【完結】それでも僕は貴方だけを愛してる 〜大手企業副社長秘書α×不憫訳あり美人子持ちΩの純愛ー

愛おしいということは、愛しているということは 〜内藤昴 スピンオフ〜

真実 ②

　急に話が変わり、意表を突かれた。
「ああ。大企業の子会社の下請けの下請けをしていたって。あの話だろ？その話が鈴木が引っ越す話と、どう関係してるんだ？」
　鈴木がいなくなってしまう。
　その焦りで、いつもの冷静さが保てない。
口調がキツくなる。

「あの大企業。内藤財閥なんです」
「え……？」
　鈴木の家族を壊したのが……内藤財閥……？」
　頭が真っ白になる。
「父が一生懸命守ってきた工場を仲間を、俺の家族をバラバラにして壊して言ったのは、副社長家族の会社です」
　静かに鈴木が言う。

「俺がどうして死に物狂いで内藤財閥本社に就職したのか」
　敵意と嫌悪の目で睨まれ、言葉が出ない。
「こんな大きな財閥。トップの大学行ってトップの成績収めて、それでも就職の試験すら受けられるか分からなくて。でも俺は死に物狂いで勝ち取った。力の源はこの会社に復讐すること。そのためだったら何でもする。新しい秘書を探していると聞いた時、ついにその時が来たと思いました。絶対何か情報を掴んで揺すって壊してやろうと思ってました」
　鈴木は一気に話した。

　何か言わないと！
　フリーズした頭で何とか言葉をつむぎ出そうとするが、陸に打ち上げりた魚のように口をパクパクさせるだけで言葉が出ない。

「俺の家族をバラバラにした会社の副社長の粗をずつと探していました。俺はそんなやつなんです。それを知っても副社長は俺といられますか？ずっと黙って副社長を騙していた俺を許せますか？俺は無理です。仕事も辞めます。でも引き継ぎはきちんとします。その間だけ、俺がそばに居ることを許してください」
　そう言うと鈴木は、何も言えずただ鈴木を唖然と見つめるばかりの俺のそばをすれ違い、ガチャリと玄関のドアを開け、俺たちが暮らしていた部屋から出ていった。

　しんと静まり返った部屋の中。
　空気まで冷え切ってしまったような気がする。
　今すぐに、鈴木を追いかけないと！
　そう思うが体が動かない。
　指1本動けない。
　走ってもいないのにものすごいスピードの心音が頭に響き、呼吸の仕方を忘れてしまったかのように息が上手く吸えず胸が苦しく、鈍器で頭を殴ら脳が揺さぶられたようになり目眩がする。

　鈴木の話が頭の中で反芻はんすうする。
　どういうことだ？どういうことだ？
　鈴木の家族をバラバラにしたのは内藤財閥？
　子会社も下請けも沢山あるし、利益が出ないところは閉めた。
　利益が出ないのに稼働し続けることは出来ない。それは企業として当たり前のことだ。
　それでも会長の方針で、子会社や下請けが路頭に迷わないようにしているはずだ。
　だから鈴木から聞いた話のようなことは、ならないはず。
　もしかして中学生だった鈴木は、内藤財閥と他の企業を勘違いしている？
　そうかもしれない。
　そうであって欲しい……
　心底そう思う。

　それと同時に、鈴木に対しての怒りがふつふつと込み上げてくる。
　復習するためだけに俺に近ずいた。
　裏切られた気持ちでいっぱいになる。
　もしかしてストーカーの話も嘘なのか？
　あの怯え方に嘘はない。でも……。

　鈴木が信じられない。
　寝る間を惜しんで書類を作り、N社の副社長とところに行ったことも俺の信頼を得るためだったのか？
　もしそうなら、あんなに必死になって助けに言った俺はただの道化じゃないか。
　そう思う反面、あれは俺の信頼を得るためのものでなく、純粋に契約解除を取り消そうとしたもの。そう確信しているところもある。