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70 立ち上がる
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◽︎◇◽︎
金曜日の朝が憂鬱なのはいつものことのはずなのに、結菜は布団から起き上がることすらできなかった。目が腫れて目が開かない。喉が枯れて声が出ない。うまく笑えない。表情を取り繕えない。昔から我慢強い性格なはずだった。なんでもそつなくこなす質なはずだった。なのに、何もうまくいかない。自分の感情を操ることさえもままならない。
助けてという単調な願いが、望みが、希うような叫びが、永遠と脳内を渦巻き、頭痛と吐き気を催す。
今日が学校に行ける最後の機会であるはずなのに、学校に行く気すらも失せてしまう。新しい制服を身につける元気すらなくて、結菜はぐしゃぐしゃになってしまった。制服を着たまま床に崩れ落ちた。涙に濡れたベッドにもいたくないけど、お外にも行きたくない。矛盾する思いに、感情に、身体に、結菜はただただ振り回される。
日がどんどん登っていくのを遠い世界の出来事のように、カーテンに閉ざされた部屋に漏れ入ってくる光から見る。朝起きてから何時間経ったのかすらも分からない。苦しくて辛くて悲しい時間だけがどんどんすぎていく。
日が沈む未部屋にわずかに入っていた光が閉ざされていくのを呆然と眺めていると、部屋にノックの音が響いた。
「俺だ」
高圧的でチャラくて、結菜の嫌いな声が扉越しに聞こえる。同時に、扉の隙間から1枚の紙が差し込まれた。
「………お前に真実を知る覚悟があるのならば、その紙が役にたつ。生かすも殺すもお前次第だ。しっかり行動しろ」
言葉の意味も彼が動く理由も、何もかもがわからない。
でも、本能は理解している。彼だけが今の結菜の唯一の頼れる先であることを。ぐっとくちびるを噛み締めた結菜は脂ぎってギシギシのぼさぼさになった髪を後ろに流してゆっくりと立ち上がる。あまりに長時間同じ姿勢で座ったまま全く動いていなかったせいで体がフラッとよろけて、ベッドのサイドテーブルに足の小指をぶつけて悶絶する。けれどこの痛みが、結菜の精神を現実へと連れ戻してくれた。結菜が今生きていると、今やるべきことが存在していると、分からせてくれた。
兄が差し込んだ紙には17桁の番号と紙ベースのカルテ部屋の番号が書かれていた。
「………この中に、彼の秘密が………………、」
ごくんと唾を飲み込んだ結菜は、1着の真っ黒なワンピースと唯斗が渡してくれた紙を握りしめて部屋の外に出る。
(わたしは、最後まで戦い抜きます)
*************************
読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
金曜日の朝が憂鬱なのはいつものことのはずなのに、結菜は布団から起き上がることすらできなかった。目が腫れて目が開かない。喉が枯れて声が出ない。うまく笑えない。表情を取り繕えない。昔から我慢強い性格なはずだった。なんでもそつなくこなす質なはずだった。なのに、何もうまくいかない。自分の感情を操ることさえもままならない。
助けてという単調な願いが、望みが、希うような叫びが、永遠と脳内を渦巻き、頭痛と吐き気を催す。
今日が学校に行ける最後の機会であるはずなのに、学校に行く気すらも失せてしまう。新しい制服を身につける元気すらなくて、結菜はぐしゃぐしゃになってしまった。制服を着たまま床に崩れ落ちた。涙に濡れたベッドにもいたくないけど、お外にも行きたくない。矛盾する思いに、感情に、身体に、結菜はただただ振り回される。
日がどんどん登っていくのを遠い世界の出来事のように、カーテンに閉ざされた部屋に漏れ入ってくる光から見る。朝起きてから何時間経ったのかすらも分からない。苦しくて辛くて悲しい時間だけがどんどんすぎていく。
日が沈む未部屋にわずかに入っていた光が閉ざされていくのを呆然と眺めていると、部屋にノックの音が響いた。
「俺だ」
高圧的でチャラくて、結菜の嫌いな声が扉越しに聞こえる。同時に、扉の隙間から1枚の紙が差し込まれた。
「………お前に真実を知る覚悟があるのならば、その紙が役にたつ。生かすも殺すもお前次第だ。しっかり行動しろ」
言葉の意味も彼が動く理由も、何もかもがわからない。
でも、本能は理解している。彼だけが今の結菜の唯一の頼れる先であることを。ぐっとくちびるを噛み締めた結菜は脂ぎってギシギシのぼさぼさになった髪を後ろに流してゆっくりと立ち上がる。あまりに長時間同じ姿勢で座ったまま全く動いていなかったせいで体がフラッとよろけて、ベッドのサイドテーブルに足の小指をぶつけて悶絶する。けれどこの痛みが、結菜の精神を現実へと連れ戻してくれた。結菜が今生きていると、今やるべきことが存在していると、分からせてくれた。
兄が差し込んだ紙には17桁の番号と紙ベースのカルテ部屋の番号が書かれていた。
「………この中に、彼の秘密が………………、」
ごくんと唾を飲み込んだ結菜は、1着の真っ黒なワンピースと唯斗が渡してくれた紙を握りしめて部屋の外に出る。
(わたしは、最後まで戦い抜きます)
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