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同居人・川上
しおりを挟む同居人の話をしよう。
大学時代の友人であり、名前を仮に「川上」とする。
川上は今テントに住んでいる。ルームシェアハウスのリビングに設置した、ホームセンターで4000円くらいのテントの中だ。
経緯としてはこうだ。
四人で住むにあたって一人一つ個室が欲しかった。
しかし、部屋四つの物件というのはなかなか見つからず、最終的にリビングでも寝れると川上が豪語したのでこうなった。
今住んでいるのは3LDKなのだが、私含めて三人が個室、川上がテントだ。
幸いリビングは10畳の広さがあり、私が口酸っぱく共用部は片付けろと言っているのもあって、テントは綺麗に収まっている。
当初、川上はテントも要らんと言ってはいたが布一枚といえどプライバシー空間があるのは悪くないらしく今ではいそいそとテントに潜り込んでいる。
まぁ、そんな経緯を書くだけでも彼が少し変な人間だというのは分かると思うのだが、まぁとにかく変な男だ。
私もズレている方であるとは思うが、それは「趣味」や「行動」の部分であって、彼に関しては「感性」や「思考回路」や「人との距離感」が少し変わっている。
特に知らない人に対して物怖じしない。というか仲の良さというか親密度みたいな尺度を持っていないのではないかと思う。
仲の良い人間に対する無遠慮さや、親しくない人間に対する気遣いみたいなものが全部混ざってどんな相手にも同じ結果が出力されている感じだ。
それを独特の人懐っこさみたいなものに感じて彼を好む人間もいるので、特に悪いわけでもないとは思うのだが。
私は家に友人を招くことが多いので、リビングに住んでいる彼がそのような人間であるのは助かってもいる。
リビングで始めた酒盛りに、しれっと混ざって来れるのは才能と言って差し支えないだろう。
妖怪みたいだなとも思った。
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