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70 質問

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「………枷、外していただけませんか。
 あなた相手では手も足も出ないわたくしには、不要の代物でしょう?」


 妖艶に微笑むが、これ如きで靡く男ではないと、アザリアはちゃんと理解している。
 あくまでこの会話は時間稼ぎであり、情報収集の場。


「………………」


 アザリアの考えに気がついているのだろうか、紅鬼ことハンドラーは、何も喋らない。


「………外してはいただけないようですわね」


 わざとらしく大きな溜め息をついて肩を竦めたアザリアは、ぽってりと愛らしい桜色のくちびるに新たな疑問を乗せる。


「では、質問を変えさせていただきますわ。
 何故、あなたのような人間がハンドラーを?」

「ハンドラーを殺した。ただそれだけだ」

「そ、そう、ですか………、」


 場に流れる静寂が苦しい。

 部屋を見回したアザリアは、何か他に質問はないだろうかと話題を探す。

 ハンドラーを下手に刺激したくないが故に、あまり疑問点が浮かばない。
 浮かんだとしても、馬鹿馬鹿しすぎて、疑問をぶつける気にさえもなれない。


「………ここは、どこですか?」


 あれだけ馬鹿馬鹿しいと思っていた質問が、口からぽろりとこぼれ落ちた。
 どうせ答えてくれることはないだろうと、アザリアは自らに向かって嘲笑を浮かべる。


 しかし、アザリアの予想と反して、彼は残虐に、残忍に、壊れたように、にたぁっと歪な笑みを浮かべる。

 背中に走る悪寒に、アザリアはぐっと顔を顰めた。


「………もう1度問いますわ。
 ここは、———どこですか?」


 彼はまるで首が折れてしまった人形のように、かくんと首を横に傾けると、涎がこぼれ落ちた歪な形をしたくちびるに、声を乗せた。


「———赤の一族、最期の邸宅」


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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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