【完結】それでも僕は貴方だけを愛してる 〜大手企業副社長秘書α×不憫訳あり美人子持ちΩの純愛ー

葉月

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話し合い ②

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「晴人、声が大きいぞ。他の迷惑になるじゃないか」
 父親が声を顰めあたりを見回すと、瑞稀たちが座る中央のボックス席に、他の客の視線が集まる。
「そうですね。でもあなたは他の人の迷惑になるということより、この話を他の人に聞かれたくないだけなんじゃないんですか?」
 さらに大きな声でいう。
「それに皆さんも聞きたいと思いますよ。あなた達が瑞稀にしてきた卑怯なことの話を」
「卑怯だなんて。私たちは晴人や瑞稀くんの将来を考えて話をしただけよ。それに瑞稀くんも私たちの提案に納得したから、晴人と別れたんじゃないの? 小切手をきちんと受け取ったのは瑞稀くんの意思よ。私は無理強いしてないわ」
 チラチラと周りの様子を伺いながら、まるで『私たちは悪くない』とでもいいたげに母親は話す。

 無理強いはされていない、でも別れなければ晴人が不幸になると言われ、瑞稀が別れを選択せざる終えなくしたのは、晴人の母親だ。
「ねぇ瑞稀くん。私たちは悪くないって、晴人にきちんと言ってちょうだい」
「それは……」

ーそれはできませんー

 そう言いたかったが、晴人の母親に上から押し付けられるように言われると、未だに主従関係の名残があるのか、はっきりということができない。
「それは……それは……」
 言わないと、言わないと……。
 そう思えば思うほど、喉の奥で言葉が詰まる。
 
これを言わないと、旦那様と奥様の話し合いに来た意味がなくなってしまう。

 瑞稀は胸元をギュッと握り締め、大きく息を吸い込むと。

「それは……できません……。あの時、僕は……奥様に、晴人さんと別れたくないと……きちんと……お伝えすべきでした……」
 消え入りそうな声だったが、きちんと自分の言葉で言えた。
 そのことで、ずっとずっと胸につっかえていたしこりのようなものが、ストンと下に落ちていき、息がスムーズにできるようになったような感じがした。

「まぁ。あんなにすんなり受け取ったのに、今更そんなことを言い出すなんて。あなた、恥ずかしくないの?」
 ぎりりと母親が瑞稀を睨みつけると、バンッ! と晴人が両手で机を叩き立ちあがった。

「恥ずかしい? 瑞稀がしたことが恥ずかしいっていうんですか? 俺はあなた達がしたことが、何より陰湿で恥ずかしいことだと思います!」
 晴人は怒りにませ、声を張り上げると、店内がザワザワし始める。
「晴人、座って一度落ち着きなさい。それから話をしよう」
 父親が座るように促すが、晴人は一向に聞こうとしない。

「ほら、お父様がああ仰っているんだから、一度座って。そんな大声で話すなんて、いい大人がみっともない」
 そう母親が言うと、
「いい大人がみっともない? その言葉、そっくりそのままあなた達にお返しします」
「晴人! 親に向かってなんてことを!」
 顔を引き攣らせながら、母親はヒステリック言った。

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