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「エスコートをしてこなかった」
「………」
「何か言ったらどうだ?」
「碌でなし」

 軽口を叩きながら舞踏会の会場の中央に向かう。
 1ヶ月間の練習の成果を発揮する瞬間。

『お前の音感はどうなってるんだ!?』
『お前の目は節穴か!?』
『お前の身体はカカシ人形か何かなのか!?』
『お前の足は俺の足を破壊するためにあるのか!?』

 頭の中を過ぎるのは練習中に旦那さまがかけてくださった優しいエール………、ではなく、これでもかというほどの罵詈雑言。

(どうしよう、殺意しか湧いてこないわ)

 あまりの悩みに憂い顔をしたわたしに対して何を勘違いしたのか、旦那さまは無表情ながらに心配そうな視線を寄越した。

(うん、あとで悪戯しよう)

 1ヶ月もの間、わたしのどうにもならないダンスに付き合ってくれたのだから、りはしない。でも、ちょっとばかりの悪戯ならば許されるでしょう。

「………あとで覚えておきなさい」
「は?」

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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