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お別れ遠足 ②
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「ママ見て~! ぞうさん!」
「昴くん! お母さんぞうさんと赤ちゃんぞうさん!」
千景と雫は象の檻の前に走る。
「前見て走れよ」
「「は~い」」
元気よく返事をする2人だが、あまり前を見ていない。
「ったく雫のやつ……」
困りながら昴はぼやくが、なんだか嬉しそうに見える。
「2人とも楽しそうですね」
「本当に」
2人の後ろを歩きながら見守る昴と瑞稀は遠目から見ればきっと父親と母親に見るだろう。
でも昴は雫の叔父。
お別れ遠足には昴以外は保護者と一緒に来ている。
どうして今日、雫の保護者の方じゃなくて、副社長が来られているのか聞いていいものだろうか……。
好奇心から聞くのは無神経な気がして、瑞稀からは聞けない。
「雫の母親は俺の姉さんだって話はしたよね」
「はい」
「実は今日、俺が雫の付き添い人としてきたのは、雫の母親の出産が早まりそうで、いつ産まれてもおかしくないからなんだ」
「……」
「それで義兄さんも雫の母親に付き添ってるから、雫は『お別れ遠足』を休みにしようかって話になったんだが、そんなのは可哀想だろ?」
「そうですね」
「そこで心優しい叔父さんが付き添い人になったってわけ」
「そうだったんですね」
そう答えたが、昴は大企業の副社長。
平日の昼間に外出できる時間は、ほとんどないはずだ。
「こう見えて、俺、仕事早いから休みを取ろうと思えばとれるんだよ」
昴がいたずらっぽく笑う。
それでもいつもの昴の仕事量を知っている瑞稀としては、1日休みを取るだけの仕事を終わらせるのが、どんなに大変なのか想像できる。
雫が遠足に来られたのは昴のおかげだと経緯を知って、昴は本当に雫のことを大切に思っているんだと感じた。
「成瀬さんが千景くんと来ることはわかっていたから、俺は気配を消して気づかれないようにしたんだけどね。まさか一緒に回ることになったなんて……」
申し訳なさそうに昴は言った。
仕事場でしか会わないし、ちゃんと話したこともないし身分が違いすぎるから確かに気まずい。
でも今は保護者同士。
仕事じゃない。
「そんなことないです。千景も雫くんと一緒に回れてあんなに楽しそう」
象の檻の前ではしゃぐ2人を見ていると、心が暖かくなる。
「千景、雫くんに仲良くしてもらって、本当に毎日嬉しそうに保育園に行ってるんですよ」
千景が瑞稀に保育園であったことを話す時は必ず、雫の名前が出てきていた。
「昴くん! お母さんぞうさんと赤ちゃんぞうさん!」
千景と雫は象の檻の前に走る。
「前見て走れよ」
「「は~い」」
元気よく返事をする2人だが、あまり前を見ていない。
「ったく雫のやつ……」
困りながら昴はぼやくが、なんだか嬉しそうに見える。
「2人とも楽しそうですね」
「本当に」
2人の後ろを歩きながら見守る昴と瑞稀は遠目から見ればきっと父親と母親に見るだろう。
でも昴は雫の叔父。
お別れ遠足には昴以外は保護者と一緒に来ている。
どうして今日、雫の保護者の方じゃなくて、副社長が来られているのか聞いていいものだろうか……。
好奇心から聞くのは無神経な気がして、瑞稀からは聞けない。
「雫の母親は俺の姉さんだって話はしたよね」
「はい」
「実は今日、俺が雫の付き添い人としてきたのは、雫の母親の出産が早まりそうで、いつ産まれてもおかしくないからなんだ」
「……」
「それで義兄さんも雫の母親に付き添ってるから、雫は『お別れ遠足』を休みにしようかって話になったんだが、そんなのは可哀想だろ?」
「そうですね」
「そこで心優しい叔父さんが付き添い人になったってわけ」
「そうだったんですね」
そう答えたが、昴は大企業の副社長。
平日の昼間に外出できる時間は、ほとんどないはずだ。
「こう見えて、俺、仕事早いから休みを取ろうと思えばとれるんだよ」
昴がいたずらっぽく笑う。
それでもいつもの昴の仕事量を知っている瑞稀としては、1日休みを取るだけの仕事を終わらせるのが、どんなに大変なのか想像できる。
雫が遠足に来られたのは昴のおかげだと経緯を知って、昴は本当に雫のことを大切に思っているんだと感じた。
「成瀬さんが千景くんと来ることはわかっていたから、俺は気配を消して気づかれないようにしたんだけどね。まさか一緒に回ることになったなんて……」
申し訳なさそうに昴は言った。
仕事場でしか会わないし、ちゃんと話したこともないし身分が違いすぎるから確かに気まずい。
でも今は保護者同士。
仕事じゃない。
「そんなことないです。千景も雫くんと一緒に回れてあんなに楽しそう」
象の檻の前ではしゃぐ2人を見ていると、心が暖かくなる。
「千景、雫くんに仲良くしてもらって、本当に毎日嬉しそうに保育園に行ってるんですよ」
千景が瑞稀に保育園であったことを話す時は必ず、雫の名前が出てきていた。
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