあ、そんなこんなで、私は王家の仲間入りを果たしたわけなのだが、なんだか他人行儀である。ロベルトとは段々打ち解けてきたのだが、その他のメンバーとはなんとなくギクシャクしている感じ。義父に当たる皇帝陛下と義母が顕著である。例えば、3人が楽しそうに話しているところへ、私が顔を出す。ロベルトはニコリと微笑み返すのだが、皇帝陛下と義母はびくりと一瞬怯えるのだ。聖女って、そんなに怖い存在なのか?
「あの…私も団らんに混ざってよろしいですか?」
こんな許可取りは本来不要だろう。でもね、そういう気持ちになってしまうんだ。
「ああっ…別に構わないよ…」「ええっ…大丈夫で…ございますわ!!」
ロベルトの両親はどうしても歯切れが悪い。
「父さん、母さん。どうしちゃったのさ?そんなに畏まる必要ないだろう…」
ロベルトは両親の対応に呆れる。形式化した、半ば義務付けられた婚約であり、ロベルトにしてみれば、本心からすると必ずしも望ましい婚約ではなかったはず……学院で私よりも格段に美しい令嬢たちから言い寄られているのを知っているから。それでも、段々と私のことを受け入れるようになってくれた。私の方としても、形だけの婚約であるから、ロベルトに全く愛されない運命になるのだと身構えていた。その予想が外れたのは良かった。
良かったんだけど……世の中そんなに簡単に流れていくとは決まっていない。様々な難儀が待ち構えている。この世界には敵が多い。そんな日々がこれから始まる…。
第一王子ロベルトと婚約してから、彼は毎晩私に愛を囁く。
「私も…ロベルトのことを一生愛すると誓いますわ!」
「おおっ、言ってくれるね。それならば…君の美しい唇にキスをしよう!!!」
「喜んで!!もっともっと、私のことを愛してくださいな!!!」
ロベルトが笑い、私もまた、笑い返す。ロベルトが私にキスをして、私もまた、ロベルトにキスを返す。
素敵なカップルでしょう。ロベルトは私のことを段々と愛するようになってきたと思う。
でもね、正直に言って、ロベルト以外の王家の人間がどれほど私のことを家族として愛してくれているのかは分からない。要するに打算的なんだよね。私がロベルトの婚約者になれたのは、絶世の美女で誰もが羨ましがるレベルの令嬢だから、というわけではない。ルックスは平凡で、正直オシャレとかそういうものには大して興味がない。いや、正確に言えば幼少期から過度な詰め込み教育を受け続けたせいで、そういったことに無頓着となってしまったのだ。
その理由は…私が正真正銘の聖女であるから。聖女というのは、この国では非常に重要な意味を持つ。政治、経済、医療、福祉、教育など様々な分野の知見を吸収し、神様から導き出された予言を世界に還元する。要するに、生まれながらにして、この世界の未来がどうなっていくのか、見えてしまう。不思議なことに自分自身の未来を予想することは難しい。それは、神様なりの配慮なのだろう。自分自身の未来が最初から全部分かってしまったら、人生が嫌になって死んでしまう可能性があるから。生きるという行為はほとんどめんどくさくて、死んだ方が楽だと思うことが多いから。
私の予言に導かれて国政が成り立つ。私が言った通りに動けば、この世界はしばらく平和であり続ける。人々、特に貴族たちは国家の安寧を一番重視する。庶民たちが反乱を起こして自分たちの首が飛んでしまうことを一番恐れるわけだから。
そんな安寧の礎となる聖女は慣例としてその時代の最も格式高い未婚男性と婚約することになる。第一王子ロベルトは容姿端麗で美しい。将来の皇帝陛下になるべく王道を歩む典型的な王家の貴族である。本来ならば、私とロベルトは釣り合わないことが多い。でも、彼らが私を無下にすることは出来ない。私を蔑ろにしてしまうと、国政に大きな影響が出てしまう。コンパスを失った遭難船のようなものだ。
まあ、そんなこんなで、私は王家の仲間入りを果たしたわけなのだが、なんだか他人行儀である。ロベルトとは段々打ち解けてきたのだが、その他のメンバーとはなんとなくギクシャクしている感じ。義父に当たる皇帝陛下と義母が顕著である。例えば、3人が楽しそうに話しているところへ、私が顔を出す。ロベルトはニコリと微笑み返すのだが、皇帝陛下と義母はびくりと一瞬怯えるのだ。聖女って、そんなに怖い存在なのか?
「あの…私も団らんに混ざってよろしいですか?」
こんな許可取りは本来不要だろう。でもね、そういう気持ちになってしまうんだ。
「ああっ…別に構わないよ…」「ええっ…大丈夫で…ございますわ!!」
ロベルトの両親はどうしても歯切れが悪い。
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ロベルトは両親の対応に呆れる。形式化した、半ば義務付けられた婚約であり、ロベルトにしてみれば、本心からすると必ずしも望ましい婚約ではなかったはず……学院で私よりも格段に美しい令嬢たちから言い寄られているのを知っているから。それでも、段々と私のことを受け入れるようになってくれた。私の方としても、形だけの婚約であるから、ロベルトに全く愛されない運命になるのだと身構えていた。その予想が外れたのは良かった。
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