138 / 202
話し合い ④
しおりを挟む「晴人さん。僕は今日こうして旦那様や奥様とお話しができただけで満足です。ありがとうございました」
瑞稀は晴人の手を握り、微笑んだ。
「あんなことをされたのに、本当にいいのか? もっと怒って怒鳴って罵っていいんだよ。俺の親だからって遠慮することなんてない」
晴人にそう言われたが瑞稀は頭を横に振る。
「晴人さんが僕の分まで怒ってくださいました。それだけで十分です。それにあの時、奥様にわかってもらえるまで話をしなかったことも、晴人さんに何も相談しなかったことも僕が悪かったんです」
瑞稀の代わりに晴人が怒ってくれたのが嬉しかった。
こんなことになる前に、自分の気持ちをもっと伝えようとしてこなかった自分も悪い。
晴人の両親だけが悪いわけじゃない。
それが瑞稀の本当の気持ち。
「晴人さんにとって旦那様や奥様は大切な家族ですし、旦那様や奥様にとっては、何歳になっても晴人さんは大切な息子なんです」
今の瑞稀には晴人の両親がなりふり構わず、我が子の幸せを願う気持ちも少なからずわかるような気がする。
「私達は、本当に大切にしないといけないことを、見間違えていたみたいだ」
黙っていた父親がぽつりと呟いた。
「……」
「本当に大切にしないといけないことは、当人たちの選んだ道を尊重することだったんだ」
「……」
「世間体や親の願いや私達が思う『幸せ』を押し付けることではなかった。間違いを犯し、君を深く傷つけた私たちのことを許してほしい」
「……」
「瑞稀さん。本当に申し訳なかった。そしてありがとう」
父親が瑞稀に頭を下げると、隣りに座っていた母親も
「あなたを傷つけてしまって、本当にごめんなさい」
瑞稀に頭を下げた。
「旦那様、奥様……」
2人と気持ちが通じ合ったようで、瑞稀は今までの出来事は無駄ではなかったのではないかと感じた。
「晴人、本当に申し訳なかった。どうかこんな私達を許してほしい」
父親は晴人を今日はじめて、きちんと真正面から見る。
「……。許すも許さないも、俺は瑞稀の気持ちが一番です」
僕の気持ち。
それは……、
「僕は、お二人と仲良くしたいです」
関係をやり直せるなら、やり直せるうちに。
修復できるなら、できるうちに。
僕と晴人さんみたいに。
心からそう思った。
「瑞稀がそういうなら……」
晴人が2人の目の前に右手を差し出すと、父親は晴人と握手をし、その上に母親が手を重ねた時目には涙が浮かんでいた。
よかった。本当によかった。
ずっとずっとあった親子の溝が埋まり、瑞稀がほっと胸をなでおろしした。
瑞希が幼い頃いつか見た、あの仲の良い家族に戻ることを祈って。
44
あなたにおすすめの小説
『聖クロノア学院恋愛譚 』記憶を失ったベータと王族アルファ、封印された過去が愛を試すまで
るみ乃。
BL
聖クロノア学院で、記憶と感情が静かに交差する。
「君の中の、まだ知らない“俺”に、触れたかった」
記憶を失ったベータの少年・ユリス。
彼の前に現れたのは、王族の血を引くアルファ・レオンだった。
封じられた記憶。
拭いきれない心の傷。
噛み合わない言葉と、すれ違う想い。
謎に包まれた聖クロノア学院のなかで、
ふたりの距離は、近づいては揺れ、また離れていく。
触れたいのに、触れられない。
心を開けば、過去が崩れてしまう。
それでも彼らは、確かめずにはいられなかった。
――やがて、学院の奥底に眠る真実が、静かに目を覚ます。
過去と向き合い、誰かと繋がることでしか見えない未来がある。
許し、選びなおし、そしてささやかな祈り。
孤独だった少年たちは、いつしか「願い」を知っていく。
これは、ふたりの愛の物語であると同時に、
誰かの傷が、誰かの救いへと変わっていく物語。
運命に抗うのは、誰か。
未来を選ぶのは、誰なのか。
優しさと痛みが交差する場所で、物語は紡がれる。
トップアイドルα様は平凡βを運命にする【完】
新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。 ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。 翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。 運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。
オメガの僕が、最後に恋をした騎士は冷酷すぎる
虹湖🌈
BL
死にたかった僕を、生かしたのは――あなたの声だった。
滅びかけた未来。
最後のオメガとして、僕=アキは研究施設に閉じ込められていた。
「資源」「道具」――そんな呼び方しかされず、生きる意味なんてないと思っていた。
けれど。
血にまみれたアルファ騎士・レオンが、僕の名前を呼んだ瞬間――世界が変わった。
冷酷すぎる彼に守られて、逃げて、傷ついて。
それでも、彼と一緒なら「生きたい」と思える。
終末世界で芽生える、究極のバディ愛×オメガバース。
命を懸けた恋が、絶望の世界に希望を灯す。
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
白銀オメガに草原で愛を
phyr
BL
草原の国ヨラガンのユクガは、攻め落とした城の隠し部屋で美しいオメガの子どもを見つけた。
己の年も、名前も、昼と夜の区別も知らずに生きてきたらしい彼を置いていけず、連れ帰ってともに暮らすことになる。
「私は、ユクガ様のお嫁さんになりたいです」
「ヒートが来るようになったとき、まだお前にその気があったらな」
キアラと名づけた少年と暮らすうちにユクガにも情が芽生えるが、キアラには自分も知らない大きな秘密があって……。
無意識溺愛系アルファ×一途で健気なオメガ
※このお話はムーンライトノベルズ様にも掲載しています
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
12/10 5000❤️ありがとうございます😭
わたし5は好きな数字です💕
お気に入り登録が500を超えているだと???!嬉しすぎますありがとうございます😭
春風の香
梅川 ノン
BL
名門西園寺家の庶子として生まれた蒼は、病弱なオメガ。
母を早くに亡くし、父に顧みられない蒼は孤独だった。
そんな蒼に手を差し伸べたのが、北畠総合病院の医師北畠雪哉だった。
雪哉もオメガであり自力で医師になり、今は院長子息の夫になっていた。
自身の昔の姿を重ねて蒼を可愛がる雪哉は、自宅にも蒼を誘う。
雪哉の息子彰久は、蒼に一心に懐いた。蒼もそんな彰久を心から可愛がった。
3歳と15歳で出会う、受が12歳年上の歳の差オメガバースです。
オメガバースですが、独自の設定があります。ご了承ください。
番外編は二人の結婚直後と、4年後の甘い生活の二話です。それぞれ短いお話ですがお楽しみいただけると嬉しいです!
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる