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64 国王との邂逅

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 最終チェックのために鏡の前で入念に全身を整えたアザリアは、この任務最後の大仕事である国王との面会を控えていた。

 喉がカラカラに乾き、全身から汗が出ている。

 押しつぶされそうな緊張感に、唾を飲む。


「さあ、行くわよ」


 自らを鼓舞するために口にした言葉が、自分の背中を押してくれた。
 『言葉の力』に感謝をしながら、アザリアは完璧な微笑みを浮かべ、国王を待つための部屋へと向かう。

 国王の侍従に言われた通りの部屋には、メイドが2名。
 いずれも必要最低限の戦闘訓練を受けていることが、動きから読み取れる。


 ———コンコンコン、


「はい」


 ———ガチャン、


 扉が開け放たれ、豪華絢爛な衣装を身につけた金髪の男と執事服を着た深紅の瞳の付き人が入ってくる。

 アザリアは迷うことなく、その場に跪き、全身を襲っている危険信号を覆い隠す。

 穏やかで人畜無害な笑みを浮かべている“傀儡の国王”の何が危険なのか、何故こんなにも怖いのか、アザリアにも分からない。


 ただ、———今日は良くないことがおこる。


 アザリアの直感も、アルフォードの直感も、そう言っていた。
 だからこそ、アザリアは何が危険なのか、何が怖いのか、慎重に探る。

 危険を知ることそれすなわち、事件解決の糸口に繋がると、アザリアは長年の経験からよく知っているのだ。


「久しいのぉ、我が義娘アザリアよ」


 嗄れながらも美しい声は、彼が美麗な息子王子たちの父親であることを実感させる。
 そんな声を受けたアザリアは、妖艶ながらも清楚に見える絶妙な笑みを浮かべた。


国王陛下おぐ義父さまにお眼通り叶いましたこと、恐悦至極にございますわ」


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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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