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Film19.すべてはアオいハルの中 ―CAMERA EYE―
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体育館ではバスケ部が汗を流して練習に励んでいる。だが、その裏は、日陰でじめじめしていて、陽もささないような場所である。
体育館裏のイチョウの木。その下ではセミロングの女子生徒――リボンの色からして二年生だろう――がくせっけ混じりの男子生徒に泣きながら何かを言っている。ただならぬ雰囲気だ。
しかし、その二人を見つめる影があった。
体育館の外に出されたいくつかの筋力トレーニングのための器具。そこに隠れるようにして、ロングヘアの美人と髪を赤く染め上げた坊主頭の男が二人仲良く盗み見ている。
同じ頃、理科準備室で、テスト問題の作成を終え、ぐぐっと伸びをした教師。端正な顔立ちがやや疲れを見せていた。眼鏡の奥でその目がゆらゆらと揺れている。
こぽこぽとコーヒーを入れ、目を休めようと窓に近づく。窓の向こうには校庭が見えた。そこかしこに人影があり、部活動に打ち込む高校生が何人も見える。
何となく見やっていた教師だが、ふと、何かに目を止めた。
その視線の先では、今日は体育館はバスケ部にとられているのだろう、バレー部の一年が円陣トスをしていた。ショートカットの女子が多い中、ポニーテールのかわいらしい子が目をひく。
丁度、そのポニーテールの女子がトスを受けようとして……その動きが不自然に止まり、ボールを落としてしまった。
ごめーん、とボールを追いかけながら、その口が、小さく「まさかね」と呟く。
そして、それを窓越しに見ていた物理教師が、何故か口をおさえていた。その目元がうっすらと赤くなっているようにも見える。
夕闇が訪れる頃、高校から駅への道を一組の男女が歩く。カップルにも見えるその二人の表情はなぜか暗い。
男が何かを言うと、女の方が、容赦なく男の頭をはたいた。
だが、ふいに何か思い詰めた表情になり、その手を目元にやる。
男はそれに気づかぬふりをして歩いていた。
夜が帷をおろして、家々に灯りがともる。
ある家のカーテンの隙間から、可愛らしいフリフリの部屋が見える。
その中で携帯電話を片手にアドレス帳を開いているのは、ロングヘアの、道ばたで涙を見せていた女の子のようだ。その顔にはひどく複雑な表情が浮かんでいる。
彼女はあるページを開き当てると、電話の向こうの誰かにその内容を伝える。
アドレス帳に置かれた指先には、一人の名前。梶原さゆり。
電話を終えた彼女は、哀しげなため息をついた。
そして、先程とは違う部屋。フリフリよりはむしろファンシーな感じで統一された部屋である。
机の横にあるベッドで、高校の制服を着たままの女の子が突っ伏している。セミロングの髪の毛がその顔を隠してしまって、表情は分からない。
机の上にあった携帯電話が小さく鳴り、メールが来たことを告げる。
顔を上げた彼女の目は泣きはらして真っ赤になっていた。
彼女はのろのろと手を動かし、携帯を手に取る。何回か、親指でボタンを押し、何かに気づいて、はじかれたように起きあがった。
しばらく画面を凝視していた彼女の目から、再び涙がはらはらとこぼれ落ちる。
携帯を握りしめて何度も何度も頷くと、彼女はぐいっと乱暴に涙を袖で拭き、携帯を机の上に置いて自分の部屋から出ていった。
残された携帯の画面にはメールの内容がまだ映し出されていた。
『あんま、おばさんと晃兄ちゃんに迷惑かけんじゃねぇぞ。
変わるんだろ? 頑張れよ!
変われたお前なら、明日からも元気に学校来れるよな?』
彼らの物語はこれからも続く―――
体育館裏のイチョウの木。その下ではセミロングの女子生徒――リボンの色からして二年生だろう――がくせっけ混じりの男子生徒に泣きながら何かを言っている。ただならぬ雰囲気だ。
しかし、その二人を見つめる影があった。
体育館の外に出されたいくつかの筋力トレーニングのための器具。そこに隠れるようにして、ロングヘアの美人と髪を赤く染め上げた坊主頭の男が二人仲良く盗み見ている。
同じ頃、理科準備室で、テスト問題の作成を終え、ぐぐっと伸びをした教師。端正な顔立ちがやや疲れを見せていた。眼鏡の奥でその目がゆらゆらと揺れている。
こぽこぽとコーヒーを入れ、目を休めようと窓に近づく。窓の向こうには校庭が見えた。そこかしこに人影があり、部活動に打ち込む高校生が何人も見える。
何となく見やっていた教師だが、ふと、何かに目を止めた。
その視線の先では、今日は体育館はバスケ部にとられているのだろう、バレー部の一年が円陣トスをしていた。ショートカットの女子が多い中、ポニーテールのかわいらしい子が目をひく。
丁度、そのポニーテールの女子がトスを受けようとして……その動きが不自然に止まり、ボールを落としてしまった。
ごめーん、とボールを追いかけながら、その口が、小さく「まさかね」と呟く。
そして、それを窓越しに見ていた物理教師が、何故か口をおさえていた。その目元がうっすらと赤くなっているようにも見える。
夕闇が訪れる頃、高校から駅への道を一組の男女が歩く。カップルにも見えるその二人の表情はなぜか暗い。
男が何かを言うと、女の方が、容赦なく男の頭をはたいた。
だが、ふいに何か思い詰めた表情になり、その手を目元にやる。
男はそれに気づかぬふりをして歩いていた。
夜が帷をおろして、家々に灯りがともる。
ある家のカーテンの隙間から、可愛らしいフリフリの部屋が見える。
その中で携帯電話を片手にアドレス帳を開いているのは、ロングヘアの、道ばたで涙を見せていた女の子のようだ。その顔にはひどく複雑な表情が浮かんでいる。
彼女はあるページを開き当てると、電話の向こうの誰かにその内容を伝える。
アドレス帳に置かれた指先には、一人の名前。梶原さゆり。
電話を終えた彼女は、哀しげなため息をついた。
そして、先程とは違う部屋。フリフリよりはむしろファンシーな感じで統一された部屋である。
机の横にあるベッドで、高校の制服を着たままの女の子が突っ伏している。セミロングの髪の毛がその顔を隠してしまって、表情は分からない。
机の上にあった携帯電話が小さく鳴り、メールが来たことを告げる。
顔を上げた彼女の目は泣きはらして真っ赤になっていた。
彼女はのろのろと手を動かし、携帯を手に取る。何回か、親指でボタンを押し、何かに気づいて、はじかれたように起きあがった。
しばらく画面を凝視していた彼女の目から、再び涙がはらはらとこぼれ落ちる。
携帯を握りしめて何度も何度も頷くと、彼女はぐいっと乱暴に涙を袖で拭き、携帯を机の上に置いて自分の部屋から出ていった。
残された携帯の画面にはメールの内容がまだ映し出されていた。
『あんま、おばさんと晃兄ちゃんに迷惑かけんじゃねぇぞ。
変わるんだろ? 頑張れよ!
変われたお前なら、明日からも元気に学校来れるよな?』
彼らの物語はこれからも続く―――
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