離縁された聖女(本物)はモブ研究員を拾う

岡暁舟

文字の大きさ
16 / 21

16

しおりを挟む
「せっかく私の力を発揮できたというのに……」

 フンボルトは言った。明らかに不満そうな表情で。研究者の鏡だろうか?自分の実績を易々と手放すことはしないのだろう。

「でもね……このままだと世界が終わってしまう可能性があるわ……」

「そんなことないでしょう。ひょっとして……あなたはまだ、神様の声が聞えるのですか?」

「ええっ、まあ、そうね……」


「嘘だ……そんなわけないっ……」

 フンボルトは笑った。

「だとしたら、私の研究は失敗と言うことになるじゃないですか……」


「失敗とか、そんなことはどうでもいいじゃないですか……」

 私が聖女でなくなり、妹のテレサが完全な聖女に成り下がる……この世界がなんとなく終わる予感がした。


「なあ、ソフィア……」

 こんな感じで声が聞こえてくる。

「こんな世界だったら……君が望まない世界だとしたら、壊してもいいと思うか?」


 私にいつも囁いてくれる神様の声……聖女でなくなった私が今度は悪魔になるのだろうか。


「どうしたんだい、ソフィア殿?」

 私が何も話さなくなったので、フンボルトは怪訝そうに尋ねた。

「別に……これ以上あなたと話をしても仕方がないから……」


「それでは……この世界を終わらせようか?」


 突如として風が吹いてくる……最初は心地いい風かと思ったが、段々と風の勢いが増してきて、フンボルトの家の残骸を粉々に吹き飛ばしていった。

「私の家がああっ!!!」

 フンボルトが叫んだ。そんなことはどうでもよくて……風の勢いが段々と強くなって、フンボルトの邸宅とその周囲の家々を巻き込んでいった。

 周囲の悲鳴がどんどん大きくなっていく……私は風の近くにいても、それほどの風だと感じなかった。触れてみても、平気だった。

「あの女は……何者なんだ!?」

 どんどん大きくなって周囲を巻き込む風の力……私はそんな印象がなかった。

 風がどんどん大きくなって、やがては王宮にまで到達するのではないか、と思った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

婚約破棄するのは私

大森蜜柑
恋愛
妹に婚約者を取られ、結婚式ひと月前に婚約破棄されたユーリア。 その日、屋敷に現れた父の命の恩人だという和の国の武士、藤堂清雅に初めて出会う。彼は3年前の別れ際父に言われた「娘を嫁にもらって欲しい」という言葉通りに迎えに来たのだが…… 架空の日本に似た島国を舞台にした戦国武将とユーリアの恋物語です。 登場人物は全て架空の物で、万が一偶然実在する武将名と被っても全然無関係です。 小説家になろうにも掲載してます。

双子令嬢の幸せな婚約破棄

石田空
恋愛
クラウディアは双子の妹のクリスティナに当主の座と婚約者を奪われ、辺境の地に住まう貴族の元に嫁ぐこととなった……。 よくある姉妹格差の問題かと思いきや、クリスティナの結婚式のときにも仲睦まじく祝福の言葉を贈るクラウディア。 どうして双子の姉妹は、当主の座と婚約者を入れ替えてしまったのか。それぞれの婚約者の思惑は。 果たして世間の言うほど、ふたりは仲違いを起こしていたのだろうか。 双子令嬢の幸せな婚約破棄の顛末。 サイトより転載になります。

ときめき♥沼落ち確定★婚約破棄!

待鳥園子
恋愛
とある異世界転生したのは良いんだけど、前世の記憶が蘇ったのは、よりにもよって、王道王子様に婚約破棄された、その瞬間だった! 貴族令嬢時代の記憶もないし、とりあえず断罪された場から立ち去ろうとして、見事に転んだ私を助けてくれたのは、素敵な辺境伯。 彼からすぐに告白をされて、共に辺境へ旅立つことにしたけど、私に婚約破棄したはずのあの王子様が何故か追い掛けて来て?!

婚約破棄されたので公爵令嬢やめます〜私を見下した殿下と元婚約者が膝をつく頃、愛を囁くのは冷酷公爵でした〜

nacat
恋愛
婚約者に裏切られ、蔑まれ、全てを失った公爵令嬢リリアナ。 「あなたのような女、誰が愛すると?」そう言い放った王太子と元友人に嘲られても、彼女は涙を見せなかった。 だが、冷たく美しい隣国の公爵セドリックと出会った瞬間、運命は静かに動き出す。 冷酷と噂された男の腕のなかで、彼女は再び自分を取り戻していく。 そして――彼女を捨てた者たちは、彼女の眩い幸福の前に膝をつく。 「これは、ざまぁを通り越して愛された令嬢の物語。」

ヤンキー、悪役令嬢になる

山口三
恋愛
岸田和華(きしだわか)は異世界に飛ばされた。自分が読んでいた小説の悪役令嬢ジュリエットに憑依してしまったのだ。だが和華は短気でガサツで、中学高校と番を張ってたヤンキーだ。高貴な身分の貴族令嬢なんてガラじゃない。「舞踏会でダンス? 踊りなんて盆踊りしか知らないからっ」 一方、リアル世界に残された和華の中にはジュリエットが入っていて・・。

没落令嬢は僻地で王子の従者と出会う

ねーさん
恋愛
 運命が狂った瞬間は…あの舞踏会での王太子殿下の婚約破棄宣言。  罪を犯し、家を取り潰され、王都から追放された元侯爵令嬢オリビアは、辺境の親類の子爵家の養女となった。  嫌々参加した辺境伯主催の夜会で大商家の息子に絡まれてしまったオリビアを助けてくれたダグラスは言った。 「お会いしたかった。元侯爵令嬢殿」  ダグラスは、オリビアの犯した罪を知っていて、更に頼みたい事があると言うが…

遊び人の令嬢が目を付けたのは、私の真面目な婚約者でした

おいどん
恋愛
子爵家の令嬢エリーネと伯爵家の次男のノルトが婚約を結んだのは、半年前だった。 真面目で優秀なノルトに相応しい婚約者であろうとするものの、エリーネには自信がなかった。 ある日、遊び人と噂の令嬢べルティーナとノルトが共にいるところを見てしまう。 「真面目クンは壁さえ破っちゃえばこっちのもんだからね〜」 「きっと、彼女の美しさに嫉妬しているのだわ…」 「…今度は、ちゃんと言葉にするから」

処理中です...