あなたに愛されたかっただけなのに 〜すれ違う双子の愛の行方〜

葉月

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ホテル ②

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「智樹は可愛いから、本当は柔らかめのオーバーサイズニットとか着て欲しいけど、今から食事にいくからカジュアルすぎるのはな…。だからこれは?」
 差し出された服はジャケット、シャツ、パンツ、靴、全て同じハイブランドで非の打ち所がない。この非の打ち所がない服を智樹が着ると、さらに高貴に見え、今から連れていかれるだろう、ホテル最上階にある、夜景が見えると有名なフランス料理店に行ってもおかしくない。いや、おかしいどころか、他の客からの視線を独り占めするだろう。
「さすが兄さん。とっても素敵だよ」
 そんな言葉が口から出て、智樹はフッと自嘲ぎみに笑ってしまった。

あんなにやり方を忘れかけていた、『兄さんが好む言葉』を探し出す感覚を、こんなに早く思い出すとは…。
これは、もう俺の中に染み付いた癖みたいになってるな。
じゃあ次はこう言えば兄さんは喜ぶだろう。

「じゃあ着替えよっかな」
 智樹は上目遣いで幸樹を見て、
「着替え見られる恥ずかしいから、兄さん絶対に見ないでよ。絶対だからね」
そういうと、智樹は恥ずかしそにするをし、幸樹に背を向ける。

こう言えば兄さんは、絶対こうする。
ベッドに座って……

「わかったよ。ベッドここに座ってるよ」
 そういうと、智樹から顔を背けた。

ほら、やっぱり。

「目、瞑っていてよね」
「わかったよ」
 目を瞑ったのを確認すると、幸樹に背を向けたまま、するすると智樹は着てきた服を脱ぎ始める。

兄さんは俺の着替えを見ないと言ったら、見ないだろうし、俺が言ったように目も瞑っていると思う。
だからこそ俺が着替えをする時に出る、服と肌が擦れる音を聞いて想像するんだろうな。
そう思うと…………、虫唾むしずが走る。

 智樹はなるべく早く着替えを終え、目を瞑ったままの幸樹の前に立つ。
「着替えたよ。見て、似合って…る?」
 可愛く首を傾げる智樹の姿に、幸樹は見惚れている。そしてベッドから立ち上がると智樹の腰に手を回し体を引き寄せると、キスをしようと顔を近づけてくるが、智樹は幸樹の唇が自分の唇に当たる前に、幸樹の口に両手を当て、
「僕、お腹すいちゃった」
うまくキスをかわした。

 ホテルの最上階にあるフランス料理店は、夜景が一望できると有名で、窓側の席に座れば、夜景の中食事をしているようだ。座り心地のいいゆったりとした椅子に、白で統一されたテーブルクロスや食器。間接照明とテーブルの上に置かれた蝋燭の光が、ゆったりとした時間を演出していた。
 高級感あふれるこの店は予約もなかなかとれないことで有名だが、幸樹はこの店の上得意客で、当時電話で予約が取れたり、他にも色々とわがままが通っていた。
 この日も幸樹は本来メニューにはない『特別メニュー』のコースをオーダーしていた。それは全て幸樹が好きな智樹の好物。全ては智樹のため。
 その店で1番いい席に座り、幸樹は食事にあった1番いいワインを、智樹はノンアルコールカクテルを片手に乾杯をする。食事が運ばれてくるたび、智樹は嬉しそなで幸樹に笑いかけると、幸樹は満足そうに微笑み返しワインを飲む。そして幸樹がほろ酔いになった頃を見計らって、智樹はを切り出した。

「ねぇ兄さん。兄さんは僕の友達の事、どこまで知ってるの?」
 智樹はあえて『環』とは呼ばずに『友達』と言った。『環』と名前で呼べば、そこに特別感が出て、幸樹の気に障らないかと警戒したからだ。
「あー…、だったかな?最近こっちに越してきたんだろ?そう桜ちゃんって妹の病院のために。優しくていい子だな」
 幸樹は環を誉めたが、その目の奥では智樹の様子を伺っている。
「妹思いだね」
 智樹は短く答えた。

兄さんは俺の出方を見ている。
環を褒めたり、特別扱いしないか探ってるんだ。
『特別扱いされていいのは、俺だけだ』と思っている。
だから言葉には気をつけないと…。

「智樹は環くんと仲が良さそうだね。雅樹意外と一緒にいるなんて、めずらしいじゃないか」
「特別仲がいいわけじゃないよ。桜ちゃんの話を聞いて、何か僕にできることはないかな?って思ってるだけで…。僕の親切心かな?」
 智樹は微笑んだが、
 
そんな事でいつも一緒にいるわけじゃない!
環も桜ちゃんも俺にとって、大切な友達だ!

心の中の智樹が叫ぶ。
「そうか、それならよかった。智樹は優しいからな。でもその親切心から、あまり無理をするなよ」
 環が智樹の特別でないことに、優越感を感じた幸樹はうれしそうだ。

ここで桜ちゃんの誕生会に邪魔が入らないようにしないと。
「うん、わかったよ。ただ…」
 智樹は少し困った顔をする。
「ただ?どうした?」
「もうすぐ桜ちゃんの誕生日で、サプライズパーティーを企画してるんだ。だからまた忙しくなって、寂しいけど兄さんとのなかなか会えなくなっちゃうかも…」
 上目遣いで智樹が幸樹を見ると、
「そうか…。それは寂しいが仕方ないな。たしか2週間後の日曜…だったかな?」
「!!!!」
 驚きで智樹の目が見開かれる。

そんなところまで調べてるなんて!?

 幸樹は徹底的に調べ上げているとわかり、智樹は恐ろしさと張り詰める緊張に押しつぶされそうになり、フォークを持つ手が震えた。
「智樹、震えてるのか?」
 震える智樹の手に幸樹が手を重ねると、体が強張る。
「う、うん。ちょっと体調が悪くて…。今日はもう帰りたい…」
 さっき食べたものが全部、胃から上がってきそうなのを智樹は堪える。
「そんな真っ青な顔では帰せない。上の部屋で休んでいくといい」
 幸樹は少し離れたところで指示を待っていたスタッフに手を挙げると、スタッフが|智樹と幸樹2人の椅子を引き、幸樹はふらつく智樹を支えるように店を出た。

 部屋に入ると、幸樹は智樹をベッドまで連れて行く。
「これを飲むといい」
 幸樹は蓋を開けた水のペットボトルを智樹に手渡すと、智樹はそれを受け取り飲もうと口に運ぶが『ゴホッ』とむせ、その衝撃でペットボトルが手から滑り落ち上着もズボンもぐっしょりと濡らしてしまった。
「大丈夫か!?智樹!今、医者を呼ぶ」
 幸樹は急いで自分のスマホを取り出し、知り合いの医者に電話をかけようとするが、智樹がその手を握り、
「大丈夫…。医者は嫌だ。電話…しないで…」

医者になんて行ったら、兄さんと会ってることが母さんや雅樹にバレてしまう。
それはダメだ!

「だが…」
 心配そうに智樹を見つめる幸樹に、
「それより…服が濡れて…気持ちが悪い。だから…コレに着替えたい…」
そばにあった服を智樹は適当に掴み取る。
「そうだな。着替えるといい」
 智樹は出来るだけ急いでズボンを履き替える。そして上着を脱ぎ薄手のニットに手をかけると、するりとニットが手から落ちた。

しまった。

 服を拾おうと智樹が立ち上がった時、目の前が歪み前に倒れそうになったのを、幸樹が支える。
「大丈夫じゃないだろう!?」
 幸樹が再び智樹をベッドに座らせる。
「大丈夫…じゃない…かも。兄さん、今日は…もう帰りたい…」

もう帰りたい。
雅樹がいる家に帰りたい。
雅樹に『大丈夫だよ』って抱きしめてもらいたい。
早く会いたい、雅樹に……。

「わかった。車の手配をする前に、服を着ないとな」
 幸樹はニットを拾い、智樹に着せた。そして……、

!!!!

智樹の首筋に2箇所、赤いキスマークをつけた。
「!!に、兄さん!?」
 驚いた智樹が幸樹から体を離すと、
「このマークが消える前に、智樹に会えるように。あと悪い虫がつかないように…」
そういうと智樹の髪にキスをする。そのキスがどんどん下へ降りてきて、髪からこめかみ、頬へ。

嫌だ!
 
 智樹は顔を背けようとするが、恐怖で体が動かない。

嫌だ!
誰か助けて!

 幸樹の唇が智樹の唇に重なりそうになった、その時、

 ーーピリリリリ
      ピリリリリーー
 
 智樹のスマホが鳴り、智樹が手を伸ばすと、発信者のとこのには、
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