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晴人と昴の確執
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瑞稀がヒートで倒れた翌日の朝。
晴人は長年家事を任せている家政婦に瑞稀のことを頼み、出社した。
「副社長、おはようございます」
副社長室に来た昴に挨拶をすると、いつものようにスケジュールを伝える。
「今日の予定はわかった。それより瑞稀くんは大丈夫なのか?」
「はい。今は落ち着いています」
昨日、瑞稀がヒートになった時、晴人は昴に瑞希がヒートになったことは告げず、『瑞稀の体調が悪くなり、このまま家に送りたいので、自分も帰らせてほしい』と伝えていたのだ。
そして昴の機転で、もし瑞稀の体調が戻らず千景を迎えに行かない場合は、雫の母親で昴の姉が千景を預かる手配をしてくれていた。
「ならよかった。昨日千景くんは姉さんの家に泊まって、今は雫と一緒に保育園にいってると聞いている。姉さんの話では千景くん、雫とお泊まり会が出来たって喜んでたそうだ。瑞稀くんの体調が戻ったら、千景くんと瑞稀くん一緒に家まで送るから、その時はスケジュール調節頼むよ」
昴が今日の会議の資料に目を通しながらそう言うと、晴人の眉がピクリとする。
「え ……先輩、瑞稀の自宅の、知ってるんですか?」
「ああ。この前、雫の保育園であったお別れ遠足の時、一緒に回ってその流れで車で家まで送ったからな」
「そう、なんですね……。俺、瑞稀の家の場所知らなくて……」
「え? 昨日送ったんじゃないのか?」
「昨日、瑞稀は自宅の場所言える状態じゃなかったんで、結局、俺の家で泊まったんです」
「自宅の場所が言えない状況って、そんなに体調悪かったのか?」
「体調というか、急にヒートになったんです」
「! ヒートに!?」
昴は持っていた資料から視線を上げ、晴人を見る。
「はい。強いヒートだったので、朝までずっと一緒にいました」
勢いよく昴が立ち上がると、椅子が床に倒れガタンっと大きな音がした。
「! 朝までずっと一緒に?」
「はい、ずっと瑞稀の側にいました」
「!!」
昴が晴人の胸ぐらを掴むと、持っていた書類がバラバラと床に落ちた。
「それでお前はどうした?」
「どうしたって、それ先輩に言わないといけないことですか?」
「ああ、聞かせてくれ」
「瑞希が抱いて欲しいと言ったので、俺は……」
晴人がそこまで言った時、何かを殴る音がした。
「急に殴らないでくださいよ。痛いじゃないですか」
昴が晴人の左頬を殴ったのだ。
殴られた衝撃で口の中が切れたのだろう。
左の口角から血が滲み、晴人は手の甲で血を乱雑に拭きとる。
「……。晴人、今日はもう帰れ」
「これから会議ですよ」
乱れたスーツやシャツの首元を、晴人はなおす。
「いいから帰れ」
「だから会議ですって」
「帰れって言ってんだ!!」
昴は声を荒らげた。
「だから今から……」
晴人が言いかけた時、
「頼む、帰ってくれ」
だらんと垂らした両手に拳を作ったまま、昴は静かに言った。
「今お前の顔を見ると、怒りの感情が抑えられなくなる」
「……」
「今日中に、この気持ちをなんとかするから頼む
、今日は帰ってくれ」
昴は晴人に背を向ける。
「……わかりました。では今日は失礼します」
そう言い残し、晴人は帰って行った。
晴人は長年家事を任せている家政婦に瑞稀のことを頼み、出社した。
「副社長、おはようございます」
副社長室に来た昴に挨拶をすると、いつものようにスケジュールを伝える。
「今日の予定はわかった。それより瑞稀くんは大丈夫なのか?」
「はい。今は落ち着いています」
昨日、瑞稀がヒートになった時、晴人は昴に瑞希がヒートになったことは告げず、『瑞稀の体調が悪くなり、このまま家に送りたいので、自分も帰らせてほしい』と伝えていたのだ。
そして昴の機転で、もし瑞稀の体調が戻らず千景を迎えに行かない場合は、雫の母親で昴の姉が千景を預かる手配をしてくれていた。
「ならよかった。昨日千景くんは姉さんの家に泊まって、今は雫と一緒に保育園にいってると聞いている。姉さんの話では千景くん、雫とお泊まり会が出来たって喜んでたそうだ。瑞稀くんの体調が戻ったら、千景くんと瑞稀くん一緒に家まで送るから、その時はスケジュール調節頼むよ」
昴が今日の会議の資料に目を通しながらそう言うと、晴人の眉がピクリとする。
「え ……先輩、瑞稀の自宅の、知ってるんですか?」
「ああ。この前、雫の保育園であったお別れ遠足の時、一緒に回ってその流れで車で家まで送ったからな」
「そう、なんですね……。俺、瑞稀の家の場所知らなくて……」
「え? 昨日送ったんじゃないのか?」
「昨日、瑞稀は自宅の場所言える状態じゃなかったんで、結局、俺の家で泊まったんです」
「自宅の場所が言えない状況って、そんなに体調悪かったのか?」
「体調というか、急にヒートになったんです」
「! ヒートに!?」
昴は持っていた資料から視線を上げ、晴人を見る。
「はい。強いヒートだったので、朝までずっと一緒にいました」
勢いよく昴が立ち上がると、椅子が床に倒れガタンっと大きな音がした。
「! 朝までずっと一緒に?」
「はい、ずっと瑞稀の側にいました」
「!!」
昴が晴人の胸ぐらを掴むと、持っていた書類がバラバラと床に落ちた。
「それでお前はどうした?」
「どうしたって、それ先輩に言わないといけないことですか?」
「ああ、聞かせてくれ」
「瑞希が抱いて欲しいと言ったので、俺は……」
晴人がそこまで言った時、何かを殴る音がした。
「急に殴らないでくださいよ。痛いじゃないですか」
昴が晴人の左頬を殴ったのだ。
殴られた衝撃で口の中が切れたのだろう。
左の口角から血が滲み、晴人は手の甲で血を乱雑に拭きとる。
「……。晴人、今日はもう帰れ」
「これから会議ですよ」
乱れたスーツやシャツの首元を、晴人はなおす。
「いいから帰れ」
「だから会議ですって」
「帰れって言ってんだ!!」
昴は声を荒らげた。
「だから今から……」
晴人が言いかけた時、
「頼む、帰ってくれ」
だらんと垂らした両手に拳を作ったまま、昴は静かに言った。
「今お前の顔を見ると、怒りの感情が抑えられなくなる」
「……」
「今日中に、この気持ちをなんとかするから頼む
、今日は帰ってくれ」
昴は晴人に背を向ける。
「……わかりました。では今日は失礼します」
そう言い残し、晴人は帰って行った。
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