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Film02.想いは口の外に ―IPPEI’S EYE―
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ヤな奴――――そう思った。おれの隣に座って来たそいつは、おれの方を見向きもしないで、どこか遠くを見ていた。おれ達の席は一番後ろだったから、前の九十九を見ているならそれもいいけど、そことは方向が違った。おれがそっと目線を辿ると、ちらちらと彼女がおれの方を見ていた。何か心配そうな顔だ。まさか、おれに気があったりするのか……?
だけど、おれが小さなアクションを返しても彼女の反応はなかった。
(まさか、この転入生を見ているのか?)
この得体の知れない転入生と彼女の視線は完全に合わさっていた。まさか、以前にこの辺に住んでいたって言ってたけど、もしや二人はそーゆー仲?
◇ ◆ ◇
……なーんて誤解してたけど、なんだ、イイ奴じゃん。
「イッペー、何やってるんだ?」
おれの目の前でパンの袋をあけながら転入生――なおりん――が尋ねる。
昨日の今日であっという間に慣れちまって、ちょっと早くねぇか?
まぁ、おれが九十九のやり過ごし方をいろいろと教えてやったからな。このクラスは一致団結して、九十九を欺いてるから、被害者の連帯感の輪に入っちまえば早いだろ。
そう、「彼女と昔、関係があった」なんて想像の飛躍をし過ぎたんだよ。彼女にそんなことあるわけないさ。高一の時、おれがセンコーに言われて、配布するテキストを職員室から教室に運んで来る途中、階段でつまずいたおれに「大丈夫?」と声をかけてくれはしなかったものの、慌てて散らばったテキストを拾うおれを手伝ってくれて……、血がにじんでいたおれの膝にそっとバンソーコーをはってくれて……、
「……あれからおれは、おれはぁぁぁぁっっ!」
「イッペー、全部声に出してるぞ」
スパァァァァン!
いきなりおれの頭に出現したハリセンになおりんは驚いて口を「あ」の形にとどめた。
「ばかイッペー! ランチタイムにばかおっきぃ声出すんじゃないわよ!」
「……ってぇなっ! 何すんだっ!」
「アンタの声がでかいからよっ!」
何かわけのワカラナイことでいちゃもんをつけてきたお嬢と言い合っていたおれの耳に、なおりんの呟きが届いた。
「乱暴な女」
途端にマシンガンのようなお嬢の口がぴたりと閉ざされた。ぎぎぃっと視線がなおりんの方に向く。怒りのオーラがひだの少ないプリーツスカートの端からも湧き上がってくるようだ。
「なんですって?」
そう言うや否や、お嬢はおれの愛用のハリセンで、痛恨の一打をなおりんにあびせかけた。
「転入してきたばかりと言えど、手加減はしなくってよ!」
そう捨てぜりふを残して、ずかずかと友人の梶原の元へと戻っていった。どうして梶原とお嬢が友達やってるのかが、未だにおれには理解できねぇ。梶原はいつもお嬢のなだめ役で、かわいそうだよ、ほんと。
「なぁ、イッペー」
なおりんの呼びかけに、おれはあからさまに梶原を見ていたことに気づき、慌てて視線をそらした。
「お前、さ、梶原さんが……」
「わぁ――――――っ!」
おれがなおりんの言葉を遮るために大声を上げると、一気に注目されてしまった。彼女もおれを驚いた顔で見ている。
しっかし、何でコイツ知ってるんだ? このことは誰にも話していないのに。
「な、なんで、なおりん」
おれは慌ててそう言うのが精一杯だった。
「いや、何か、いつも目で追ってるし」
なおりんは困ったようにあらぬ方向を見ながら答えた。おれはそんなにあからさまに彼女を追っていたっけ? これでも気を遣って、人には知られないようにしてたんだけどなぁ……
「あぁ、そっか。……なおりん、誰にも話すなよ」
おれは、なおりんのやきそばパンを取り上げて、そう約束させた。
なおりんは、手元に戻ってきたパンを前に、ふと呟いた。
「どこがいいのか、わからないけど」
おれは、怒鳴りそうになるのを慌ててこらえた。ここで声を荒げてしまっては、さっきの二の舞になる。おれは深呼吸をして、火照る顔を押さえながら答えた。
「あの心の優しさに……んー、なんていうか、こう……」
おれはしどろもどろになって、歯切れの悪い言葉にもどかしさを覚えた。おれの熱い心を、もっと伝えたいのに、それを表す言葉が見つからない。
「とにかく、いいんだよ」
なおりんはわかったようなわからないような顔で「ふーん」と相槌を打った。
だけど、おれが小さなアクションを返しても彼女の反応はなかった。
(まさか、この転入生を見ているのか?)
この得体の知れない転入生と彼女の視線は完全に合わさっていた。まさか、以前にこの辺に住んでいたって言ってたけど、もしや二人はそーゆー仲?
◇ ◆ ◇
……なーんて誤解してたけど、なんだ、イイ奴じゃん。
「イッペー、何やってるんだ?」
おれの目の前でパンの袋をあけながら転入生――なおりん――が尋ねる。
昨日の今日であっという間に慣れちまって、ちょっと早くねぇか?
まぁ、おれが九十九のやり過ごし方をいろいろと教えてやったからな。このクラスは一致団結して、九十九を欺いてるから、被害者の連帯感の輪に入っちまえば早いだろ。
そう、「彼女と昔、関係があった」なんて想像の飛躍をし過ぎたんだよ。彼女にそんなことあるわけないさ。高一の時、おれがセンコーに言われて、配布するテキストを職員室から教室に運んで来る途中、階段でつまずいたおれに「大丈夫?」と声をかけてくれはしなかったものの、慌てて散らばったテキストを拾うおれを手伝ってくれて……、血がにじんでいたおれの膝にそっとバンソーコーをはってくれて……、
「……あれからおれは、おれはぁぁぁぁっっ!」
「イッペー、全部声に出してるぞ」
スパァァァァン!
いきなりおれの頭に出現したハリセンになおりんは驚いて口を「あ」の形にとどめた。
「ばかイッペー! ランチタイムにばかおっきぃ声出すんじゃないわよ!」
「……ってぇなっ! 何すんだっ!」
「アンタの声がでかいからよっ!」
何かわけのワカラナイことでいちゃもんをつけてきたお嬢と言い合っていたおれの耳に、なおりんの呟きが届いた。
「乱暴な女」
途端にマシンガンのようなお嬢の口がぴたりと閉ざされた。ぎぎぃっと視線がなおりんの方に向く。怒りのオーラがひだの少ないプリーツスカートの端からも湧き上がってくるようだ。
「なんですって?」
そう言うや否や、お嬢はおれの愛用のハリセンで、痛恨の一打をなおりんにあびせかけた。
「転入してきたばかりと言えど、手加減はしなくってよ!」
そう捨てぜりふを残して、ずかずかと友人の梶原の元へと戻っていった。どうして梶原とお嬢が友達やってるのかが、未だにおれには理解できねぇ。梶原はいつもお嬢のなだめ役で、かわいそうだよ、ほんと。
「なぁ、イッペー」
なおりんの呼びかけに、おれはあからさまに梶原を見ていたことに気づき、慌てて視線をそらした。
「お前、さ、梶原さんが……」
「わぁ――――――っ!」
おれがなおりんの言葉を遮るために大声を上げると、一気に注目されてしまった。彼女もおれを驚いた顔で見ている。
しっかし、何でコイツ知ってるんだ? このことは誰にも話していないのに。
「な、なんで、なおりん」
おれは慌ててそう言うのが精一杯だった。
「いや、何か、いつも目で追ってるし」
なおりんは困ったようにあらぬ方向を見ながら答えた。おれはそんなにあからさまに彼女を追っていたっけ? これでも気を遣って、人には知られないようにしてたんだけどなぁ……
「あぁ、そっか。……なおりん、誰にも話すなよ」
おれは、なおりんのやきそばパンを取り上げて、そう約束させた。
なおりんは、手元に戻ってきたパンを前に、ふと呟いた。
「どこがいいのか、わからないけど」
おれは、怒鳴りそうになるのを慌ててこらえた。ここで声を荒げてしまっては、さっきの二の舞になる。おれは深呼吸をして、火照る顔を押さえながら答えた。
「あの心の優しさに……んー、なんていうか、こう……」
おれはしどろもどろになって、歯切れの悪い言葉にもどかしさを覚えた。おれの熱い心を、もっと伝えたいのに、それを表す言葉が見つからない。
「とにかく、いいんだよ」
なおりんはわかったようなわからないような顔で「ふーん」と相槌を打った。
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