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「………王太子殿下に叱られたから用意したんですか?」
「違う。………コレは舞踏会のあとに手配したものだ。王太子に叱られてすぐに手配したわけではない」
「つまり、王太子に夫婦とはなんぞやというものを説かれてなおわたしとの契約結婚に不満たらたらで、全くもって指輪を用意してなかったと。相変わらず碌でなしですね」

 何かに刺されたように、旦那さまが「うぐっ」という声をあげて顔色を僅かに悪くした。

「はぁー、………3つほど条件をつけさせていただきます」

 指を3本立てたわたしは、人差し指を握る。

「まず1つ目に、わたしからの愛は期待しないでください。
 わたしはあなたを愛する気も、あなたに恋をする気もありません。なんならすぐに離縁しても構わないとさえ思っています。わたしは生涯独身貴族を楽しむつもりでしたので、離縁され傷物になったとしても特に弊害はありませんから」

 頷く旦那さまを見つめながら、中指も握り込む。

「2つ目に、わたしのやりたいことの邪魔をしないでください。
 わたしは今回の件が落ち着き次第すぐに宝石商の仕事を復帰したいと思っています。とは言っても、今まで同様の働き方は不可能でしょうから、わたしが直接選んだお客さまのみに商品をお売りする趣味の商法に切り替えます。本当に宝石を愛してくださる方のみに宝石をお売りする。そんな商売がしたいのです」

 稀にとられる商法だが、この商法は本当に趣味の世界に入っていく。
 故に、基本的には利益度外視の商売になってしまう。

 けれど、わたしは公爵夫人という潤沢な資金を持つことのできる立場を利用して本当にやりたいことをやってみたい。

 最後に薬指を握りしめたわたしは、頷いてもらえないかもしれないという恐怖に苛まれながら、それでもと覚悟を決める。

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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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