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お前が構ってくれないから

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 嗚呼、足りない。

 一人で自身を慰めながら、彼のことを考える。……次は、いつ来るんだろうか。彼が俺を抱きに来るのは不定期で、番とはいえただの処理が目的だ。ヒートが来ようが来まいが俺の事情なんていつもお構いなし。それでもあの行為は気持ち良くて、満たされる。
 ……彼の声が聞きたいなんて、この感情は。……いや、こんなものは知らない。

 それでも手は勝手に彼の動きをなぞっていく。

「ぁ、……ッ」

 きもちいい。でも、絶頂を迎えるには何かが足りない。何が足りないんだろうか。……出ない答えを前に、ふと彼の声が頭に浮かんだ。俺の名前を呼ぶ、声。

『──……』

 どくん、と腰が疼く。

「ひ、…っ、ぁ、ッ~~♡」

 虚しさと共に、白濁液がシーツに散った。



「随分と、一人で楽しんでいるじゃないか」

 ふと、ドア付近から聞こえる声。い、いつの間に。いつからそこにいたんだ。

「こ、れは、ちがっ……」
「何が違うんだ? なぁ、……こんなにぐちゃぐちゃになっておいて」

 壁際に追い込まれて、捕まって。訳もわからず喘いでいるうちに、いつのまにか彼の熱が自分の中に入っていた。

「ぁ、ッ、なん、っ……」
「は、……今日は少し緩いな? ……後ろもシたのか?」
「……っ、して、ない」
「へえ?」

 ごつ、と急に奥まで突き入れられて、体が跳ねた。

「ほら、最初からこんなに入る」
「~~っ、すこし、しか、……」

 ごつん、と更に奥まで突き入れられる。

「ぇ、……ぁ゛っ……♡」
「嘘つくなら、ここでお預けだな」
「……ゃ、ぁ……もっと、おく、……っ」

 は、と気づいた。俺は何を口走っている?慌てて訂正しようとするも、口を開けようとする度にぐりぐりとナカを擦られて意味のある言葉が出せない。

「……っ、……ぁ、あ……ッ! ぅ、あ……ひっ、」

 決定的な刺激は与えられなくて、それでも気持ち良くて、どうにかなってしまいそうだった。

「なあ、どうしたい?」
「ぁ、……あ、ッ、……イきた、」
「じゃあ、一人で何してたか言えるな?」
「んっ、いう、いうからぁ……っ、もっと、……」

 自分の体を彼に押し付けるように動かす。そうすると浅い部分を擦っていたモノが少し深くまで入るからだ。

 もはや理性はトんでいて、快楽だけを求めている。この奥を満たして欲しい、頸を噛まれて番にされたこの体がそう叫んでいた。

「ひとりでっ、でぃるど、つかって、ぁ、して、ました、……ぁ゛っ、♡」

 言い終わった瞬間、先程よりももっと深い場所を抉られて甘い声が出た。自分のものではないような、そんな声。

「ぁ、あ、っ、そこ、すき、すきぃ♡」
「あーあ、トんでんな」

 くす、と笑った彼は一度大きく自身のソレを引き抜いたかと思うと、ずんっ、と奥を貫くように突き入れた。

「~~ッ♡ ……ぁ゛、っ~~♡♡」

 あまりの快楽にぽろぽろと涙が溢れる。そして、それを見て彼は満足げに笑う。ごつごつと奥を抉られて、いつ絶頂を迎えているのかわからないくらいに犯された。

「ぁ、~ッ、♡ あ、ん゛……♡ ッ……ふ、ぁ゛ッ♡」

 男性特有の低い声が、甘さを含んだ高い声に変わっていく。気持ち良くて、目の前が真っ白になって、自分がどこにいるのかわからなくなって、彼を求めた。

「ひ……っ、♡ ……手、ッぁ゛、あっ♡ て、にぎって、ぁッ……あ゛~~っ、♡♡」

 後ろから俺を抱いている彼に向かって手を伸ばすと、楽しげに笑う声が聞こえて手を掴まれた。そのままシーツに縫い合わせるように両手を重ねられて、彼の温もりを感じながら俺はイき続けた。

「っは、……ぁ……素直でいい子だ」
「~~っ♡、っ、……ッ~~♡ ……っ~~♡♡♡」

 耳元でそう囁かれて、それだけでイっていた体はもっと敏感になる。声にならない声が溢れ、息を忘れた。

「っ、……は、おい」

 重ねられていた手の片方が外されたかと思うと、いきなり口の中に突っ込まれて舌を撫でられる。


「息を、しろ」

「ん、ふ、……~っ、ぁ゛♡ ……っは、ぁ……ッ、あ♡」

 無理やり口を開けられて、ばらばらに動く指が口内を犯した。それに意識を向けていると、やっと息を思い出したのか視界が少しだけはっきりしてくる。

「そう、……いい子だ。…っ……、はは、いい子、って言われると締めるな……? なぁ……、愛しい愛しい俺の番?」
「ゃ、ぁっ……♡ だ、めっ…それ、♡」
「“いい子だ“。……“イけ”」
「っ、~~ぁ゛♡ ……ぁ、♡ ~~っ……♡♡ イき、ました、ぁっ♡」

 彼にイけと命令されただけで中で絶頂を迎えて、更にはイった報告までしてしまう。彼に所有権を握られているような気がして、甘い吐息が漏れた。

「ほら、もっと欲しいときはどうおねだりするんだった……? 言えるだろ……?」
「ぁ、あ、……♡ ぉく、おくに、くださいっ♡ いちばん、……ぁ、おく、までぇっ♡」

 ごつんっ、ともう入りきらないというところまで挿れられて、体がびくびくと痙攣した。しかしそのまま動かされないためにイけない。

「なんっ、で、ぇ♡ イ、きた、……ぁ、っ♡」
「奥まで、としか言われてないからな?ほら、奥まで挿れただろ?」

 彼は意地悪そうにくつくつと笑う。俺の口の中の舌を掴んで、ぐりぐりと撫でた。言われてないのに、その行為をされただけで言えと言われているということを、この体は覚えている。

「イかせ、いっぱい、イかせてくださ、ぁ゛……っ♡♡」
「よくできました」

 気持ちいいところや奥に当たるように動かされて、ごつごつと遠慮なく突かれた。連続でイっているのを彼も感じているだろうに、その動きは止まることがない。

「もっ、だめぇっ、♡ おかし、くなっちゃ、ぁ♡ ぁ゛~っ……♡」
「なんでだ?いっぱい、っは、……イかせてほしいんだろ……?」
「ひ、ん……っ♡ ぁ゛、あ~~っ♡♡」

 こくこくと頷くと、彼はまた小さく笑った。──そうして俺は、俺とは違って中々イかない彼が欲を何度も吐き出すまで、ずっとずっと犯され続けた。ひっでぇ声、と自嘲する未来が見える。

 まあ、こんな日があっても、いいか。
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