68 / 79
70 質問
しおりを挟む
「………枷、外していただけませんか。
あなた相手では手も足も出ないわたくしには、不要の代物でしょう?」
妖艶に微笑むが、これ如きで靡く男ではないと、アザリアはちゃんと理解している。
あくまでこの会話は時間稼ぎであり、情報収集の場。
「………………」
アザリアの考えに気がついているのだろうか、紅鬼ことハンドラーは、何も喋らない。
「………外してはいただけないようですわね」
わざとらしく大きな溜め息をついて肩を竦めたアザリアは、ぽってりと愛らしい桜色のくちびるに新たな疑問を乗せる。
「では、質問を変えさせていただきますわ。
何故、あなたのような人間がハンドラーを?」
「ハンドラーを殺した。ただそれだけだ」
「そ、そう、ですか………、」
場に流れる静寂が苦しい。
部屋を見回したアザリアは、何か他に質問はないだろうかと話題を探す。
ハンドラーを下手に刺激したくないが故に、あまり疑問点が浮かばない。
浮かんだとしても、馬鹿馬鹿しすぎて、疑問をぶつける気にさえもなれない。
「………ここは、どこですか?」
あれだけ馬鹿馬鹿しいと思っていた質問が、口からぽろりとこぼれ落ちた。
どうせ答えてくれることはないだろうと、アザリアは自らに向かって嘲笑を浮かべる。
しかし、アザリアの予想と反して、彼は残虐に、残忍に、壊れたように、にたぁっと歪な笑みを浮かべる。
背中に走る悪寒に、アザリアはぐっと顔を顰めた。
「………もう1度問いますわ。
ここは、———どこですか?」
彼はまるで首が折れてしまった人形のように、かくんと首を横に傾けると、涎がこぼれ落ちた歪な形をしたくちびるに、声を乗せた。
「———赤の一族、最期の邸宅」
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
あなた相手では手も足も出ないわたくしには、不要の代物でしょう?」
妖艶に微笑むが、これ如きで靡く男ではないと、アザリアはちゃんと理解している。
あくまでこの会話は時間稼ぎであり、情報収集の場。
「………………」
アザリアの考えに気がついているのだろうか、紅鬼ことハンドラーは、何も喋らない。
「………外してはいただけないようですわね」
わざとらしく大きな溜め息をついて肩を竦めたアザリアは、ぽってりと愛らしい桜色のくちびるに新たな疑問を乗せる。
「では、質問を変えさせていただきますわ。
何故、あなたのような人間がハンドラーを?」
「ハンドラーを殺した。ただそれだけだ」
「そ、そう、ですか………、」
場に流れる静寂が苦しい。
部屋を見回したアザリアは、何か他に質問はないだろうかと話題を探す。
ハンドラーを下手に刺激したくないが故に、あまり疑問点が浮かばない。
浮かんだとしても、馬鹿馬鹿しすぎて、疑問をぶつける気にさえもなれない。
「………ここは、どこですか?」
あれだけ馬鹿馬鹿しいと思っていた質問が、口からぽろりとこぼれ落ちた。
どうせ答えてくれることはないだろうと、アザリアは自らに向かって嘲笑を浮かべる。
しかし、アザリアの予想と反して、彼は残虐に、残忍に、壊れたように、にたぁっと歪な笑みを浮かべる。
背中に走る悪寒に、アザリアはぐっと顔を顰めた。
「………もう1度問いますわ。
ここは、———どこですか?」
彼はまるで首が折れてしまった人形のように、かくんと首を横に傾けると、涎がこぼれ落ちた歪な形をしたくちびるに、声を乗せた。
「———赤の一族、最期の邸宅」
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
38
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる