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決意 ⑨

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「も~ヒューゴ様。知ってるのと知っていないのでは、心の準備に関わってくるんです」
「そうかもしれないが、アレク様にはアレク様のお考えがある。私たちがどうこうすることではない」
「でも……」
「でもではない」
 クロエとヒューゴ様、どちらも意見を引かないみたい。
 どうしよう、このままでは本当に言い合いになってしまう。
 クロエの肩をもつ? ヒューゴ様の意見を聞く?
 どうしよう……。

「あ、あの!」
 2人の話を止める。
「あの、僕、知らないことが多いから、少し勉強してみる。勉強してから、殿下のお考えに従うよ」
「ユベール様、ご無理なさらなくてもいいんですよ」
 多分、僕の顔が恥ずかしさで真っ赤になっているから、ヒューゴ様は僕が無理して読もうとしていると思ってるのだと思う。

 どうしても読みたい? って聞かれたら、どうしてもじゃないけど、クロエが僕のために選んでくれた本なら、その気持ちを大切にしたい。
「ううん。僕、読んでみたいんです」
 よし!っと意を決して初めのページから読み始める。

 読み進めるうちに、さまざまなドラマが綴られている話に、ドキドキしたり口づけに頬が熱くなったり、大人の駆け引きに手に汗をかきながらハラハラしたり、主人公と共に心踊ったり、苦しくなったり……。
 クロエが大きめの蝋燭でティーポットを温め続けてくれていたおかげで、常に暖かいハーブティーを飲むことができ読書に集中できた。

「ユベール様、お湯がなくなってまいりましたので汲んでまいります。ヒューゴ様としばらくでお待ちいただいてもよろしいでしょうか?」
 そんなに読み耽っていたなんて…。

「僕は大丈夫だけど、クロエは一人で大丈夫?一緒に行こうか?」
 持っていた本をガーデンテーブルに置こうとすると、
「私はこの宮殿で育ってきました。一人でも大丈夫です。ユベール様、お気遣いくださりありがとうございます」
 ニコリとクロエは笑い、最後のハーブティーを僕のカップに淹れてくれると、水を足しに行った。
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